| ブログで紹介する» |
|
Check |
|
|
みんなのタグ
この作品からのみんなの引用
-
いまや死体だ、わたしは。屍だ、この井戸の底で。最後の息を吐いてからかなりになる。心臓もずっと前にとまった。だがあの憎き人殺しのほかにはわたしがどんな目にあったか誰も知らない。奴は、あの卑しい下郎は死んだのを確かめるために、まだ息があるかどうかを調べ、脈をみた。それから脇腹を蹴り上げ井戸のところまで運んでいって下に投げ込んだ。井戸に落ちた時、その前に石で割られた頭蓋骨がバラバラになって、顔も額も頬もつぶれて見分けがつかなくなった。骨も折れて、口の中に血があふれた。
― 17ページ -
彼らと共に紺色の夜の中で全てが凍てついている。闇の中で空を飛ぶ鳥は恋人たちのせく心のようにあわただしく飛び交い、あの比類のない瞬間に空に釘で打ち付けられたかのように永久にとどまる。神のビロードの闇が目にカーテンのように下りてきて、盲目になることを知っているヘラトの昔の名人たちは、同時にまた、何日も何週間もの間、身じろぎもせずにこのような絵を見ながら盲目になると、その魂もこれらの無限の時に入ることを知っていた。
― 506ページ -
彼らの顔はややお互いの方向に向けられているものの、彼らの胴体は半ばわしらの方を向いているのが見える。なぜなら彼らは絵の中にいて、見られていることを知っているからだ。それ故にわしらが普段見るものとは良く似ていない。その反対に、アラーの神の記憶から出てきた事を暗示する。だからそこでは、絵の中では時は停止している。絵によって語られた物語はどんなに急いでも、あたかも育ちのよい、礼儀正しい、はにかみやの娘たちのように、手や腕やほっそりした体や目すらあまり動かさないで永久にとどまるのである。
― 506ページ
みんなの感想・レビュー・書評
16世紀末、オスマン・トルコ帝国の、スルタンの細密画工房に使える絵師たちを描くこの小説は、それ自体まさに細密画のような、絢爛で奥行き豊かな歴史ミステリーだ。 目次を眺めるだけで、もうわくわくしてくる。”優美さん”、”蝶”、”オリーヴ”、”コウノトリ”と呼ばれる絵師たち、彼らの忠誠を要求する名人オスマンと、ヨーロッパ絵画へ誘うエニシテという対象的な「父親」たち、「探偵」を演じるカラと、彼を翻弄する... 続きを読む »
毎日こつこつ読んで、やっと読了。おもしろいんだけど、長かった。物語の世界や語り方に慣れるまでに少々時間がかかる。そしてもう少し、トルコの歴史の知識が必要だったかも。最後まで、犯人探しには引きつけられるが、ストーリーとはほとんど関係のない、「わたしの名は”死”」とか「わたしは悪魔」などの章が特におもしろいと思った。イスタンブールへ行きたくなりました。
「美」というものは、どうしても時の趨勢に翻弄されてしまう。
そして母というものは、陰険に計算高く、生き残ろうとするものだ(と、作者は書いた)。
ようやっと読めた・・・いったん返却して、読書会までにまた借りれるかな。
良心の呵責に悩む1週間になりそうだ
斜陽にさしかかったオスマン帝国を舞台にした作品。
トルコ旅行前に読もうとしたけど読み終わらず、でもイスタンブールの地図を眺めていたおかげで作中の土地や位置関係が理解できて更に楽しめた。
その物語の手法や、主人公たち細密画師たちの思考や生活そして知識など、どれだけの調査や構想をしたのかというくらい重厚。
歴史小説、中世恋物語、殺人ミステリーなどなど、内容の要素は盛りだくさんで、それら全部を通して細密画師という「生物」の生態(生き方?)を見た、という感じがした。
読み終わった後は仔細に細密画を鑑賞したくなる。
ただ、原文がそうなのか翻訳のせいなのか、文章がとっつきにくくて慣れるまでくじけそうになる。
章の組み立てや話者の設定などいろいろとたいへん凝ってて、手法もミステリー仕立てでひきつけるようにしてて、でもそれが消化不良にならないところで読者に「いい仕事だなぁ」思ってもらえる、稀にみる傑作だとおもいます。
トルコとかエキゾチズムに興味があるなしは関係なく、高級な「物語」が好きならどうぞ。
中世オスマントルコ帝国のミステリー。トルコがマイブームなので惹かれて読み始めたものの・・・・・。
文章が長くて読みづらい!難しい単語も混じってるし。
短編の連作みたいな作り方で、劇団ひとりの陰日向に咲くを思い出しました。
16世紀のトルコを舞台に、細密画師の間で起こる殺人事件を描いた作品。
構成は凝っていて、全く知らない世界のあでやかなモチーフは目がくらむばかり。
ノーベル文学賞受賞したんでしたっけ?
トルコのノーベル文学賞受賞作家、オルハン・パムクの初邦訳小説。 オスマン・トルコにもイスラームにも細密画にも馴染みはなかったのだけれど、自分の知らない世界について描かれた小説を読むのは、いつもわくわくする。 読者である私たちに向けて、主要な登場人物たちが語りかける形で物語は進んでいく。語り口そのものは平易なのだけれど、作中で展開される芸術論、文化論、細密画の歴史的変遷等々、その濃密さは時として... 続きを読む »
舞台は16世紀末、オスマン帝国の首都イスタンブール。 スルタン(皇帝)に使える細密画師たちが、翌年にひかえたイスラム暦1000年の記念事業として祝賀本の作成を命じられる。 その頃、西洋の遠近法を駆使した写実的な絵画を知った細密画師たちが衝撃を受け、自分たちでも描こうとする誘惑に駆られるが、写実的な絵画はイスラム教のタブーであり、それを巡って殺人事件が起きる。 犯人は誰か? 何故タブーなのか... 続きを読む »
ヨーロッパがルネサンスを迎えた時代の、イスラム細密画家たちの世界。絵画とは何かをテーマとしながら、思いがけず多様なイスタンブールの人々が、彼ら自身の声を通して、描き出される。いや、人々ばかりでなく、死者や木、描かれた馬までも。傑作なんだろうなあ・・・と思いつつ、時折珍妙な表現が混じる訳文に頼らざるを得ないのが、やや隔靴掻痒であった。訳注は付けないようにという原作者の注文もあったらしいが、ルビをうまく使うなどして、「オリエンタリズム」は回避しつつ、トルコ文化の紹介に意を用いても、良かったのではないかと思うが・・・。
●各々の章が、別々の人間の一人称で書かれたトルコ歴史ミステリ。のはずですがしかし。 ●オスマントルコ帝国の時代。 とある細密画師が殺された。 彼はなぜ殺されたのか。殺した犯人は誰か。 ・・・と言った部分は、実はあまり重要ではなく、ストーリーを中心に引っ張っていくのは、夫がペルシア戦に出征したまま帰らない美しい寡婦シェキュレと、十二年前彼女に振られたことが原因でイスタンブルを離れ各地を転々と... 続きを読む »
16世紀末のトルコを舞台とした細密画家の小説。ミステリや恋愛の要素もあるが、やはりこの小説は「芸術小説」とでも呼ぶのがふさわしい。膨大な細密画に関する知識がちりばめられ、それを軸に構成された小説は、重厚な作品世界を構成している。小説作法としても、非常に多くの人の視点へとコロコロと変わって語られるのもユニーク。
だが、この小説の最も優れている点は、なによりも「死」の描写だと思う。エニシテの死の場面はそれだけでも一読の価値あり!もちろん俺は死んだことはないが、この場面を読んで「ああ、死ぬ時ってきっとこうなんだろうな」と感じた。作者の想像力に感嘆する。

以前に通読済み。
『薔薇の名前』の影響だとか、『文明の衝突』だとか、『9.11を予見した』だとか、ステレオタイプで語られることが多いが、そういう見方で読むとこの物語の面白みは半減してしまう。
むし...





