- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833419369
感想・レビュー・書評
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ケビン・メイニー『トレードオフ――上質をとるか、手軽をとるか』(プレジデント社、2010年)を読んだ。著者の主張では、成功する商品のポジショニングは「上質」か「手軽」かの一方を追求したものだという。二兎を追おうとすると中途半端になり、一兎をも得ない不毛地帯に陥る。
「上質」で成功した商品が拡大戦略によって「手軽」へと進出する際には、まとったオーラが剥離しないための工夫が必要だ。たとえばAppleは、iPodのブランドが陳腐化する前にiPhoneを世に出した。「手軽」から「上質」への進出成功例は同書では挙げられていないが、たとえばユニクロによる機能性衣類(ヒートテック)の販売が思い浮かぶ。また、破壊的イノベーションの製品は一般的に手軽→上質の道筋をたどるだろう。
ただし、一方を追求したからといって成功が約束されているわけではない。上質では成功しなかった例として、IBMのUNIXであるAIXが挙げられている。AIXは同書によれば「極上」だが、.COMバブルの際にはSolarisに市場を席巻されてしまった。その後IBMはLinuxを採用し、手軽さを加えていく。私は必ずしもAIXが極上とは思わない(同じIBMならOS/400のほうが優れていると思う)のだが、同様な例としてNEXTの商業的挫折を想起した。
ところでIBMのLinux戦略については、夜間学校の第一四半期の講義で興味深い話を聞いた。IBMの技術理事だった講師の話では、IBMがLinuxを採用したのは対Sunであって、対Microsoftではなかったという。だから、Windows版に代わるLinux版のクライアントソフトを作成してほしいという顧客からの要望は断っていたそうだ。この講義では、3層アーキテクチャ提案の裏事情など、めったに聞けないIBMのビジネスの本音が聞け、非常に楽しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ものが売れる(ヒットする)為には、上質であることを勝負するのか、手軽にできることを勝負するのか。両立は夢の世界。テーマはこれに尽きる。
この件に関して、具体例を挙げ論述、結果論に見えなくもない、が、事実が語る、と考えればそうかも。 -
心を鬼にして上質さとどちらかひとつに賭けようとする者は、煮え切らないものよりも大きな成果を手にする。
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世のサービスは、上質か、手軽かの2つに区分され、どちらに振れるかでビジネスの成功と失敗のカギを握っている。事例とともにそれぞれが語られており、納得度が高い内容。
・消費者は絶えず上質か、手軽のどちらか一方を選びとっている。
・テクノロジーの進歩はこのどちらも押し上げていく。
・上質さも手軽さも秀逸ではないサービスは不毛地帯に追いやられる。
・上質さと手軽さ両面で卓越するのは不可能だ。
・上質の頂点→iPhone、
手軽の頂点→ウォルマート。
・上質さと手軽さをめぐるほかの条件が同じ場合、社会的価値を加味することでサービスへの期待があがる
(iTunesは自分一人で聞くから高いと思うが、着メロは人に聞かれるのでたかいとは思わない) -
あああ
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様々な会社の例を取り、上質と手軽さを比較。真ん中をとるとヒットしない、確かに。個人的思い込みがある感じもするが、様々な比較対象がうまい。
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品川Lib
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上質と手軽
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元USA Todayのテクノロジー担当記者だったケビン・メイニー氏の著書です。
記者として数々の企業トップなどへのインタビューや取材を通して培った経験を基に話題となったビジネスモデルや商品を分析した見解を紹介する内容となっています。
この本の視点は、「上質か、手軽か」の一点に集約されています。
中途半端はダメで、「上質か、手軽か」のどちらか一点を目指し、他は捨てることこそ戦略であると論じています。
「上質とは愛されることであり、手軽とは必要とされることである。」という記述は、ビジネスの成功モデルの本質をうまく掴んでいる言葉だと思います。
上質か、手軽かという視点はありそうでなかった視点であり、改めて周囲の商品を見ると色々と考えさせられることが多いです。
この視点に新鮮さを感じましたし、読んでいてとても面白かったです。
この本では具体的な戦略をどうするかまでは落とし込まれていないという指摘もありますが、自分で考える楽しみと考えれば良いと考えます。
読みやすく、わかりやすい良書です。
最後に本の装丁についてですが、「ビジョナリー・カンパニー」のジム・コリンズ氏の著書かと思うような出来栄えです。せめて帯だけにすれば良いのに・・・著者が気の毒に感じました。(笑) -
上質と手軽さ。シンプルな判断基準は参考になる。自分自身に対しても。