- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898153260
感想・レビュー・書評
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ひらいてみてまずびっくり。白い。
文字は大きく上下左右に白く、ラノベどころの話ではない。
まあ元の話が文字数にすれば少ないので当然なんだけれどびっくりした。
お初ちゃんが口に出す言葉に険があって、地の文との差が大きくとまどう。これが一番の違和感。
平易で負担のない文章なのだけれど、ナニコレ別の人が話してるの?ってくらい混乱したりもした。
お初ちゃん目線の一人称、今時思考で進んでいるので、原文を読むのが苦手だったり古典を受け付けない人でも相当読みやすいと思う。
徳さんやお初ちゃん、それぞれの理由をなんとかわかりやすく伝えようと言葉を尽くしているとこも、描くの大変だったろうなあ。
カミソリいつの間に仕込んでいたのか、そこが謎。
原作はざっくりな分、隙を見て取りにいったのかなぁなんて補完できるけれど、丁寧に書かれている分、謎のままになっちゃった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人形浄瑠璃も観たし、劇も観た
ストーリーはもちろん知っているけれど、始終お初の視点で描かれたこの本のほうが、切ないお初の心の動きが心に迫ります。
話の終わりはお初が命を絶たれるところで終わっていて、それはお初の目が閉じられるから…
切ない切ない描かれかたです -
青空文庫で読める「曽根崎心中」は京言葉なのもあって読むのが難しく、角田光代さんが翻訳されているこちらを読むことに。お初の心情が細やかに描かれていて、心中に至るまでの感情の起伏がとても自然だった。徳兵衛が駄目男なのにお初視点で見てるとまあ可愛いこと!すぐに泣いてしまうような、優しくて騙されやすい美男子、最高です。徳兵衛が縁の下に隠れて、お初の脚で喉を掻き切る動作をする場面に物凄いフェティシズムを感じた。お初の脚に徳兵衛が触れているシーンはどれもこれも素敵!谷崎潤一郎ともまた違った趣がある。谷崎が男性向けならこちらは女性向けという感じ。徳兵衛は結局騙されたのか騙そうとしたのか分からなくなって、徳兵衛について何も知らないことに気付くお初が、それでもいいと心のなかで断言したのが印象に残る。後には引けないから、というのもあるだろうけれど、徳兵衛が罪人であろうとなかろうと、自分が見てきた徳兵衛だけを信じ、愛するという選択の凄さ。内容を把握できたので、次は原作に挑戦したい。'16,4,16 図書館
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三浦しをんや他の人が訳した曽根崎心中を読んだときは「近松門左衛門はこの世の地獄を描き出す天才だな。今の時代にいたらイヤミスとかドロドロの愛憎劇を書いただろうなー」と思ったけど、この曽根崎心中は全然違う。
主人公初の視点から徳兵衛と心中するまでを描いていた小説。新地の中の人たちの生き方、恋愛観などが細やかに書かれ、自分もなんだか汗や白粉の匂い、柔らかくて温かい人びとの感触まで知っているかのような気になりながら読んだ。それだけに、徳兵衛とのどうしようもない恋も、初にとっては幸せだったのだと素直に思えた。運命だと信じられる恋に喜ぶ二人にとって、心中はひとつの解決策となってしまう。
恋に振り回されて死んでいった姐さんたちの魂が、森の奥に二人を誘うのも、追い詰められた二人が、お互いを最後まで手放さないですむように働きかける協力的な存在になる。心中直前の若い二人を死へと誘う魂……というと普通「よくないもの」だが、初たちの視点からだと、自分たちの味方であり「よきもの」になるのが興味深い。
近松門左衛門の「この世のなごり……」の場面の美しさは折り紙つきだけど、それを角田さんが描くと、いよいよ人生最後の景色がきれいできれいで切なくてたまらない。300年経っても、ままならなさの中で二人の恋が見せる景色の美しさは普遍なんだ、と感じた。 -
知らなければよかったことだった。
けれど知らないまま年老いて死んでいたらと思うと
ぞっとすることでもあった。
恋とは。 -
元々嫌いな話だけど、角田光代さんが書かれたらどうなるんだろうと思って読んだ。
分かりやすくて当時の様子がイメージしやすくて、世界観にハマってしまった。 -
物凄いスピード感。
一気に引き込まれた。 -
3.67/1216
『愛し方も
死に方も、
自分で決める。
江戸時代、元禄期の大坂で人々が狂喜したように、激烈な恋の物語が今また私たちの心を掻きたてる。
運命の恋をまっとうする男女の生きざまは、時代を超えて、美しく残酷に、立ち上がる ―― 。
300年前、人形浄瑠璃の世界に“心中もの”の大流行を巻き起こした近松の代表作「曾根崎心中」を、直木賞作家・角田光代が現代に甦らせる!
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これが恋か。初は思った。これが、恋か。
ほほえみながら、泣きながら、高笑いしながら、物思いにふけりながら、不安に顔をゆがめながら、嫉妬に胸を焦がしながら、記憶に指先まで浸りながら、幾度も幾度も、思った。
これが、これが、これが、恋。
(本文より)
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出会ってしまった心を、止めることはできない。
これが、恋のかたち。
幾世の時を超え、いま究極の恋物語がふたたび始まる。』(「リトルモアブックス」サイトより)
冒頭
「鳥の声がする。やがてしなくなる。入れかわるように、あたりの茶屋が戸を開け放つのが聞こえてくる。開け放たれた戸の奥からは、女たちが階段を上がり下りする音が聞こえてくる。泊まりの客に干物か何か用意しているのだろう。やがて障子の向こうの、濃紺だった空が白みはじめ、天井の木目が浮かび上がるように見えてくる。今日はくるだろうかと、布団に横たわった初は木目を目でなぞって考える。」
『曾根崎心中』
著者:角田 光代(かくた みつよ)
出版社 : リトル・モア
単行本 : 176ページ -
原作に忠実でありながら角田節炸裂。一気に読めました。