合格(ウカ)る技術

著者 :
  • すばる舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883999927

感想・レビュー・書評

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  • はじめに がんばりすぎるから合格できない

    第1章 がんばらないほうがいいワケ

    第2章 「いきなり過去問」が最短ルート

    第3章 過去問との付き合い方

    第4章 はじめてのテキストはまず「目次」を「イメージ記憶」しよう

    第5章 学校のお勉強とは違う 「テキスト本文」の取り組み方

    第6章 いつでもどこでも勉強できる「仕組み」を作ろう

    第7章 試験直前・当日も「がんばらない」


    ノートを取ったり、作ったりするのに時間やエネルギーを使うくらいであれば、教科書や参考書を読んだほうが楽ですし、時間の無駄がなくなります。
    「何か新しいこと、教科書に載っていないことがあったらどうするんですか?」と思うかもしれません。そんなときは直接、教科書や参考書に書き込んでしまえばいいのです。
     教科書や参考書を、すでに整理されたノートだと思って、どんどん書き込んでしまいましょう。もし余白に書ききれなければ、メモを挟み込んだり、貼り付けたりすればいいだけです。


    過去問やテキストを読みながら、「わかるところ」と「わからないところ」、「覚えているところ」と「覚えていないところ」を「わける」のです。
     いわば、過去問やテキストに関して、どれだけわかっているか、どれだけ覚えているかについて「テスト・試験」をしているようなものです。
     そして「わける」は「わかる」。つまり「理解」につながっていきます。「わける」ことで「わからないこと」がわかれば、それをさらに「わかるところ」と「わからないところ」に「わける」。この繰り返しで、だんだんと「わかるところ」が増え、理解が進んでいきます。



    記述・論述式の過去問を回転して理解・記憶するメリットは、問題作成者の視点を身につけられることです。(中略)
     あなたの向かう相手は試験範囲の知識ではなく、実はそれを使って問題を出す問題作成者なのです。もちろん、知識がなければ、解答できませんが、問題作成者の視点を知らなければ、効率的な勉強はできず、試験合格は遠のきます。
     記述・論述式の過去問では、内容だけではなく、視点も意識しましょう。


    「速読」が今も注目を浴びていますが、速読能力がどうのこうのと言う前に、文字が大きく太ければ、それだけで速く読める、つまり速読できます。(中略)

     過去問を回転させるなかで、だんだんとわかる言葉とわからない言葉が何なのかが区別できてきます。そんなときに、わからない言葉をがんばってわかろうとする前に、こうやって、そんな言葉をただ太く、大きく書いてしまうのです。


    よく「理解が先か? 暗記が先か?」と言われますが、理解や暗記よりもまず先になくてはならないことがあります。それは「言葉」に「なじむ」ことです。
     その試験の専門用語や、キーワードになじんで、意味がわからないとしても、口に出せることです。その専門用語や言葉の意味を「理解」「暗記」できていなくても構いません。
     子どもが言葉を覚えるプロセスを考えてみてください。たとえば、「りんご」という言葉。
     子どもは「りんご」の実物を見て、「これ、りんごだよ」と親に教えられることを通じて、だんだん「りんご」と言えるようになります。
     「りんごとは何か」を理解して、「りんご」という言葉を使いはじめるわけではありません。最初は、「りんご」という言葉を知って、それを何度も口に出しながら「なじんで」いって、使えるようになるのです。


    大項目からだんだんと中項目、小項目にわけて構成、説明していくことは、「ピラミッドストラクチャー」などと呼ばれ、経営コンサルタントなどが、プレゼンテーションを行なったり、文書を書いたりするときの基本的な考え方です。
     わかりやすく説明するためのコツとして「ここのポイントは3つあります。ひとつ目は……」というように、最初に「……は3つです」というように、数を言ってしまうのです。
     目次を使って、テキストのピラミッドストラクチャーを、おおざっぱに、だんだんと重ねることで、テキストの内容が、まさにピラミッドのように立体化して立ち上がってきます。

    じつは、テキストを理解・記憶するために、「読む」というのは勉強のメインではありません。「読む」ことは準備や確認にすぎないともいえます。
     何の準備かというと、それは「話す」ことです。
     テキストなしでテキストについて話す、その内容をテキストを読んで確認する、読んだあとにその内容を思い出しながら話す……。
     テキストを「読む」より「話す」ことを中心にして、勉強していくのです。


    ただ、この2つはいずれも「選択式試験・科目」をメインとしており、私が挑戦した税理士試験や、その他の「記述・論述式試験・科目」では通用しない部分もありました。

    その辺の弱点を補完すべく、今般宇都出さんは行政書士試験に挑戦したワケで、本書では実際に受験勉強の際に用いたテキストや過去問も登場します。


    ◆特に目を引くのが、ポイントの4番目にも出てきた「太く・大きく書く」というお話の際に出てきた実例で、ネタバレ(と言うのか?)自重しますけど、その書き込みはとんでもなく太くて大きいです(そのまんまw)。

    と言うか、過去問本文がフォントサイズ10くらいだとしたら、書き込みは余裕でフォントサイズ48くらいあるようなw

    一応本書の中では、「裏写りせず、太いのでオススメ」として、三菱鉛筆の水性マジック「プロッキー」が推奨されております(製品番号等の記載なし)。

    ずれにせよ、ポイントの最初で言われているように「キレイな"東大合格ノート"はいらない」というスタンスです。


    ◆また、上記ポイントでは言及しませんでしたが、「過去問を切り離す」お話も登場。

    バラバラになった過去問の画像も、本書には収録されています。

    「1回分ごと」「科目ごと」または、前半と後半で問題と解答・解説部分が分かれているタイプなら、アクセスしやすいよう「解答・解説部分だけ切り分ける」等々。

    とにかく、「いかに素早く回転させるか」に対するこだわりがスゴイです。

    選択式の過去問であれば、「すべて正しい文章に直しておく」だけでなく、瞬時に分かるようになれば、マジックで消してしまい、さらに、見開きページ全体が、そのような状態になってしまえば、そのページごとホッチキスで止めてしまうという。

    「キレイなノートを作って勉強したい」という方なら、絶句すること必至かも。


    ◆『速読勉強術』は、ぶっちゃけ、「高速大量回転法」という、シンプルかつ実際にやってみないと実感できない方法の解説が、その内容のほとんどだったため、私としても、手放しでお薦めしにくい本でした。

    それに対し本書は、高速大量回転法等を含む、宇都出さんの勉強メソッドが詰め込まれた、まさにブラッシュアップされた1冊と言えるかと。

    ただし、タイトルにもあるように本書は「合格(ウカ)る」ための本であり、実務に役立つ勉強のための本ではないことはお忘れなく(宇都出さんも「おわりに」で述べられていますが)。

    勉強本というジャンル自体、類書とかぶるコンテンツがあるのはしかたはないにせよ、全体としてのクオリティは高いと思います。


    本気(マジ)で合格したい方にオススメ


    資格試験用のテキストは、試験日までに一冊丸ごと暗記するくらい
    集中して読み込みたいものです。

    そのため、テキストを選ぶときには、何回も繰り返して読めるように
    薄めの本がいいと思います。

    ただし、入門書はダメです。

    一冊で終わらず、さらに上のランクのテキストを買わなければいけな
    くなり、勉強する箇所が重複し非効率だからです。

    できれば、先に過去問を解いておくと、テキストのレベルがわかるの
    で選びやすくなります。

    テキストを買った当初は、モチベーションが高いので最初の1ページ
    から読んでみたくなります。

    そこは、ぐっと押さえて、まだ本文は読まないよういします。

    最初のページに出てくる出題傾向などの記事も読まないようにします。
    もともと、試験分野がどんなものかも知らないのに、出題傾向など読
    んでも時間のムダです。


    まずは、テキストになじむために言葉を覚えましょう。

    私たちは、りんごを知ったから「りんご」という言葉を憶えたわけで
    はありません。

    先に「りんご」という言葉を覚え、りんごに触れ、食感を味わい、
    りんごにまつわるいろいろな思い出を積み重ねて今があるのではないで
    しょうか。

    テキストも同じです。

    まず、中に書かれた言葉に馴染むようにします。
    そのために目次を記憶してしまいます。

    自宅を思い浮かべてください。。
    玄関、廊下、洗面台、トイレ、お風呂、台所、リビング、ベランダ

    あるいは自宅から駅まで、駅から会社までの道のりの風景を思い浮か
    べてください。


    頭の中に思い浮かべた場所に憶えるものを1つずつ置いていきます。

    目次にある言葉をそのまま置いたのでは憶えづらいので、目次の言葉
    をイメージにしてしまいます。


    著者の宇都出雅巳さんは、行政書士の資格を昨年の11月にとったと
    きは、テキストの目次を次のようにイメージ変換したそうです。

    「行政法序論」→叙々苑(じょじょえん)の焼き肉
    「行政主体、組織」→直立不動で棒のように立っている人
    「権限の代行・監督」→中日ドラゴンズの落合監督
    「行政立法」→巨大な立方体

    どうしてそのようなイメージになるのか理由はありません。
    直感です。

    序論が叙々苑ですから、難しく考えていないことだけは確かです。

    次に、先ほど思い浮かべた場所にこれらのイメージを順番に置いてみ
    ます。


    玄関に叙々苑の焼き肉が置いてあります。
    階段までの廊下を歩くと棒のように突っ立っている人がいます。
    階段の踊り場には落合監督がいました。
    階段を上って2階に上がると巨大な立方体が通路をふさいでいます。


    記憶の基本はイメージ化です。

    言葉よりもイメージの方が格段に憶えやすいからです。
    宇都出さんは目次130個を30分で憶えることができました。

    目次を憶えるだけで、その科目への親近感がぐっと湧いてきます。

    速読は、目を速く動かすことよりも、使われている言葉に慣れ親しむ
    ことの方が早道であったりするものです。


    テキストは力まず、おおざっぱに読むようにします。

    行政書士の試験は法令関係と一般知識に分かれます。
    法令は憲法、行政法、民法、商法・会社法に分かれます。

    このあたりまでは難なく頭に入ると思います。


    行政法は、総論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、
    国家賠償・損失補償、地方自治法の6つに分かれます。

    このあたりになると、頭がモヤモヤしてきます。
    もう、一杯一杯になった方もいらっしゃるかもしれません。

    ここで、力を抜きます。

    行政手続き法、行政不服審査法、行政事件訴訟法の3つを「行政○○
    法」とくくってしまいます。

    すると、総論、行政○○法、国家賠償・損失補償、地方自治法の4つ
    になり、スッキリします。

    大項目から中項目、中項目から小項目と、だんだん下に降りていくよ
    うにすると体系的に憶えることができます。

    これは論理を組み立てるときに使われる「ピラミッドストラクチャー」
    という方法です。


    下に降り、着地したらあとは本文を読むしかないのですが、ここでも、
    じっくり読むのではなく「飛ばし読み」をします。


    がんばってじっくり本文を読もうとすると、全体が見えず、長く続き
    しません。

    それよりは、いい加減、雑と思われる「飛ばし読み」の方が、無理な
    く憶えることができます。

    「飛ばし読み」で一通り読んだあとは、憶えているうちに、また最初
    から読み始めます。

    読んだばかりのところをまた読み返すわけですから、自然に憶えるこ
    とができます。

    何度も繰り返すうちに、記憶の定着も進み、読む速さもアップします。


    テキストの分量が多いと思ったときは、バラバラに切り離すのも手で
    す。


    切り離し薄くした冊子を、短く速く回転させることで、さらに効率よ
    く憶えることができます。


    そして、読むばかりでなく、読んだら話すようにしましょう。

    憶えたことを話します。

    人は、話のつじつまを合わせようとするところがありますので、憶え
    たことを「論理的」に、あるいは「物語的」にまとめようとします。

    自分なりにまとめることで、さらに憶えたことが自分の中に定着する
    ことになります。

    本書では、「テキストそのものをイメージでとらえる方法」、「脳内
    テキストをつくる方法」などさらに上級編へと続きます。


    たとえば、日曜日にマンションの内覧会があって、パートナーはすご
    く乗り気になっているとします。

    不動産業者は、不景気だから非常にいい物件が出ていると勧めます。

    ところが、自分の職種でローンが借りられるかわからないし、欠陥
    マンションだったらどうしようという不安もあります。

    そこで、次のようなテーマを設けます。

    「物件の瑕疵に関する問題」
    「ローンの支払いに関する問題」

    テーマを決めたら、書店でテーマに沿う本をできるだけたくさん買っ
    てきます。

    たとえば、ローンがテーマであれば、
    ・自分の職種でローン審査が通るか、
    ・どの金融機関から借りるのが有利か、
    ・変動金利と固定金利のどちらが有利か
    などについて調べます。


    何か問題を抱えたときは、いつまでも先延ばししないで、さっと行動
    に出ることを宮口さんは勧めます。

    自身のセミナーの受講生などには次のように話します。

    「人生はチョロい。」


    社会はそんなに甘いものではありません。

    でも、甘くないからといって、失敗を恐れていつまでもトライしなか
    ったり、準備に時間をかけすぎたりすると、せっかくのチャンスを逃す
    ことになります。

    読書は読みたいときに読みましょう。
    宮口さんは、書店に買いに行くのももどかしく、電子書籍を買って
    すぐに読むこともあるそうです。

    人間は移り気。数日経てば、全然違うことに関心が移っていたりしま
    す。

    本は読みたいときが買うときです。

    選択式のみの試験であれば、過去問だけを勉強すれば十分で、参考書
    を購入する必要はないと宇都出さんは本の中で断言しています。

    ましてや塾に通ったり通信教育を受ける必要もないそうです。


    目的は知識を得ることではなく、合格することにあります。

    テキストから始めるのではなく、いきなり過去問から始めます。

    なお、選択式だけでなく論文試験も加わるのであれば、テキストと
    過去問が必要となります。

    テキストの目次は全部暗記します。

    民法であれば、「民法の基本構造」、「自然人」、「制限行為・能力
    者」などの見出しを全部暗記してしまい、以後は見出しごとに勉強しま
    す。


    過去問については、科目あるいは実施年ごとに問題集からページを
    切り離し、カバンに入れて持ち歩くようにします。

    そして通勤時や昼休み、移動時にカバンからとりだして問題を解いて
    いきます。

    数年分の過去問を解けば、だんだんパターンがつかめてきます。

    問題文で次の文章の中から正しい文を選べとか、誤っている文を探せ
    というものがありますが、解答を見ながら、違っている部分を手書きで
    修正して、全部正しい文にします。

    反復して問題文を読み返すときに、読みやすくするためです。


    テキストにしても、問題集にしても、優しすぎず、かといって難しす
    ぎない適当なものを1冊ずつ選ぶようにします。

    試験は合格点をとればいいわけですから、めったに出題されない難問
    にまで手を広げる必要はありません。

    完璧をめざして、テキストや問題集を買い足し、勉強の対象をどんど
    ん広げるようなことをしていたら、ドーナツ現象が起き、基本的な問題
    が解けなくなり、点数を稼ぐべきところで点数が取れなくなってしまい
    ます。


    1つのテキストあるいは問題集を何度も読んで回転させます。
    最初はわからなくても、何度も読み返すうちに言葉に馴染んできます。


    問題文ごとに自分で「見出し」をつくり、後で思い出しやすいように
    する方法もあります。

    問題文のなかで憶えなければいけないキーワードは、裏写りしない
    太めの水性マーカーで問題文の上に大きく書き入れます。


    読み返すときに一番最初にキーワードが目に入ってくるので、しっか
    り要点をとらえた憶え方をすることができます。


    完全に頭に入った問題文には大きなバッテンをして、以後、そこは
    繰り返して読まないようにします。


    バッテンが増えてくるとリーディング1回転にかかる時間がどんどん
    減り、苦手な問題に充てることができる時間が確保できます。

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著者プロフィール

宇都出雅巳(うつで・まさみ)

速読×記憶術の専門家。トレスペクト教育研究所代表。

1967年生まれ。東京大学経済学部卒。出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学に留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立し、トレスペクト経営教育研究所(現・トレスペクト教育研究所)を設立。35年以上にわたり、記憶術と速読を実践研究し、脳科学や心理学、認知科学の知見も積極的に取り入れた独自の勉強法を確立。その勉強法を使って自らも資格試験に継続してチャレンジしている。TOEIC990点を獲得したほか、難関とされるCFP試験に一発合格。2021年には公認会計士試験にも合格した。そのほか、受験生・ビジネスマン向けの講座・個別指導、企業研修や予備校講師の指導も行う。NHK・Eテレなどメディア出演も多数。現在は監査法人に勤務。

「2022年 『2倍速で読めて、忘れない 速読日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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