堕落論 (280円文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.74
  • (50)
  • (68)
  • (60)
  • (16)
  • (3)
本棚登録 : 1238
感想 : 71
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435451

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 書かれた時期を考えると、なるほどなと思う。率直に戦後の焼け野原からどう立ち直るかリセットを含めた、もういっぺん一からって感じを色濃く感じさせる。ありきではなく率直というのが印象で坂口安吾を気取るのと坂口安吾では大きく違うと思う。その率直な書きぶりは内容というより姿勢や書きっぷりが印象的で阿修羅と真剣でやり取りしたような読後感だった。率直なのでいろんな角度から斬られたような。読んだ後はこころに生傷がたくさんといった感じ。元気じゃない時に読むのはオススメしないかも。インパクトはあったかな。

  • 2017.8.1
    堕落論、続堕落論だけつまみ読み。
    我々は意味や価値を求める。故にそれが何かを見つめ、それを作り出す。道徳や制度。しかしそれを見出すということは同時に基準を作るということで、基準を作るということは同時にそれを満たさないものや自分を悪とするということである。そうして、武士道道徳や天王星によって、現実を見えなくし、嘘をついて、そうして善を求めた。しかしそういう善は、薄っぺらいものである。
    堕落せよ、というのは、こういう人間の弱さを、人間と人間がともに生きることの困難を、ごまかさず、直視せよということである。安易な理想は簡単にへし折れる。へし折れた人間はもうこの世に価値はないというニヒリズムに走るか、もしくは直視しようとせず、信じれば救われるというような臭い宗教者にでもなるのか。私もそうだった。すがっていた。これで正しいんだ、今は間違っていても、これでいいんだと、自らの価値にすがっていた。そういうものは確実に挫折するし、そういうものは人を救わない。目を背けてはいけない。我々は、人間は、そんなに綺麗なものでもないし、そんなに美しいものでもないのだ。
    しかしだからこそ我々は、美しいものを求めるのである。堕落はなんのためか。幸せな生、美しい生のためである。生きよ墜ちよとはニヒリズム宣言ではない。それはニヒリズムを超えるための、いわばデカルトやフッサールがやったような、方法的虚無主義である。堕落することで、現実を、人間の弱さを、あえて徹底的に直視することで、そこから、それを乗り越えるものを見出そうとする。自らを狭い真善美の型にはめてはならない。
    が、しかし。堕落にも色々ある。その堕落の原因はなんだろうかと考えると自らの被害妄想だったりすることもある。どうやら堕ちるにも、良い堕ち方と、そうでないものがあるような気がする。と同時に、私はやはり嘘つきの卑怯者なので、欲しいものを欲しいと言い、嫌なことを嫌というのは、まだできない。しかしこのできないもまた人間の弱さで、人間の堕落の一つであるように思える。道徳を作ることもまた自らへのごまかしという意味では一つの堕落である。どう考えると、堕落とはなんだろうかという話になる。やはり、ただただ自らに問う他はないのではないか。ただ、堕落もまた一つの快楽だと思うので、妄想的な、世界はクソだ、私は生きるに値しない、という、ルサンチマン的な絶望はもうやめにしたいとは思っている。そうではないのだ。堕落は常に現実の関係からやってくる。
    私とは関係であるならば、生きよとは、この世界、他者との関係の中で自らを問え、ということであり、その上で墜ちよとは、その関係の善を成せない自らの悪を問え、ということである。ルサンチマンは現実的関係ではなく妄想的関係から来るものである。どのような関係から、堕落を考えるか、ここに堕ち方の良し悪しがあるように思う。

  • 久しぶりに頭を使う読書でした。
    ちょっとその感じが感動だったので周りの人にお勧めしてみようと思う。
    今まで読んでいなかったのを後悔。
    10代、20代と歳を重ねて読みたい本。

    漢字の使い方とかが何となく椎名誠を彷彿させる。

  • まったく。恐ろしいことをさらりと。

  • 当時ではなかなか口に出せないようなことを思いきって痛快に書いたエッセイ。

  • 2016/07/29
    日本文化私観・堕落論・恋愛論のみ読了。
    青春論は途中でやめた。
    文化は実質が大事というのには同意。
    堕落論については、人間への諦めと愛を感じた。
    恋愛論では、恋愛が結構人生で重要だと説いている。やっぱり普通は恋愛が人生の多くを占めているものなのかなあ。

  • 読んでみるまでは理解できない書物だと思っていた。解説の音楽という表現にうなずける。ですがね安吾さん、堕落してそこに光るものは、それはちょっと悲しいものだよ。私は変化を好みたくないから、所詮は荒唐無稽な人生を送るかな。これは戦火を潜ってないから言えるのかい?

  • まあ、賛成

  • 「人はあらゆる自由を許されたとき、自らの不可解な限定とその不自由さに気づくであろう。人間が永遠に自由ではありえない。なぜなら、人間は生きており、又死なねばならず、そして人間は考えるからだ。」
    「落ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかないものである。」

  • 全12編からなるエッセイ。
    坂口安吾流物事の捉え方。

    太宰の死について書いている「不良少年とキリスト」は、身近にいた人ならではの捉え方をしており読みごたえがある。

    心に残る名言が沢山あった。
    「通用の道徳は必ずしも美徳ではない。」
    「人間には魂の孤独という悪魔の国が口を広げて待っている。」

    孤独な人であったと思う。

全71件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂口安吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
安部公房
三島由紀夫
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×