目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

著者 :
  • 集英社インターナショナル
4.03
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673999

感想・レビュー・書評

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  • 全盲の白鳥さんと筆者の川内さんたちが、美術鑑賞をするエピソードが綴られている。白鳥さんは、美術作品の解説を求めているのではなく、いろんな人が美術を鑑賞したこととその人とのかかわりを楽しんでいる。

  • 全盲の美術鑑賞者、白鳥さんとアートを巡る旅を始めたら、新しい世界が見えてきた❗
    自分も参加しているかのようなワクワクが伝わる本‼️

  • 目の見えない白鳥さんが、机をコツコツと叩いて「自分が存在してることを確認する」と話す場面が何か揺さぶられる。

  • “当たり前だけど、四歳は忖度しない。 それは相手が盲人でも同じだ。 ナナオにとって白鳥さんは障害者でもヘルプを必要とするひとでもなく、ただそこにいるひとにすぎなかった。だから、いともあっさり「やだ」と言い放てる。”
    “優しさや気遣いも、いきすぎてしまえば偏見や差別になる。
    小学生のころからわたしたちは道徳の授業なんかで、困っているひとには優しくしましょう、などと教えられる。そこにあるのはもちろん良き意図なんだけど、あの「優しくしましょう」もまた、「助けるひと」「助けられるひと」「感謝するひと」「感謝されるひと」という関係の固定化や分断のスタート地点だったのかもしれない。
    しかし、四、五歳といった幼い子どもたちは、そんなの関係ないもんね!という態度である。”(p.179)


    “僕らはほかの誰にもなれない。ほかのひとの気持ちになんかなれないんですよ!なれないのに、なろうと思ってる気持ちの浅はかさだけがうすーく滑ってる、そういう社会なんですよ、いまの社会は。 だから気持ち悪いの!”(p.319)

  • 目から鱗のアート体験記。
    川内さんの懐の深さに驚かされます。そして勉強になりました。
    人との関わりあいかた,自分の存在,わかり合いたいという気持ち,「この世界でー笑いたいんですよ」しみじみ共感しました.
    パンチの効いた表紙の絵も良かったです。

  • 全盲だが年に何十回も美術館に通う白鳥さん。見える人たちと作品を前に語り合うことでアートを楽しむのだ。「意見が分かれるものほど面白い」と言う彼との美術館めぐりは新たな発見に満ち、実にスリリング。
    同じものを前にしても、人によって印象も違えば注目する場所も違う。人の知覚というのは実はそのくらい多様であやふやなものなのだ。でも、だからこそ人の話を聞くことで、自分が持たなかった新たな視点に気づいたりもする。互いの違いを違いのまま楽しむための媒体としてアートは最適なのかもしれない。

  • 川内さんの本は、『バウルの歌を探しに』以来。
    衒いなく人と出会い、今まで自分が知らなかったものと出会い、謎を解いていく。そこは共通していた。

    今回の本は、タイトルにもなっている白鳥さんの飄々とした魅力を追うなかで、障害とアートについて謎が解かれていくかんじだ。

    助ける助けられるを超えて、一緒にいる。
    自分のなかの偏見に気づく。
    障害をわかったつもりにならない、寄り添う。
    アートを通して話す。ただ一緒に笑う。
    そのひとがそのひとのままで作品を見たり、作ったりする。
    外国人としてのマイノリティの感覚と、障害者としての感覚の近さ。

    こうして言葉にすると、ありがちにも見えるが、白鳥さんとの物語をとおして読むことで、腹に落ちるものがあった感覚。

    アートは障害者のイメージを向上する転換装置だと思っていたけど、そうではなかった。
    障害の有無に関係なく、みんなが生まれつき持っている表現の力を展示し、鑑賞してもらうことで、「障害とはなにか」を考えるひとつのきっかけになるのでは。

    アートと障害については、「はじまりの美術館」館長の岡部さんの言葉が、印象的だった。
    イメージ向上転換装置としてのアートに、なんだか違和感を持っていたのを、それを生業にしてきた人に、言語化してもらったかんじがする。

    また、本筋ではないけれど、辛いことがあった記念館に、他の立場の人の主張の展示がないのが不満という白鳥さんに、はっとした。


    内容的なことではないけれど、かなり口語体なので、まだまだ若いエリートでオープンな40代ののりに、ついていけるかというので、この本の好みはわかれるかなという気もする。
     

  • 昨年、最後の読了した本。
    数日経ってしまったけれど、大事なことなのでメモ、メモ!

    目の見えない人とアートを見にいくって、どういうこと?
    素朴な疑問に、ちょっとワクワクしながら読み始める。

    ぎこちなかった初期の頃から回数を重ね、2年に及ぶアート鑑賞。

    「一緒に作品を見る行為の先にあるものは、作品がよく見えるとか、
    発見があるとか、目が見えないひとの感覚や頭の中を想像したいからではなかった。
     ただ一緒にいて、笑っていられればそれで良かった。
     ものすごく突き詰めれば、それだけに集約された」320頁

    最後に、こんな風に言えるまでに、いろいろなことを考える著者。
    当然、読み手の私も考える、考えさせられる、我が身が恥ずかしく落ち込む。
    平易な文章でクスクス笑いながら読めるのに、集中しないと
    考えられない。だから、一人の部屋でじっくり読んだ。
    でも、ときどき笑っていたはず・・・不気味か!w

    あとで、記になったことを引用しておこう・・・

  • タイトルを見て頭の中に?がたくさん浮かんだ。目の見えない方がアート?触るとか?音声説明?どうやって??今まで考えたことはなかったが、何が見えているかイメージを伝えて見ると知り、一つの絵をとってもそれぞれ見方が違う中で面白いと思った。
    文書の説明を読みながらカラーの挿絵を見て、なるほど、そうも見えるのかとたびたび気付かされ、私がいかに美術作品をよく見ていない又は偏った見方をしているのか気付かされた。
    また、その中でアートは自由に見るものだと改めて感じたし、本を読みながらアートの世界に連れて行ってくれる作品だった。

    本の表装はつるつるしているところもあったり、ざらざらしているところもあったり、紙の分厚い質感なども素敵で手で触っても楽しめる本だった。

  • 盲目の美術鑑賞家、白鳥さんと著者が美術館を周りながら著者の感じたことが綴られていくエッセイ。
    書かれている内容は(思想的に)簡単ではないものの文章はわかりやすく、白鳥さんをはじめとする登場人物とのやりとりもコミカルなため、興味深く読み進めることができた。
    盲目者を伴う美術鑑賞は説明するサイドにとっても新たな視点を与えるもので解像度を上げるという話から始まり、時間や生死に対する哲学的考察、日本社会に根付く差別や優生思想、語られなかった者たちの物語まで、多様なトピックを白鳥さんとの美術鑑賞を通じて著者の視点で語られていく。
    個人的には、白鳥さんやホシノさん、マイティといった楽しそうな人たちと美術館で交流する機会を持てるという経験そのものに価値があるのだろうな、と感じ、著者を羨ましくも思った。
    今が一番大切、そしてその今を価値観の合う人と笑い合えたらそれで良い、そのように感じさせてくれる一冊だった。

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著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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