運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226020

作品紹介・あらすじ

1日の総消費カロリーは、
運動しても増えていなかった!

人類進化と代謝の最新研究が、長年のダイエット論争に決定的データを突きつける。

カロリー消費を正確に測る新しい技術のおかげで、近年、代謝科学の常識が覆った。
「1日の総消費カロリーは運動しても増えない」ということが明らかになったのだ。
つまり、運動したところで、それだけで痩せることはない――。

しかし、だからといって、運動なんか意味がないということには決してならない。
逆に、運動しても1日の総消費カロリーが増えないからこそ、
運動は必ずしなければならないものだということがわかるのだ。

運動しなくても、1日の消費カロリーは減らないのだから、余ったカロリーは
別のことに使われているはずだ。これが体に良くないことを引き起こす。
余ったカロリーの使い道として、もっとも身体に悪いと思われるのが「炎症」である。
本来であれば必要のないところで、余ったカロリーは炎症を起こす。
これがアレルギーや関節炎、動脈疾患のほか、さまざまな「現代病」の原因と考えられるのだ――。

先進国の都会人から、サバンナに暮らす狩猟採集民、さらにはチンパンジーやオランウータンなどの
類人猿まで、数多くの対象のカロリー消費を測定してきた進化人類学者が、
ダイエット論争と人類進化というまったく違う領域の謎に、常識を覆す答えを提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 最近この表紙がしばしば目についたので読んでみました。
    SNSで話題になったらしいです。

    この邦題は内容のほんの一部。
    各頁に文字がぎっしりの本、
    好きじゃないと読み切れないでしょう。
    私にとっては興味のある内容だったので、
    とても面白かったです。

    制限的日次カロリー消費…
    初めて知りました。
    でもそれ以外はわりと自分の経験知識から、
    「そうそう、わかる」という感じ。

    そんななか特に面白いと思ったのは、
    平均27キロの減量に成功、
    4年以上体重を維持している人たちの集団。

    私も、8キロ程度ですけど
    もっと長く体重維持しているので、
    彼らの体験にすごく納得しました。

    ほぼ全員が減量のために食事を変えた。
    そして維持するために運動を続けている、というもの。
    その運動量は「元々正常体重である人たち」より多い。

    アメリカに行ったとき凄く太っている人が
    ホント多くて。
    しかもよく食べる。
    全然悩んでいないようだったけど、
    この本を読む限り本当は痩せたいのではないかと思いました。
    諦めちゃダメ。運動を続けましょう!

    余談ですが、約二年前から断酒しているので、経験を二つ書いておきます。

    「断酒しても体重は減らなかった」
    痩せたという情報がたくさん入ったので
    期待していたのですが。
    でもそれ以外のメリットが凄く多いので、
    これからも頑張ります。

    「砂糖入り加工食品は悪」
    たまの外食・中食・スイーツ以外では
    砂糖を摂ることが無かった私。
    料理するときレシピにあっても入れません。
    でも断酒をきっかけに、
    ある砂糖入り加工食品を毎食いただきました。
    数か月続けて、体重が増えたうえ
    体に凄く悪いと実感し、やめました。
    当時その食品が砂糖入り加工食品という認識はありませんでした。
    体に良いかと思っていたくらいです。
    この本のなかではジャンクフード扱いされていました。
    たまに楽しみ程度なら良いと思いますが。

  • おっしゃることはごもっとも。身も蓋もないとはこのことか。
    進化の成り行き上人間は運動した方がハッピーだし健康になるが、運動しても痩せない。超加工食品を避け、素炒りのナッツ、果物、新鮮な野菜、植物性食品を基本とする混食にすして少ないカロリーで満腹感を得る。外食はおいしくて高カロリーなのでなるべく自炊。ストレスを減らす。ダイエット法はどれもカロリー摂取が減れば痩せる、特にどれがいいということはない。サプリも疑問。寝不足を解消する。>これはなかなか難しい。

  • とても興味深い内容だった。
    運動しても痩せない
    が、落ちた体重を維持するのには有効。
    一見体重の増減だけみるなら、がっかりする内容だが、運動が健康に寄与することは間違いない。
    カロリー消費の面からも運動は重要変化をもたらすことを示していた。この7章では、運動によりカロリーが消費されることで、体内のカロリー消費分配が変わり、生殖など生きるにさほど重要でない箇所へのカロリー分配が抑えられる。
    (ネズミの場合は逆で、生命活動に十分なカロリーが供給されないと、生殖にカロリーを回す。これは短命なネズミがいかに子孫を残すかに対応しているためと考えられていて、寿命の長い人族とは違ったカロリー消費変動になっている)


    ハッザ族の生活について書かれていておもしろかった。
    はちみつを取るのに、口笛を吹き鳥にハチの巣の場所を教えてもらう。
    肉が数日たっていても気にせず食べる。
    距離の換算は歩いて何日かかるかで判断する。
    よく歩く。
    楽観的。
    ザ。
    ハムナ・シダ。←この言葉、座右の銘にしたいw
    行動調査で5分おきに行動を記録する。
    永遠に”歩行”の記録にうんざりした時、先輩のやり方を知り、愕然とする。このシーンで爆笑w、そうか!そんなやり方がw

    現代人の消費カロリーと、ハッザ族のような原始的な生活をする人々の消費カロリーは、同じである(体格などの数値を補正してもだ)。
    これはおかしいと直感的に思うが(一日何キロも歩くハッザ族のほうが、座ってばかりの現代人より消費カロリーは多いいはず)。事実そうなっている。
    是は人体の消費カロリーの分配調節がされているようだ。
    ここではトライアストンのような高強度負荷がかかるスポーツ選手についても調べられており面白かった。(8章)

    人類の進化の過程における、分配・道具の利用について、摂取・消費カロリーにどう影響したかも面白かった。

    パレオダイエットの根幹部分、原始人は肉を主食に~は最新研究より否定されており、根拠としては不十分。でも糖質制限で結果が出る理由も書かれていた。興味深い

    人は雑食で、定住地の状況に合わせて食生活を変化されてきた。また環境に応じて遺伝子も変化し、食生活に適した消化システムになっている。この点もう少しほかの資料に当たってみたい。

    また読み直そう

  • 面白サイエンス本。とにかく文章読ませるしジョークバンバン入ってくるしエピソードトークも全部面白い。
    それでいてこれまでの素人知識をそっとひっくり返してくる。

    ハッザ族の観察の具体と代謝をめぐる知見と、最終的には環境問題とスコープがグングン抽象具体を行き来して飽きさせない構成になっていて、ニワカな自分にも大変とっつき易い内容でした。

  • 人間の1日の消費カロリーは何しても変わらないから、in/outのoutを増やしても消費カロリーは変わらない。inの調整をしても体がカロリーを要求する仕組みなので結局戻る。

    ただ、運動をするとカロリーの使われ方が変わるから正しく理解したほうがいいのと、加工食品等の脳をバグらせる食品を摂取して過剰なinをしたらそれは脂肪になっちゃうから気をつけよう。という話。

  • 代謝についていろいろな視点から考える。
    人間以外の動物の代謝と人間の代謝は違うのか。現代でも狩りをして暮らす民族と都会で暮らす人間との代謝は違うのか。興味深いことがたくさん述べられていた。
    人間の体が本能で進化に求めることと現代人が体型を維持したい欲望とは違うみたいだ。

  • 二重標識水法という新しい計測方法で消費エネルギーを計測すると、狩猟採集民も現代人も、どれだけ運動量が違えど1日あたりのエネルギー消費量は同程度だった。(制限的日次カロリーという)

    代謝システムは、制限的日次カロリーにおいて、消費カロリーを一定に保つ。運動をして消費すれば
    空腹感を刺激して食べるように促すし、逆も然り。

    したがって、運動しても痩せないのは、制限的日次カロリーであるから。

    面白いのは、糖質制限も高炭水化物食も、痩せるのは摂取カロリーが消費カロリーを下回るから、ということ。狩猟採集民は、実は炭水化物を多く摂っており、高脂肪食だったのはエスキモーなどの寒い地域の話だった。

    パレオダイエットの元になった論文で扱われてるデータは不完全で偏ったものである、という主張もなるほどだった。

    要は、議論の元になってるファクトとされてるものは、本当にファクトなのか?を疑うことで、新しいことを発見したのだ。それは二重標識水法もそう。



  • タイトルが目に惹くが、もっと幅広く代謝を扱っている。
    適切な体重を保って健康でいるためには、適度に運動し、加工食品でない形のあるものをバランス良く食べる。
    書いてしまうと肩すかしのようだが、私たちの消費するカロリーも取得できるカロリーも身体によって厳密に管理されていて、足し算引き算のようなわけにはいかない。だから表題のように運動しても摂取するカロリーが減るわけではないという。
    極端なダイエット手法は短期的な効果があるように見えても実は意味がなく、カロリー自体を減らすことしかない。本来は余分なカロリーは摂取しないようにコントロールされている筈だが、今の加工食品の魅力は自ら備わるブレーキを跳ね飛ばすほどなのだと。
    本書はハッサム族という狩猟採取民族の日常やオリンピック選手のような特殊なカロリー摂取をする人たちのデータまで取りそろえ、代謝の不思議な力に引き込まれるように読んだ。

  • 参考図書

  •  興味を持って図書館から借り出したが、タイトルからして、そもそも読む気が失せるというか、これまで何のために運動してきたのだろうと暗澹たる気持ちになる。ということで、なかなかページを繰る速度があがらなかった一冊(著者の筆致によるところも大きいとは思う)。

     主旨としては、タイトルの如し、「運動しても1日の総消費カロリーに変化はない」ということ。それが、近年の人類学的研究で明らかなになったという、その研究発表だ。ハッザ族という、アフリカでいまだに狩猟採集を行う少数民族を通じ、エネルギー摂取と代謝のメカニズムを解明した。

     解明できたのは、動物の1日の消費カロリーを正確に測定することが出来るようになったこと(「二重標識水法」という新手法らしい)、それによって、われわれ先進国に暮らす人間と、ハッザ族のような狩猟採集民、さらにはオランウータンやチンパンジーなどの類人猿の消費カロリーを測定した。その結果が、“運動しても痩せない”だ!!!(涙)

     いや、それだけが研究の成果ではないのだけど、もう、右に行ったり左に行ったり、ハッザ族とのたわいもない日常の描写に明け暮れて、ほんと、ページが進まない。 いやいや、読み手の興味がそれ以降続かない(苦笑)

     ともかく、その結論だけではなく、その研究によって導き出されるさまざまな発見も開陳されているのだが ― 例えばハッザ族には、糖尿病、肥満、高血圧と言った成人病が発症しないとか、分配と代謝率の向上で集団が生まれ抗争が勃発したとか、単なるダイエット論争に終止符を打つだけではなく、スポーツ科学や人類学についても、衝撃的な事実が述べられている。

     では、運動することは無駄なのか!?

     でもないらしいところが、さらに本書のもどかしいところ。運動してもしなくても1日の消費カロリーは変わらないとなれば、もう運動やめちゃおうかと思うが、摂取した上に、運動にも使われなかったカロリーは、不必要な「炎症」を起こし、現代病の原因になるという。余ったカロリーの使い道の際たるものが「炎症」だとか。アレルギーや関節炎、動脈疾患のほか、さまざまな「現代病」の原因となっているのだそうな。
     故に、運動すれば、余ったカロリーが消費され、ムダな炎症が抑えられる。つまり、健康が維持される。

     要するに、喰ったら走れ!ということだ。
     ・・・ いや、その前に、もう少し食べる量減らせよ、ってことなのかもしれない。

     つか、読まなくても分かってる話か、それって!? 
    (いやいや、こうした研究がなされ、科学的に証明されたというありがたい書なのだ)

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著者プロフィール

ハーマン・ポンツァー
デューク大学人類進化学准教授、デューク・グローバルヘルス研究所グローバルヘルス准教授。人間のエネルギー代謝学と進化に関する研究者として国際的に知られている。タンザニアの狩猟採集民ハッザ族を対象としたフィールドワークや、ウガンダの熱帯雨林でのチンパンジーの生態に関するフィールドワークのほか、世界中の動物園や保護区での類人猿の代謝測定など、さまざまな環境において画期的な研究を行っている。その研究は、ニューヨークタイムズ紙、BBC、ワシントンポスト紙などで取り上げられている。

「2022年 『運動しても痩せないのはなぜか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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