目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673999

感想・レビュー・書評

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  • 水戸の美術館のマッサージ室で働く白鳥さんは、子どもの頃少し視力があった時期もあるが、小学校の途中から盲学校へ通い現在は全盲である。そんな白鳥さんと美術館にアートを見に行く。見えているアートを白鳥さんに言葉で説明する、そんな風にして各地のアートを見に行った記録。
    もともとは、水戸芸術館であった視覚に障害のある人と芸術館を楽しもうという企画で知り合った白鳥さんと著者の友人が著者を誘って始まった。芸術とはなにかとか、障害とは何なのか、健常者である自分にいろいろな課題を投げかけてくれた。

  • 目の見えない人と美術館ってのも驚いたが、黒部ダムの闇とそれから生まれた芸術作品にもびっくりした。こんな情報社会の世の中でも、知らない事がまだまだあるんだなあ。死ぬまで勉強です。

  • アート本且つ深いような真っ直ぐな話。もっともっと白鳥さんワールドも知りたくなった。
    知らない世界を知るきっかけになった。

  • T図書館
    「パリの国連で夢を食う」を読んで再読2024年
    友人マイティさんに誘われ全盲の白鳥さんと3人(数人の場合も)で数ヵ所美術館を巡ったノンフィクション

    美術館へ行くと、どんな作品?大きさは?など白鳥さんが質問したり会話を聞いたりして楽しむ
    白鳥さんは生まれつき極度の弱視で、色を見た記憶はほとんどなく、色は概念的に理解しているという
    美術のきっかけは、大学生時代に美術館デートでダヴィンチのスケッチを見たこと
    展示内容というより、美術館の静かな雰囲気に何もかもワクワクし、盲人らしくない行動で面白いなと思って、美術館を見つけると自分で電話をかけて、誰かにアテンドして貰えないか頼み、美術館への扉が開かれたそうだ

    《感想》
    読みやすかった
    前の読書と比べて新しい発見はなかった

    対話型鑑賞は聞いたことがあったが、見えない人に教える、説明するとなると、また違った感覚になりそうだ
    美術って何も知らない方が面白いと改めて思う
    知識を先につけてしまうと感受性が狭くなって広がりが皆無になってしまう
    白鳥さんも知識でなく、同伴者の何気ない会話が聞きたいのだ
    美術館に行く機会があったら、まずはまっさらな状態で作品に向きあってから深堀したいと思った

    白鳥さんについて
    目の見えない人がすべてマッサージ師になれる訳ではなく、洗濯物も畳めない人もいる中、白鳥さんは1人で行動でき、宿泊でき、健常者の友達も多く、写真も撮ることがてきる器用な人
    ハンディキャップが持っているのに物おじしていない
    たとえ科学が発展して見えるように手術できるようになったとしても、このままがいいと答えたから、身体を超越し悟りの境地に達したような方である
    こういうお人柄だからこそ生まれた本だろうと思った

  • おもしろかった!
    美術館、1人で行くのも好きなんだけど、他の人と見えたものの印象を話しながら鑑賞するのが大好きで(元々声が爆デカなのでよく怒られる…)、本編の趣旨とはちょっと違うけどこの鑑賞スタイルも間違ってなかったんだ!と思った
    当たり前だけど、障害の有無に関わらず、みんなそれぞれ自分の考え、スタイル、好きな物嫌いな物があって、同じ人なんてどこにもいないんだな〜
    クリスチャン・ボルタンスキーの展示と、興福寺に仏像を見に行くのと、マリーナ・アブラモヴィチの《夢の家》に泊まりに行く回が特に好き!
    全然関係ないけど、筆者の川内さん、白鳥さん、お友達が多くてすごい……

  • ◯白鳥さんやマイティ、さらには偶然にそこに居合わせた人々までが、美術館というものを触媒にして重なり合うような感覚があった。(26p)

    ◯"見える人"も実はそんなにちゃんと見えてはいないんだ! と気がついて。そうしたら、色々なことがとても気楽になった。(117p)

    ◯自分が今見ていないその場所に七七億人の命があり、それぞれ与えられた時を生きていることを絶えず想像することだ。(246p)

    ◯わたしたちは、誰もがなんらかの方法で「いまの自分」を確かめている。(252p)

    ★対話をすることで理解が深まる。相手と向き合うことで存在を確かめ合える。

  • 目の見えない方の本というよりも、
    心のありようをついてくる著者の本がとても好きです。
    いま欲しい答えをいつも見つけられます。

  • 面白かった!
    全盲の白鳥さんとアート鑑賞をすると、自分の見たもの感じたことを言葉にしていくわけで、その過程でこちらも新たに発見することがあったり、ほかの人と全然違う見方をしているときがあったり、より深くアートを鑑賞していることになって興味深い。
    視覚障害の人が身近にいないけどこんなにどこへでも動けるのが新鮮。
    読み進めるほどに、障害って、優性思想って、記憶って、時間ってなんだろう…?と自分の内面を見つめざるを得ない。
    「優しさや、気遣いも、行き過ぎると、偏見や差別になる」という言葉が重い。そう、そうなんだよな、、、でも、知らないからこそそうなるんだなとも思った。知っている人になれば、過剰な気回しもしなくなるわけで、相手を知ること、認めること、という多様性に回収される自分。
    登場するアート作品も気になるものばかり。新潟の夢を見る家とか、さっぽろ一番の袋をびっしり展示したりとか、ボルタンスキーのランプ人間。。。

    また美術館行きたいな。

  • 不思議な本だった。
    空気感も不思議だし、一直線でない。
    分かろうとして、分かるわけないじゃんと思い、助けようとして、助けるなんておこがましいと思い、頑張ろうとして気持ちがふさぐ。

    美術館に行って全盲の白鳥さんの前でペチャクチャ語り合っていた時間が、中盤以降の世の中の不思議を語る場面に繋がるのは偶然ではない。
    観察眼が尖ってくるたび、日常の中でも、おかしなことに気が付くようになるのだ。

    私もただの素人だが、数年前から楽しく美術の本を読むようになって、本書の結言部分と同じような、下記のような感覚に至ることになったのも、偶然ではないと思う。

    『この絵の話をしたいのではない。
     この絵を鑑賞してあなたはどんなことを感じ、どんなところが心の琴線に触れたのか。
     あなたのことをもっと知りたいんだ。』

  • ピアニストの辻井伸行さんのお母様が辻井さんが小さい時に美術館に連れて行くなどしていたと聞き、とても衝撃を受けたのを覚えています。
    それ以来、目の見えない方の絵画鑑賞とはどのようなものか?をぼんやりと考えていたのですが、この本を読んだ今、美術館は目が見える人のものだけではないと強く感じました。

    白鳥さんが「なんだ、目が見えている人もちゃんと見えてるわけではないんだ」みたいなことを思う一文があって、これが全てだと思いました。
    わたしは絵画鑑賞が好きでよく美術館に行く方ではあるのですが、わたしが絵画を見ることで得ているのは絵画の知識や歴史的背景、絵描きが作成した作品の作成意図を正しく解釈するなどそんな大それたものではなく、ただの体験です。
    その絵を見て、どういう印象があるか?どう感じたか?悲しいのか、楽しいのか、明るいのか、かわいいのか、不気味なのか。それは白鳥さんが著者たちとの会話の中で楽しんでいるものと変わらないと思いました。
    というか、複数人が会話しながら絵を見ることで絵画の印象が変わったり、気づきがあったり、わたしもそういう鑑賞の仕方をしたい!となりました。
    世界はマジョリティだけのものではないと改めて思う1冊でした。

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著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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