あひる

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著者 : 今村夏子
  • 書肆侃侃房 (2016年11月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863852419

あひるの感想・レビュー・書評

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  • どこにでもあるような家族の不思議な手触りの三つの物語。
    あらすじを聞いても全然そそられないかもしれないけれど、これを読まないで今年を終えたらきっと後悔すると思う。5年後とか10年後に、きっと後悔する。そんな一冊。
    しかしなんだろう。このざわざわとした感じは。
    読んでいる人の皮膚の下を動き回るような、そんな落ち着かないざわざわした感じがくせになりそうで。
    普通の毎日、何気ない日々、当たり前の時間。そういうものを少し斜めから見ている視線。
    こういうなんかよくわからないけど読んだ後、ずっと時間が経ってから何かの拍子に表にぽんっとでてくるような、そんな物語を描く人なんだな。

  • <感想>
    読書芸人で光浦靖子が紹介していた作家「今村夏子」さんの本。
    以前から気になっていたため購入、読了。

    全体に漂う「違和感」、「気持ち悪さ」、「怖さ」何だろうこの作品は。
    今まで色んな本を読んだが、この作風・読後感は唯一無二ではないだろうか。
    ホラー作品とも違う、人間の内面を描くこの深くエグってくる感じの怖さは、ある意味でそれ以上だ。
    一方で、気付いたら抜けられなくなっている中毒性がある、これがまた不思議だ。

    個人的には「あひる」が一番印象に残った。
    のりたまの替え玉を用意する父親、宗教にのめり込んでいる母親、そして感情が見えず・何となく無気力な主人公、作品全体に不穏な空気感を漂わせる要素が散りばめられている。

    作品としてはこの家族の異質さが最も目立っている。
    だが一方で、個人的には別のテーマがあるように感じた。
    それは「人の興味の移り変わりの残酷さ」だ。

    この家族は最初は「ニワトリ」を飼っていた。
    だが、いつの間にかいなくなってしまっていて、このニワトリ小屋を取り壊す形で「あひる」が飼われ始める。
    そして今度は「あひる」から「弟の子供」へと関心が移り、あひる小屋は撤去されブランコとなる。

    これは、物語の裏でも同じことが起こっている。
    あひるをくれた新井さんは、あひるを忘れて今は子供の家族と幸せに暮らしている。
    家に遊びに来ていた子供達も、誕生日パーティーには結局来なくなり、家からも離れていってしまう。

    これは別に異質な家族だけに限定されたことではないように思う。
    何となく人間の暗い部分を見つけたような、そんな気持ちになった。

    新たなジャンル、作家さんを探していたので、そういった意味ではとても良かったように思う。
    その他の作品も読んでみようと思う。
    芥川賞を受賞する日も近そう。

    <印象に残った言葉>
    ・おかしい。これはのりたまじゃない。(P19)

    ・三びきとも?(P55、女の子)

    ・のりたまの小屋は工事が始まると同時に潰された。庭にブランコを置くのだそうだ。(P62)

    <内容(「Amazon」より)>
    読み始めると心がざわつく。
    何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。
    淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。

    あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」。おばあちゃんと孫たち、近所の兄妹とのふれあいを通して、揺れ動く子供たちの心の在り様を、あたたかくそして鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3編を収録。

  • 怖い。
    一見ハートフルとも思える始まり方で、じわじわと、気がつけば脱出不可能な、地獄のような日常に追い詰められている恐怖。
    読後しばらくは謎の焦燥が止まらない。

  • 「あひる」「おばあちゃんの家」「森の兄妹」
    読み手によって受け取り方がかわってくる不思議な物語。私はどうしてもネガティブに深読みしてしまう傾向が強いので灰色ぽく感じてしまった。

    「あみ子」の時もそうだったけど、時が止まった昭和の夕暮れから夜…みたいな雰囲気がこわかった。今作ではますますホラー感が増していて、読み終えてからすぐに読み返しました。すごいとは思ったけどざわざわして何とも言えない…。

    物語の中で“お彼岸のおはぎ”が出てきたけど、いまちょうどその時期でシンクロしてぞわっとした。

    この単語は何にかかっていくのだろう…と、文章の句読点や区切りが不自然で数か所意味が分からなくて、何度も読み返した部分がある。(これたぶんわざとこうしてるんだろうなぁ…)ホラーやイヤミスもイケるんじゃないかな。あひるという単語を調べた。

    自分の子供の頃の行動にも心当たりがあり過ぎて、読むたびにあの頃が浮かんで不安になる今村さんの作品。境い目がハッキリしない良さとこわさがごちゃごちゃに…。(面白いという感覚ではないけど最終的に4回ほど読み直した)

  • ・あひる
    ・おばあちゃんの家
    ・森の兄弟

    「こちらあみこ」を読んで、この人の作品をもう一つ読みたくなった。

    この人の作品は、描かれている人の視点が、感情が少し変わっていて、それをそのままで読むと、情景がぐにゃりとゆがんでしまう。その常識と違ったぐにゃりとした情景を楽しめるかどうかなんだと思う。

    誰が悪いとか、誰が変だとかそういう話ではなく、ただ、感性が異なる人目線での日常が、通常と異質なだけなのだけど、でも、やっぱり読んでいると気持ちが悪い。

    嫌いじゃないけど、気持ちが悪いから、もうこの人の作品は読みたくないと思った。

  • 衝撃作と言うとまた大袈裟に!と言われそうだが掛け値無しで衝撃作だった「こちらあみ子」…それ以来「書きたいものがない」と半ば引退同然だった今村さんが「書きたいもの」が出来たときのペンは鋭く次作を待ち望む気持ちを裏切ることはなかった。
    誰にも似ていないその世界観はなんと例えたらいいのだろうか?
    強いていえば「合わせ鏡のホームドラマ」…
    一見なんの変哲もない家族の風景なのだが重なり合う鏡の何枚かに見てはいけないものが写り込んでいるような心のざわざわ感がこの人の作品の特徴でこれがまた癖になる。
    短い本だが紛うことない傑作

  • 噂通り心がざわつく。決して怖い話では無いのに背筋がぞっとする。日常と狂気は紙一重か。

  • 怖かった。とにかく恐ろしい。

  • 表題作『あひる』の語り手のバックボーンが鮮明にならないことで、あひるとの共同生活がいびつで不穏。居心地が悪くてぞわぞわ。

  • 揺れ動く心と、変わりゆく日常が描かれた三編でした。

    『あひる』
    あひるを飼い始めた一家に、子供たちがよく遊びにくるようになります。父と母は嬉しそうですが、幸せな日常の危うさと、それを維持しようとする努力が見えて、気持ちが揺り動かされました。

    『おばあちゃんの家』
    少しずつ変わっていくおばあちゃんを見て、みのりのように、胸がざわざわしたり、ほっとしたりを繰り返します。当たり前の日常は変わっていきますが、いつしかそれがまた日常となり、ざわざわしなくなるものなのでしょうか。

    『森の兄妹』
    マンガも貸してもらえない、ヨーグルトも買ってもらえないモリオは、びわの木の近くの小屋に住むおばあさんと出会います。モリオのおばあさんへの気持ちの移り変わりを感じて、嬉しくも悲しくもなりました。

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文学ムック「たべるのがおそい」創刊号に掲載された注目の表題作ほか、書き下ろし2編を収録

【新たな今村夏子ワールドへ】
読み始めると心がざわつく。
何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。
淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。

あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」。おばあちゃんと孫たち、近所の兄妹とのふれあいを通して、揺れ動く子供たちの心の在りようを、あたたかくそして鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3編を収録。

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