- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758435574
感想・レビュー・書評
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主人公キョウコの設定が、既視感有り有りで、ビックリするほど。ビックリして直ぐに取り寄せて読んだ。
都内在住。毒親の母親に辟易しながら育ったが、なんとか大手広告代理店に就職。30歳の頃、父親が過労死で亡くなる。母親にマインドコントロールされていたとキョウコは思っている。ずっと営業仕事でストレスを溜め込んできた彼女は、その機に事務職に変わったが、やはり女子職員同士の妬み嫉み恨みの環境に嫌気、更には同居している母親との環境にも嫌気がさし、30歳半ばで「月10万円で30年間暮らせるだけの貯金を持って早期退社」1人暮らしをする決心をする。そのために10年間、婚活もせずに貯金をする。遂に45歳、兄家族が母親と同居を申し入れた時点で、月3万円築40年以上6畳トイレ・シャワー室共用の「れんげ荘」を見つけてこっそり契約を交わした。
動機とか、場所とか、少しずつ違うけど、いろいろ違うけど、「うんうん」と共感する所とか、「あんたちゃうやろ」とか「まだまだやなぁ」とか、ツッコミ入れたい所とか、いろいろあるんだけど、あまり具体的に書くと、わたしのプライベート丸わかりになるのでちょっと奥歯にモノが挟まった感じで書きます。
でもね、彼女は1年間、アルバイトもボランティアもせずにホントに何もせず、失業保険さえも受けずに過ごしているけど、普通はもらうべきものは貰い、ボランティアぐらいは始めると思うよ。それだけ、母親と仕事から離れるデトックス期間が必要だと彼女は呟いているけれども、下手をすると病状は悪化したかもしれない。人には勧められない。ヒトはつくづく人と人の間に暮らさないと生きていけない動物です。彼女は「たまたま」隣室にいい女性がいて、1人だけとっても的確なアドバイスをくれる友人がいて、ちょっと出来過ぎの兄貴夫婦がいたからよかった。
まぁ、都会でも月10万円あれば生活できます。6月はほとんど湿気でカビ生え放題、巨大ミミズ、ナメクジ出現(その前に巨大ムカデの描写が何故なかったのか?)とか、真夏の蚊の襲来、冬の底冷えぐらいで小説的には大騒ぎしているけど、まぁそんなもんです。キョウコさんは、部屋が隙間だらけだからクーラー導入しないのかもしれないけど、私は、最初の年からなんとかなったのでクーラーと暖房器具を未だ入れていません。本書の刊行は2009年。その頃まではなんとかなったんですよ。ホントに。でも、ここ数年の殺人的な暑さ(真夜中に30℃を下がらない!)に、キョウコさんはどうしているんだろう、と心配になります。
どうも続きが何巻もあるようです。これ以上何を書く必要があるのか?という気持ちもありますが、キョウコさんのその後が気になるので、ちょっと覗きに行こうとは思います。いやらしい意味じゃないですよ。
NO Book & Coffee NO LIFEさんのレビューを読んで存在を知りました。ありがとうございました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初読みの作家。
45才、独身のキョウコは有名広告代理店でバリバリと働き、その仕事に疲れて事務に異動しても噂ばなしや働き方に馴染めず、家ではプライドだけ高い母親とも合わず、全てを投げ打っての「れんげ荘」住まい。貯めた貯金を少しずつ取り崩して生涯を無職で暮らすために、格安のれんげ荘を選択。春の気候の良い時期に移ったものの、梅雨のカビやミミズ、ナメクジ、夏の蚊、冬の寒さに参ってしまう。揺らぐ気持ちも親友からの言葉で元に戻る。1年を経過して、何とかれんげ荘にも馴染めたようだ。地震で砂壁が落ちた学生時代に住んでいた木造アパートを思い出す。働かず、貯金だけで暮らすのも若い頃の夢だったと思い出す。
このシリーズは続くようだが、このまま無職の生活は続くのだろうか。他の住人や母親との関係はどうなるのだろうかと先を読みたくなる。
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著者、群ようこさんの作品、ブクログ登録は2冊目。
群ようこさん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。
---引用開始
群 ようこ(むれ ようこ、1954年12月5日 - )は、日本の作家、随筆家。本名:木原ひろみ。独身。軽妙な語り口の文体で、主に女性からの支持を受けている。
---引用終了
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
月十万円で、心穏やかに楽しく暮らそう! ―――キョウコは、お愛想と夜更かしの日々から解放されるため、有名広告代理店を四十五歳で早期退職し、都内のふるい安アパート「れんげ荘」に引っ越した。そこには、六十歳すぎのおしゃれなクマガイさん、職業“旅人"という外国人好きのコナツさん・・・・・・と個性豊かな人々が暮らしていた。不便さと闘いながら、鳥の声や草の匂いを知り、丁寧に入れたお茶を飲む贅沢さを知る。ささやかな幸せを求める女性を描く長編小説。
---引用終了
そして、本作の書き出しは、次のとおり。
---引用開始
キョウコは会社に勤めているときに、歓送迎会で来たことのある町を歩いていた。四十五歳になってはじめて実家を出ようと決めた日、ふと頭に浮かんだのがこの町だった。駅前は再開発ビルが建ち並んでいるが、少し歩くと古くからの住宅街が広がっている。駅周辺は今風の格好をした若者たちが多いが、それにまじって古くからの住人とおぼしき、高齢者の姿も多い。
(ここだったら、まぎれて暮らせる)
東京生まれで東京育ちのキョウコが、はじめて自分の意志で住むのを選んだ場所だった。
---引用終了 -
主人公は、45歳、独身で実家暮らし、大手広告代理店勤務のキョウコ。母と不仲、会社のストレス等の煩わしさを投げ打ち、貯金を切り崩しながら月10万で生活すべく、月3万の「れんげ荘」に住み始めます。
しかし、理想としていた割に、不便さや断ち切れない母との関係など、都会に住む〝世捨て人〟になる積もりが、やはり全ては捨てられません。
結局は、環境においても、人間関係においても、時に感謝、時に当惑しながら折り合いをつけながら暮らしていくのが人間なのだと気付かされます。その中で、生活をスリム化し、その根幹となる軸をしっかりもてなければ、絵空事となるのでしょう。
それでも、身の回りの小さな幸せに気付き、大切にすることを教えてくれる物語でした。キョウコの大胆さ、不屈さ、時に滑稽さが上手く描かれていて、読み手は、誰もが身につまされながらも、楽しく読むことができると思います。
この「れんげ荘」シリーズ、6冊出ているようですが、キョウコのその後が気になります。 -
カバーのれんげの花が可愛く月10万円で楽しく暮らそうと書かれている帯に惹かれて手に取った。
内容は10万円でどう楽しく生活するかというより、40代独身女性の今までとこれからの人生を迷いながらも幸せを感じる生活を少しずつ始める話。
ゆっくりと平凡な日常が送られていくなかにときに彼女の今までの人生で関わってきた人に対する思いがするどく書かれていて繰り返して読んでしまう。
まだまだこれから始まったばかりでおしまいになってしまったけれども続編があるようなので楽しみ。 -
周りの環境や情報量の多さから、事を荒立てないマイルドな自分が出来上がる。そして本当の「自分」というものを見失ってしまう。現代あるあるかも(?)。
それをぜーんぶ取っ払って、昭和レトロと言っていいのか自然いっぱいと言っていいのか「れんげ荘」に住む。
うーん、出来ない。でも、れんげ荘には遊びに行きたい。 -
職場や取引先から母親まで、周囲に気を遣い窮屈な生活を続けることに嫌気が差した女性が、45 歳で退職して始めたひとり暮らし。
年金受給までの20年間は、月10万円のつましい暮らし。古く不便なぼろアパートでの日々を描いたヒューマンドラマ。シリーズ第1作。
◇
大手広告代理店でバリバリ働き、管理職としてそれなりの給与を得ていたキョウコだが、若い頃からずっと自分の生き方に疑問を感じてきた。
業務の大半を占める接待と、湯水のごとく消費される交際費。金と欲に塗れた世界にあるのは虚飾に満ちた仕事ばかりのように感じるからで、クリエイターでないキョウコには尚更だ。
そんな、地に足がついていることを実感できない日々に耐えられなくなったキョウコは45歳になったのを機に退職。
さらに独善的で見栄っぱりな母親との生活に嫌気がさしていたこともあり、家を出て1人暮らしを始めることにした。
退職金を加えた蓄えで一生を送るためには、(年金受給までの20年間の)生活費一切を月10万円で賄う必要がある。
そこで見つけたのが廃墟寸前の木造の安アパート。家賃は管理費等込みで月額3万円。それが「れんげ荘」だ。
ミニキッチンは付いているものの6畳ひと間。エアコンなし。おまけにトイレ ( しかも和式でペーパーの設置はなし )・シャワーは共同。
不便でつましいけれど、自由で心豊かなキョウコの新生活が始まった。
* * * * *
本当の豊かさってなんだろう。そんなことを考えさせてくれる作品でした。
誰にも束縛されず、自分の身の回りのことは自分できちんとこなして健康的に生きていく。シンプルだけれど、それが何よりの豊かで幸せな生活なんだと、本作を読んで思いました。
清潔で快適な実家暮らしに馴染んだ身には、れんげ荘の暮らしは驚きの連続だったでしょう。
春秋はいいけれど、その他の季節は大変です。
まず梅雨時。強烈な湿気に始まり、どこからともなく侵入してくるナメクジたち、さらに押入れに大発生するカビ。
夏には多数の蚊が襲来し、冬には冷たい隙間風とともに雪が吹き込んでくる。
そんな自然との戦いを、キョウコさんはマメさと工夫でエネルギッシュに乗り切っていきます。しかも楽しそうですらあるのです。
会社の方針に (自分を殺して)従い母親の束縛を (躱しきれずに)受け入れるというそれまでの生活。そこに費やしていたエネルギーがいかに大きかったかがよくわかる描写でした。
遠からずやってくるれんげ荘の取り壊しと転居問題や意固地な母親との関係など、読んでいて心配してしまうことはあるけれど、隣人にも恵まれ、“豊かな”生活を満喫するキョウコさんの1年は、こちらの心まで豊かにしてくれるようでした。
住めば都。「青山」は案外身近にあるんだろうなと思いました。 -
れんげ荘シリーズの始まり。
ハードな仕事と世間体を気にするプライドの高い母から離れて、なにもやらない生活を始めたキョウコさん。今までのガチガチの鎧を被った生活から、なにもしない生活を楽しめるように徐々になっていきそうな予感がする。梅雨時は湿気、夏は蚊、冬はすきま風と雪。れんげ荘に住むのは大変だけれど、隣人のクマガイさんや、コナツさん、大家さんとこれからどう季節を重ねていくのか楽しみ。優しいお兄さん、姪のレイナちゃん、母親との関係もこれからどうなるのか気になるところ。 -
2011年って、結構前だなぁと思ったけれど、そうでもないのか。
現在、7冊まで出ている『れんげ荘』シリーズ。
古本屋でふと目に止まり、とりあえず一冊と買ってみた。
日々の仕事に嫌気がさして、仕事を辞めて、月10万円の貯金切り崩し生活をする事に決めたキョウコ。
家賃3万の古いアパートれんげ荘は、そりゃ夏は暑くて冬は寒い、虫は出るわ、湿気てカビるわ。
想像以上の生活にも関わらず、何だか楽しめている。
こういう作品は、もっとほんわかしたり、温かい周囲の人々との関わりや、その人たちから出る名言的な言葉とかかと思いきや、確かに周囲の人との関わりはあるけれど、思ったよりも普通だった。
あー、でも、だからこそ良いのかもね。
はて、7冊。どういう物語展開になるのだろうと気になるところ。
それにしても、キョウコも母親との関係が嫌なら、もっと遠くの田舎暮らし的にすればいいのに。
それに仕事を辞めるはいいけれども、何もしないをするってのはよく出来るなと。
まぁ、それが難しくて本人も苦労はしてるけれど。
同じアパートの住人(3人)は、まだ何となく分かるけれど、キョウコはこれからどうしていくのだろうか。
仕事もしないし、貯金切り崩しだと経済も回せないし、生きている意味的な何かを…。
って考えている時点で、僕も何かに侵されているのかもな。 -
精神的デトックス。必要なのは心が豊かに生きること。心許せる隣人と、丁寧に淹れたお茶を飲む贅沢を味わうこと。貧乏性格とは違う、欲から解き放たれ、不便さを楽しんで生きる、羨ましい暮らしかも知れない。自分に今の生活を手放す勇気は無いけれど、時には精神的デトックス、必要だ。