- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822248970
作品紹介・あらすじ
思い込みは捨てて、顧客から学ぼう!「構築‐計測‐学習」というフィードバックループを通して、顧客も製品・サービスも生みだし育てるシリコンバレー発、注目のマネジメント手法。
感想・レビュー・書評
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非常食の定期宅配サービスyamoryを立ち上げる前から、東京大学i.schoolでデザイン思考を学んだり、Y-combinatorの人のTwitter botを読んだりしていたし、リーンスタートアップに近い概念は理解していた。スタートアップ界隈で話題になっている本書は、デザイン思考やらアジャイル開発やら何やらを改めて体系化してくれたものだ。
めちゃくちゃ面白い。何が良いかって、これは実際に作るための方法論を語っているのだ。(東京大学i.schoolのダサいところは、一流のファシリテーターを呼んで、一流の学生をワークショップに参加させておきながら、最後はプレゼンでお茶を濁して「教育プログラムですから」と逃げてしまうところだ。)
「デザイン思考」よろしく「リーンスタートアップ」も結構なバズワードになっているが、本質的なところは捉えているので、流行が過ぎ去っても無効になることはないだろう。
スタートアップとは:できるだけ早く、作るべきもの(顧客が欲しがり、お金を払ってくれるもの)を突き止めること。実験。
リーンスタートアップとは:Build-Measure-Learnのサイクルタイムを短縮化し、顧客に対する洞察や大いなるビジョンに気を配りつつ、「検証による学び」を通じて、画期的な製品を開発すること
価値:顧客にとってメリットを提供するもの
無駄:上記以外全て
スタートアップとは実験である。当然事業の根本には仮説があり、それを検証することが必要。一番最初に検証すべきは以下の2点。
価値仮説:あるモノをつくったとして、顧客がそれに価値を感じてくれるか。欲しがり、お金を払ってくれるか。
成長仮説:顧客が価値を感じてくれたとして、それが広まっていくか。
Launchrockなどを使ってティザーサイトを作ってみたり、製品の予告編を作ってみたりして反応を見てみるだけでも価値仮説に関しては有効な検証ができるだろう。(今思ったけど、映画の予告編だけ先に作ってから本編を制作するか決める、というようなことをやっているところってないのかしらん)
MVP(Minimum Viable Product)をつくる:検証したい仮説に関する実験をするための製品。必要最低限の機能さえついていないこともある。MVPをつくるときに、必要だろうかと少しでも迷ったらシンプルにすべき。求める学びに直接貢献しない機能やプロセス・労力は全て取り去ること。
バッチサイズを小さくする:Build-Measure-Learnにかかるサイクルタイムをできるだけ短くする。そのためにはバッチサイズを出来るだけ短くする必要がある。
仕事の進捗は、こなした作業の量ではなく、検証できた仮説で測る。
5回のWhyをやる
自分で何かやりたい、という人は是非読んでおいたほうがいいと思われます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スタートアップが成功するための方法論として、エリック・リースが提唱する「リーンスタートアップ」。本書はエリック・リース自らがその枠組みについて書き下ろしたもので、非常に説得力があり、なぜ今リーンスタートアップという考え方が重要となっているのかがよくわかる。GEは自らの組織改革において、このリーンスタートアップを全面的に参考にして「ファーストワークス」という彼らの新しいやり方を構築したという。
リーンスタートアップとはイノベーションを継続的に生みだすための枠組みであり、そのためのアプローチである。その目的は、「顧客の望みを中心に(顧客から望みを聞くわけではない)意思決定を科学的に行う」ことである。また、ここでいう「スタートアップ」とは、「とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織である」。技術革新とネットワークの力、失敗のコストの低減などからスタートアップに限らずどのような企業においても、サービスを一から起こして効率的に成功する(もしくは失敗する)ための方法論が重要になっていると強く感じる。企業内で新しい事業を始める人(本書ではイントレプレナーと呼んでいる)は、本書にまとめられた「リーンスタートアップ」の枠組みを大いに参考にするべきだろう。
著者は自分の起業体験を説明するために、トヨタのリーン生産方式からヒントを得てその考え方をスタートアップに適用したという。リーン生産方式とは徹底的に無駄を排除するための方式であるが、スタートアップの経営でも無駄をできるだけ早く発見し、体系的に発見した無駄をなくしていくことが重要である。著者はそのことを自らのスタートアップ経営の経験から学び体系化してきたのである。現代の社会環境では、その重要さはもしかしたら生産の現場よりも大きいのかもしれない。
生産管理とスタートアップのマネジメントでは、必要とされるものはほとんど逆の性質を持っているのではないのかという印象を持つかもしれない。しかし、この本を読むとスタートアップにこそリーンな考えが必要であることがわかる。リーンスタートアップの枠組みの基本は次の通りである。
1.アントレプレナーはいたるところにいる
2.企業とはマネジメントである。スタートアップとは製品ではなく、組織である。
3.検証による学び。スタートアップの存在意義は、モノを作る、お金を儲ける、顧客にサービスするだけではない。どうすれば持続可能な事業が構築できるのか
4. 構築-計測-学習。アイデアを製品にする、顧客の反応を計測する、そして、方向転換(ピボット)するか辛抱するかを判断する ー これがスタートアップの基本である。
5.革新会計。企業の成果を高めたり、イノベーターに責任を持たせたりするため、アントレプレナーは、おもしろくない部分にも注力する必要がある。進捗状況の計測方法やチェックポイントの設定方法、優先順位の策定方法などの部分だ。
企業には、ビジョンがあり、戦略があり、製品がある。その中で、ビジョンはめったに変わらないが、戦略は変わるべきである。さらに製品はもっと頻繁に変わるべきである。そのことをスタートアップのチームで共有することは重要である。「製品は最適化というプロセスで変化していくが、これを私はエンジンのチューニングと呼ぶ。製品ほど頻繁ではないが、戦略も変化することがある(ピボット)。しかし、全体を支配するビジョンはめったに変わらない」
だからこそ、リーンスタットアップにおいては、「失敗」が非常に重要になる。単なる学び、ときに上手な言い訳、ではなく「検証による学び」という概念で、学び・失敗をとらえなおすことが重要だと言われている。そのために構築-計測-学習のサイクルを素早く回さなくてはならない。学習すべきことから計測すべき内容を導き出し、そのための構築を行うという形でバックワードで計画をして、素早く実行するのである。そして、必要であれば失敗に基づきピボットできるようにする。実際に中にいるものにとっては、ピボットの判断は非常に難しい判断になることが多く、また手遅れになることも多い。だからこそ、きちんと検証による学びをこのサイクルの中に意図的に組み込んでおかなくてはならないのである。
起業は博打ではない -「起業とはマネジメントの一種である」-「スタートアップは正しいやり方で進めるからこそ成功するのだ」。これがエリック・リースの基本的な信念でもある。
現在の状況において重要な問いは「この製品を作ることができるか」ではない。おそらく人間が思いつける製品であれば大抵のものは作ることができる。問われるべきは「この製品は作るべきか」なのだ。その先には「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」ということが問われるべき問いになる。そのために実験と検証が非常に有効だと。それがリーンスタートアップの肝となる -「我々はかつてない状況に直面している。人類全体の想像力の質が未来を左右する状況に」
「やってはいけないことをすばらしい効率で行うことほど無駄なことはない」のである。リーンスタートアップの枠組みは、この無駄なことをやってしまうことをを可能な限り少なくするためのものなのである。
実際に社内で新しいことをやるとき、「社内イノベーションでは「どうすれば社内スタートアップを親組織から守れるか」が課題だとよく言われるが、私は逆に「どうすれば親組織を社内スタートアップから守れるか」が課題だと思う」- この言葉を正しく理解できていないのかもしれないが、社内スタートアップを親組織である社内でいかに機能的に位置づけていくのかが大きな課題であると理解している。
「失敗」という言葉に新しい意義が加わり、段々と深みが積み重なっている気がする。
多くの学びがある、貴重な本。
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伊藤穣一が解説を書いているが、彼の9プリンシプルズのひとつに「地図よりコンパス」が挙げられている。伊藤穣一はここで、リーンスタートアップの本質をわかりやすく表現すると「地図を捨てコンパスを頼りに進め」と説明している。現在の状況では、地図を作製しようとするとそれだけでプロダクトを開発する以上のコストがかかってしまうし、その間にさえ地図が陳腐化してしまう。コンパスを手に柔軟に進み、ときに素早くピボットをすることが成功の鍵になる。特に「セレンディピティ」の恩恵にも預かりやすくなるのである、と。
「地図よりコンパス」というのはわかりやすいかもしれない。
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『GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822255115
『9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152096977 -
スタートアップのバイブルともいえるこの本をようやく読みました。
「ようやく」と言ったのは、
「まぁ、読まなくても大体言っていることはわかるし、
わざわざ今更読む必要はないかな」と思っていたからです。
読んでみた感想は、半分は当たっていたけど、もう半分は間違っていたでしょうか。
リーンスタートアップって、製品・サービスを完璧に仕上げてから、世に出すのではなく、
未完成の状態でどんどん世に出して、顧客の声を集めて、
改善していった方がより早く、より良いものができるってことでしょ、
くらいの理解しかなかったのですが、
確かにその通りなのではあるのですが、
本の中で述べられている革新会計を通して、
製品・サービスがどの程度顧客に受け入れられているのかをモニタリングしたり、
ピボットのタイミングや種類だったりは、勉強になりました。
一方、本自体は欧米の本によくあることですが、
結構冗長で結論とポイントとその実例を書いてくれていれば、
もっと分かりやすくもっとシンプルになったのではないかと思います。
リーンという考え方自体は、スタートアップ界隈では浸透しすぎて、
もはやリーンだけでは勝てなくなってきているみたいですが、
それでも原典に当たって著者の考えをトレースするのは、
この分野で仕事をする人(大企業の新規事業開発含む)にとっては一定の意味がありそうです。 -
ドラッガーによるマネジメント開闢から百年、マネジメントの第2世紀は、不確実性との戦いである。
ただし不確実であるがゆえに起業のチャンスは膨大で、起業ルネサンス時代とも呼ばれる。
だから、この不確実な起業ルネサンス時代における起業とは、投資家に対する事業の蓋然性の証明要求との戦いでもある。
そこで生まれたのが「リーン・スタートアップ」手法である。
リーンとは、無駄のない状態を指し、トヨタ方式の無駄取りに起因し、それを起業マネジメントに適用しようと考えられている。
「アイディアの構築→実用最小限プロトタイプによる計測→科学的方法に基づいた学び→方向転換(ピボット)判断」という
起業マネジメントの1周をいかに素早く回転させるかをテーマにしている。
秀逸である。
なんども社内起業し、成功も失敗も経験したが、フィールドが変わると経験則が活用できない歯がゆさがあった。
起業のプロセスや方法論が毎回ゼロスタートにしか出来ないことを悩み、考えていたところで
この本に出会った。次回の事業展開では全面的に採用するつもりだ。 -
「リーン・スタートアップ」という言葉聞いて何のことなのかピンと来ない用語だし、さらに帯を見ても「リーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望とさまざまなポイントに等しく気を配りながら検証による学びを通して、画期的な新製品を開発方法なのである」とある。長いしよくわからない。
でもこれは読むに値する。これはベンチャーの起業の仕方の話ではなく、マネージメント論そのもの。
トヨタの生産方式をヒントにソフトウェアのアジャイルやデザイン思考の流れにそって新たなプロセスを提示する。今までの大量生産時代のモノの作り方やスピードでは「時間の無駄」が多すぎ、これを最小にするために「構築ー計測ー学習」サイクルをなるべく短期間に時間も金も最小にまわし続ける、これにより顧客の本当に欲しいものに「一番効率よく」たどり着くことができる、という発想。
キーワードとしてはどれもわかっているものではあったが、仮説の立て方や検証(計測)の仕方をどれだけ意味のあるものにするかのあたりが面白い。活かせるかどうかもここポイントだという気がする。
本のつくりとしては流れはいまいちで前半はモヤッとした感じで、後半の理論と実例での検証の辺りだけでもいいかも。
この本というよりもこの手法そのものに可能性と発展を感じる。時代の潮流になりそう(既になっている?)。 -
## リーンスタートアップ
不確実な状態で新しい製品や事業を生み出そうとする人は
大企業の人含めみんなアントレプレナー。
リーンスタートアップはスタートアップの成功確率を高める方策。
## ビジョン-戦略-製品
スタートアップはビジョンを実現するために戦略を採用。
製品ほどではないが、戦略も変化する(ピボット)。
戦略は仮説に基づいている。
価値仮説(製品やサービスが価値を提供できるか)と
成長仮説(製品やサービスをどうとらえ広がっていくか)。
## 構築 - 計測 - 学習
実験をし、構築 - 計測 - 学習のフィードバックにより
持続可能な事業ができるかを学ぶ(製品と市場のフィット)
評価尺度(※)を定めて、チューニング、そして判断。の繰り返し。
(※)追加した機能による影響を測れるもの。
## 学びの進捗、スピード
実験により何が顧客にとって価値を生み出すのかについて学ぶこと、
労力に対するその学びの量がスタートアップが前進していることを
示す指標になる。
作り込んだ機能の数ではなく、学んだ量で生産性を測る。
顧客が望んでいないものを作るのはムダ。
バッチサイズを小さく。
# 所感
リーンスタートアップの事例もいくつも紹介されているが、なかなか細部まで読み解くのが難しい(一度読むことを途中諦めた。。)。実践にあたっては概念を本書で掴みつつ、「ランニングリーン」などを参考にするのが良さそう。
定期的にふりかえりたいこと
・顧客が望んでいないものを作るのはムダ。機能の数でなく学びの量が大事。
・不確実だからといってJust Do Itではない。戦略・仮説が必要。
・虚栄の評価基準は危険。実験の結果であることが分かる、持続可能かを
判断できる指標を定める。 -
良いこと書いてるんだろうけど、他の本で似たような知識吸収はできる。
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何度も読み返した。
今後の仕事のバイブルや。
今までウォーターフォールで開発経験を積んできたが、グサグサ刺さる考え方がたくさん。
局所の効率化を追求すると全体効率は必ず下がる。
今まで開発効率が下がる事=事業も損してる!!!と思ってたけど、もっと広い視野がある事に気付いた。
作るものの特性にもよると思うが、リーンを回せたら躍動感もってプロジェクトできるんだろうなー
そんな仕事をしたいもんです。 -
こちらも、GEなんかも取り組みだした「リーンスタートアップ」を知っておくために読んでみた一冊。この本は良かったな~、仕事上で活かせる考え方が多々あった。新しいことを始めるにはスモールスタートがやりやすいけど、それだけじゃ考えとしては足りない。そのやり方にもいくつも工夫すべき点があることを改めて考えさせられて、早速自分の仕事の仕方も少し変わってきたかな。リーンな考え方も取り込みつつ、失敗から学んでできることを増やしていけるといいなと。
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リーン生産方式
=我々の努力のうち価値を生み出しているのはどの部分で、無駄なのはどの部分なのかということ