曾根崎心中

  • リトル・モア
3.71
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898153260

感想・レビュー・書評

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  • ひらいてみてまずびっくり。白い。
    文字は大きく上下左右に白く、ラノベどころの話ではない。
    まあ元の話が文字数にすれば少ないので当然なんだけれどびっくりした。

    お初ちゃんが口に出す言葉に険があって、地の文との差が大きくとまどう。これが一番の違和感。
    平易で負担のない文章なのだけれど、ナニコレ別の人が話してるの?ってくらい混乱したりもした。
    お初ちゃん目線の一人称、今時思考で進んでいるので、原文を読むのが苦手だったり古典を受け付けない人でも相当読みやすいと思う。
    徳さんやお初ちゃん、それぞれの理由をなんとかわかりやすく伝えようと言葉を尽くしているとこも、描くの大変だったろうなあ。




    カミソリいつの間に仕込んでいたのか、そこが謎。
    原作はざっくりな分、隙を見て取りにいったのかなぁなんて補完できるけれど、丁寧に書かれている分、謎のままになっちゃった。

  • 人形浄瑠璃も観たし、劇も観た
    ストーリーはもちろん知っているけれど、始終お初の視点で描かれたこの本のほうが、切ないお初の心の動きが心に迫ります。
    話の終わりはお初が命を絶たれるところで終わっていて、それはお初の目が閉じられるから…
    切ない切ない描かれかたです

  • 青空文庫で読める「曽根崎心中」は京言葉なのもあって読むのが難しく、角田光代さんが翻訳されているこちらを読むことに。お初の心情が細やかに描かれていて、心中に至るまでの感情の起伏がとても自然だった。徳兵衛が駄目男なのにお初視点で見てるとまあ可愛いこと!すぐに泣いてしまうような、優しくて騙されやすい美男子、最高です。徳兵衛が縁の下に隠れて、お初の脚で喉を掻き切る動作をする場面に物凄いフェティシズムを感じた。お初の脚に徳兵衛が触れているシーンはどれもこれも素敵!谷崎潤一郎ともまた違った趣がある。谷崎が男性向けならこちらは女性向けという感じ。徳兵衛は結局騙されたのか騙そうとしたのか分からなくなって、徳兵衛について何も知らないことに気付くお初が、それでもいいと心のなかで断言したのが印象に残る。後には引けないから、というのもあるだろうけれど、徳兵衛が罪人であろうとなかろうと、自分が見てきた徳兵衛だけを信じ、愛するという選択の凄さ。内容を把握できたので、次は原作に挑戦したい。'16,4,16 図書館

  • 三浦しをんや他の人が訳した曽根崎心中を読んだときは「近松門左衛門はこの世の地獄を描き出す天才だな。今の時代にいたらイヤミスとかドロドロの愛憎劇を書いただろうなー」と思ったけど、この曽根崎心中は全然違う。

    主人公初の視点から徳兵衛と心中するまでを描いていた小説。新地の中の人たちの生き方、恋愛観などが細やかに書かれ、自分もなんだか汗や白粉の匂い、柔らかくて温かい人びとの感触まで知っているかのような気になりながら読んだ。それだけに、徳兵衛とのどうしようもない恋も、初にとっては幸せだったのだと素直に思えた。運命だと信じられる恋に喜ぶ二人にとって、心中はひとつの解決策となってしまう。
    恋に振り回されて死んでいった姐さんたちの魂が、森の奥に二人を誘うのも、追い詰められた二人が、お互いを最後まで手放さないですむように働きかける協力的な存在になる。心中直前の若い二人を死へと誘う魂……というと普通「よくないもの」だが、初たちの視点からだと、自分たちの味方であり「よきもの」になるのが興味深い。

    近松門左衛門の「この世のなごり……」の場面の美しさは折り紙つきだけど、それを角田さんが描くと、いよいよ人生最後の景色がきれいできれいで切なくてたまらない。300年経っても、ままならなさの中で二人の恋が見せる景色の美しさは普遍なんだ、と感じた。

  • 知らなければよかったことだった。
    けれど知らないまま年老いて死んでいたらと思うと
    ぞっとすることでもあった。
    恋とは。

  • 元々嫌いな話だけど、角田光代さんが書かれたらどうなるんだろうと思って読んだ。
    分かりやすくて当時の様子がイメージしやすくて、世界観にハマってしまった。

  • 物凄いスピード感。

    一気に引き込まれた。

  • 遊女の初は醤油屋の徳兵衛と恋に落ちた。一年前に出会った二人は、その瞬間からお互いに惹かれ合っていた。初にとって徳兵衛は初恋の人だった。この男がいない世の中は生きる価値がないと思っていた。

    徳兵衛は叔父である醤油屋の主人の怒りを買い、兄のように慕っていた九平次に騙されて金を奪われ、濡れ衣を着せられてしまう。徳兵衛の残る道はひとつしかない、と初は気づく。いっしょに死ねばいいのだ、と。

    くり返し生まれ変わるなら二人はお互いを探し出してまた愛し合う。この命が一度きりならいっしょに終わらせるだけ。
    明日になれば誰もが、遊女と醤油屋が心中した、と噂をするだろう。なんだっていい。人の口の上ですら二人は離れることがない。

    九平次に騙された、という徳兵衛の話が本当かどうかはわからない。そうだとしても、それがなんだというのだ。
    早く、早く、いっしょにいこう。初は短刀を自分の喉に突き立てた。

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    愛し合っているのに、金銭問題やそれぞれの立場のせいで二人は一緒になれない。
    初は田舎の金持ちおじさんに連れていかれそうだし、徳兵衛は縁談を断ったばっかりにふるさとの継母や仲のよかったはずの九平次に裏切られて、散々な目に遭う。

    ”一緒になれないなら、一緒に死ねばいい”
    とても極端な答えなのに、二人にはそれしか選択肢が残っていなかったようにも思えた。悲劇なのに、一緒に死ねる二人が美しかった。

    生まれ変わった来世に期待して現世を耐え忍ぶ先輩遊女もいたし、自殺する先輩遊女もいた。

    weezerは『Say It Ain't So』という曲で、”My love is a life taker(ぼくの愛は命を奪ってしまう)”と歌っている。
    昔も今も、きっとこれからも同じだ。行き場を無くした愛は人を殺してしまう。

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    Weezer『Say It Ain't So』
    https://www.youtube.com/watch?v=ENXvZ9YRjbo

  • 3.67/1216
    『愛し方も
    死に方も、
    自分で決める。

    江戸時代、元禄期の大坂で人々が狂喜したように、激烈な恋の物語が今また私たちの心を掻きたてる。
    運命の恋をまっとうする男女の生きざまは、時代を超えて、美しく残酷に、立ち上がる ―― 。
    300年前、人形浄瑠璃の世界に“心中もの”の大流行を巻き起こした近松の代表作「曾根崎心中」を、直木賞作家・角田光代が現代に甦らせる!
    --
    これが恋か。初は思った。これが、恋か。
    ほほえみながら、泣きながら、高笑いしながら、物思いにふけりながら、不安に顔をゆがめながら、嫉妬に胸を焦がしながら、記憶に指先まで浸りながら、幾度も幾度も、思った。
    これが、これが、これが、恋。
    (本文より)
    --
    出会ってしまった心を、止めることはできない。
    これが、恋のかたち。
    幾世の時を超え、いま究極の恋物語がふたたび始まる。』(「リトルモアブックス」サイトより)

    冒頭
    「鳥の声がする。やがてしなくなる。入れかわるように、あたりの茶屋が戸を開け放つのが聞こえてくる。開け放たれた戸の奥からは、女たちが階段を上がり下りする音が聞こえてくる。泊まりの客に干物か何か用意しているのだろう。やがて障子の向こうの、濃紺だった空が白みはじめ、天井の木目が浮かび上がるように見えてくる。今日はくるだろうかと、布団に横たわった初は木目を目でなぞって考える。」


    『曾根崎心中』
    著者:角田 光代(かくた みつよ)
    出版社 ‏: ‎リトル・モア
    単行本 ‏: ‎176ページ

  • 原作に忠実でありながら角田節炸裂。一気に読めました。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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