ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840212502

感想・レビュー・書評

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  •   暑い季節に読むのにぴったりでした。ペパーミントみたいに淡く見えるのにツンと刺激を残すような、そんな話でした。血飛沫あげる戦いだとか情熱だとか、そういったものとは一切関係のない世界。強い主張があるわけでもないのに、読み終わった後には薄っすらと何かが残ってるような感じです。

      これを読んで考えさせられたのが「優しさ」についてでした。十助の能力はイマジネーターに出てきた飛鳥井の能力に似ている気がします。当時私がそれを読んだ時は正直、こういう能力があれば誰も悲しまなくて済むし、いいことなんじゃないかって思ったりもしたんですが今回は簡単にはそう思えませんでした。

      本当の「優しさ」ってなんだろう、と考えた時にそれは傷つけないようにすることではなくて相手をいたわったり、思いやったりすることなんじゃないか、というのにたどり着きました。そうすると、この十助の作るアイスクリームのもたらす優しさは虚像に過ぎないと嫌でも気づかされます。タチが悪いのは本人が何かしらの目的や意図があってそうしてるのではなくて、ただ純粋においしいアイスクリームを作りたいと思っていることでした。魔術師・・・なんですが、道化師に見えてしまう。それは私を凄く悲しくさせました。ペパーミントを本にしたらきっとこんな感じ、という本そのものでした。

  • ブギーポップシリーズ第七作目。
    シリーズ中最も好きな作品。
    なぜなのかと思ったら、私の大好きな映画『シザーハンズ』に物語がそっくりだったことが判明。

    鋏の手を持つエドワード・シザーハンズ。
    アイスクリーム作りの天才”ペパーミントの魔術師”=軌川十助。

    外の世界に引っ張り出された「純粋な異形」が織り成す奇妙で切ないおとぎ話。

    本作においてブギーポップは脇役にすぎない…。

  •  人の痛みを消すことがいいことだ、とは限らない。自分の痛みに鈍感になった人間は他人の痛みにも無頓着になる。想いやろうという行為自体を忘れてしまう。痛みを亡くした自己は曖昧さを増し、終いには自身の存在でさえあやふやでつかみどころがなくなってしまう。

     彼は知らなかったのだ。痛みがなくなれば世界は幸福で満ち足りると信じていたのだ。少しおどけて、慈愛に満ちた孤独なペパーミントの魔術師は。

     彼の力はあまりにも無意識で悪気がなくそれだけに性質(たち)が悪い。それ故か、彼は世界の敵にすらも為りえず、死神にも見放されてしまった。 道化のように滑稽さと悲哀を胸に秘めて。

  • えー。

    よく人の痛みを知れなんて言葉を聞く。
    この場合の痛みとは肉体的な意味ではなく、心の痛みってやつなんだろうが。
    痛みってのは肉体からの場合、それ以上は危険という警告の合図らしい。
    つまり痛みを感じたら、それ以上は踏み込んではいけないということだ。
    だが、時々、痛みを乗り越えて強くなれなんて言われたりする。
    筋肉痛なんかも筋肉を成長させるためには実は必要だ、なんて言っている場合もある。

    では痛みとは何なのだろうか。
    動物も人間も痛いのであれば本来は退くべきなのだ。
    それにも関わらず、その痛みを知れというのは己も警告を知り、
    それ以上踏み込まないように学習するということなのかもしれない。
    しかし人の痛みを知れという場合の痛みというのは心の痛みであり、
    心の痛みというやつは千差万別だったりする。
    誰かが痛いことでも誰かは平気だったりして、その場合、痛みを知るというのは
    どういうことなのだろうか。
    人の痛みを知るということは、即ち、ソイツ自身になってしまうのと同じとなのではないかと思う。

    痛みを知り、痛みを克服することで強くなるというのに、痛みを通じて、
    ソイツ自身になってしまったら、自らの成長は止まってしまうと言える。
    だからきっと痛みというのは、危険の合図であるとともに、成長のためのシグナル
    なのではないだろうか。
    痛みを避けるのではなく、痛みを受け入れ、自分のものとすることで成長を遂げる。
    それこそが痛みとの付き合い方であり、人の痛みを知るってことなんだと思う。
    まぁ本音としては痛い思いをせずに成長したいんですけど。

  • 「ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師」上遠野浩平
    ライトノベル。んー、ペパーミントグリーン。
    ブギーポップシリーズ第6作。

    統和機構の”失敗作”、軌川十助の栄光と没落の物語。
    舞台設定がいいです。文章もいい。
    何となく感じる世を憂える感じもアリですね。やっぱし上遠野さんの十八番はイマジネーターの感覚なんでしょう。
    いわゆる安っぽいライトノベルは面白くないですから・・・。
    それにしてもこの世界の危機と人造人間の登場のさせ方はさすがというかなんというか。よくやるわ。

    ちょっとイレギュラーなキャラクターを登場させすぎた感もありますが(楠木玲は単発キャラには勿体ない)、統和機構がなんだかんだ結局絡んでくるのでおいしい話ではあります。
    アイスが美味しそう。藤花が最初に食べたチョコミントが食べたいです。

  • ブギーポップシリーズの中でもかなりの異色作。しかし他の文芸書でもライトノベルでも、ブギーポップ以外では出来ない話だろう。ライトノベルでありながら1冊完結の連作であるブギーポップには「悲劇」が許されることが大きいのかな。

  • 「パンドラ」と同じぐらい、シリーズの中では好きな作品。

  • ブギーポップシリーズでは断トツ好きです。
    チョコミント食べたら・・・

  • ブギーポップすら気づかなかった、
    「世界の敵」であり、失敗作でもある
    一人の男の物語です。

    全頁を通して、どこか寂しい雰囲気を
    漂わせています。
    そう、かれといたものは
    「ある変化」のせいで違和感を感じてしまうから。

    そう、なぜ彼が世界の敵だけれども
    抹消されなかったかは、
    最後に明らかになることでしょう。
    それも、あまりに寂しすぎる事実ですが。

  • 終わり方が切ない…
    これはほんとシリーズの中でもひっそりとした立ち位置なんだろうな。そこがいい。

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著者プロフィール

第4回電撃ゲーム小説大賞〈大賞〉受賞。『ブギーポップは笑わない』ほかシリーズ著作多数。

「2019年 『ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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