生まれが9割の世界をどう生きるか 遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815615888

作品紹介・あらすじ

子供に親は選べない、どんな環境に生まれるかは運任せだ。最近話題になっている「親ガチャ」という言葉があらわすのは、遺伝と環境要因がすべてを決めるので、努力することに意味はないと言った若者の諦念である。
確かに遺伝が、あらゆる要素に影響するのは事実である。しかし、遺伝科学についての最新の知見は常に更新されている。専門家ではない人間が過去の研究結果を軸に、あたかもそれが唯一の真理のように語るのは非常に危険である。
本書では、行動遺伝学の専門家が、一般読者の遺伝についての素朴な疑問に答えるとともに、遺伝における不平等を前提にしたうえで、「いかに自分らしく生きていくか」、「幸福に生きるのか」。そのための方法を論じていく。

感想・レビュー・書評

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  • 興味深い内容でした。
    P42:『親からの形質の伝達』に記載されている図、なるほどと思いました。

    以下引用
    P6:
    『世界は遺伝ガチャと環境ガチャでほとんどが説明できてしまう不平等なものですが、世界の誰もがガチャのもとで不平等であるという意味で平等であり、遺伝子が生み出した脳が、ガチャな環境に対して能動的に未来を描いていくことのできる臓器なのだとすれば、その働きがもたらす内的感覚に気づくことによって、その不平等さを生かして前向きに生きることができるのではないでしょうか。』

    P227:
    『逆に「優性的現実」、すなわち遺伝的に優秀な人が有利に生きられる社会はそのまま残ってしまった』

    P246:
    『私たちは能力の個人差の問題から絶対に逃げられません』

    単語
    ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)
    ポリジェニックスコア
    Socioeconomic Status
    優生学(Sir Francis Galton)
    ブランクストレート説
    自然主義的誤謬
    事実命題と価値命題

    目次
    第1章:遺伝とは何か-行動遺伝学の知見/p15~p102
    第2章:学歴社会をどう攻略する?/P103~P154
    第3章:才能を育てることはできるか?/P155~P198
    第4章:「優性社会」を乗り越える/p199~P246

  • 遺伝ガチャと環境ガチャが幅を効かせるこの世界で生きていくために

  • 人間のほとんどは遺伝と運で決まる、らしい。

    がしかし、お金で人の可能性やきっかけ、やりたい事を与えられない、受けられないことへの不満や不平等は消えない。

    親の教育や先生への過剰な期待よりも、システムや情報が広く、安く、手軽に行き渡っている事の方が重要。

  • 遺伝とはトランプで配られた手札のようなもの
    本人の意思や努力、教育などでコントロールできるのは1〜2割程度
    親の能力をそのまま引き継ぐとは限らない
    平均回帰するので優秀な親の子は普通になりやすい(スポーツ選手など)

  • 行動遺伝学の本。タイトルのとおりの内容。
    生まれで決まる現実を受け入れられるか。

  • 子どものためにした方がいいことを充分にできていないのではないかという罪悪感から解放してくれる本。リラックスして過ごせる環境を用意すればそれでいいのだと思える。中学受験について考える上でも参考になった。

  • 遺伝と環境と偶然の産物。それらの堆積物が人というもの。
    極端に言えば、自由や意思などどこにもない。
    そんな論考に、そのとおりだよなあ。
    と思っていて…
    でも、その遺伝、環境、偶然ってどう違うんだろう。
    選べないという意味では、主体・自分にとっては、全て同じ。
    全ては偶々。
    と言っているに等しいようにも思う。

    この本では著者は、
    遺伝と言っても、それは親から子に引き継がれるもの、という意味あいより、たんに偶然に配られる生命の設計図であること。
    共有、非共有環境と言っても、それは、受け止める主体の、生命の受け止め方でしかなく、特定の事実そのものとは違った、体験、感想・感覚を指すものであること。
    を主張しているように受け止めた。

    「環境というのは膨大な要因で構成されており、一つ一つの要因の効果量は極めて微小、なおかつしばしば遺伝的素質と複雑な交互作用をしているということです。誰にとっても同様に作用する、単純な環境というものは存在しません。あらゆる形質は、遺伝と環境が複雑に作用して形成されているのです。」(p60)

    偶然に支配される、不平等な世界。
    それは所与のもの。

    そう認識した上で、雑に「賢い」「有能」などと、強く結び付けられて評価されがちな、社会的評価をどう受け止めるか。自らのこれからをどう考えるか。社会的な生き物である人間に生まれた以上、他者、社会からは逃れることはできない。

    もっと考えてみようかと思った。

  • 「音楽がやりたいと思った時点でそれは才能の発芽」等興味深い言葉も多かったです。

    また年収に関しては若い内は遺伝の影響を多く受けるが、歳を重ねるにつれ非共有環境の影響が強くなってくるとも。これはよく感じます。

    体型(痩せやすさ)に関しても遺伝の影響があるそうで、こちらはあまり他人をどうこう言うのはよくないですね。

    とても面白かったです。

  • 子供を育てて、また仕事で子供と接してきて、
    生まれ持ったものが一人一人全然違うなと感じていたが、この本を読んで、やはりなぁと納得した。


    「本人がやりたいと感じるのは、すでにれっきとした才能」

    この言葉が良かった。

    その才能を育てていく環境が、なるべく平等に与えられるように、大人が、社会や教育の場を作る必要があると思う。
    親ガチャに外れたとしても、なるべく早く自立できる世の中で、自分を大切にできる場所など。

    遺伝の影響があることを知ると愕然ともするけれど、考えようによっては「好き」や「得意」という感覚を大事にして、周りの大人もそれを尊重してあげられれば、一人一人自己肯定感が持てるようになる。

    またどの王道分野もパッとしなくても、ニッチな部分の「得意」をいくつか掛け合わせていければ、ローカルトップに達せる。

    希望を持って生きようと思う。

  • もし子供を産むなら”いい遺伝子”が欲しいと思うのは至極当然であるということが分かった。
    あとは環境。誰もが富豪になれるわけじゃないけど、子供ができたら子供がやりたいと思った事をやらせてあげられる余裕は絶対にもちたい。

    ・好きこそものの上手なれ

    ・自分の中にあるこれが好きこれは得意これならできそうそういったポジティブな内的な感覚は、自分の能力に関する重要な手がかり

    ・何かを好むということ自体がすでにその人らしさの表れであり、能力の萌芽

    ・自分にしか感じられない、心の奥から小声でしか囁いてくれない「素質」の芽生えを大切にする

    ・好きなことをやっていくうちに、その分野についてどんどん得意になっていくと言う事は、生物学的に見ても自然なプロセスだと思われる

    ・環境側の圧力が低下すればするほど、遺伝的な能力の差がストレートに出てくるようになる

    ・自分の好きや得意に関して、普段から自覚的になっておくこと

    ・才能のある人の3条件: 特定の領域に対してフィットしていること、学習曲線が急上昇のカーブを描くこと、学習ができる十分な環境が与えられていること

    ・可愛い子には旅をさせよの現代的な意味はリアルな自己発見

    ・居場所を変えてみることで、今まで見つけられなかった自分の遺伝的素質に出会えるかもしれない(青い鳥効果)

    ・やりたいことがない人は偶然を信じて動いてみるしかない

    ・やりたいことがあるのなら、いきなりグローバルトップと比べるのではなくやりたい気持ちがあるなら、下手でもまずやってみる。そしてしばらく続けてみる。

    ・没頭している対象が学習性があり、本物につながっているかどうかは気にすべき

    ・個人技で輝く分野において、中途半端ななんとなく好き程度では頭角を現す事は難しいと言う事は理解しておくべき

    ・集中力、フロー状態でそのことに長時間没頭し、しかもその狙い所がちゃんと社会的にも評価されるようなものでなければならない

    ・子供の知能や学力に効果がありそうな要因: 静かで落ち着いた雰囲気の中できちんとした生活をさせること、本の読み聞かせをすること

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授
主要著作・論文:『生まれが9割の世界をどう生きるか―遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SBクリエイティブ,2022年),『なぜヒトは学ぶのか―教育を生物学的に考える』(講談社,2018年),『遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門』(培風館,2014年)など

「2023年 『教育の起源を探る 進化と文化の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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