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- / ISBN・EAN: 4988013125261
作品紹介・あらすじ
「行け!稲中卓球部」の古谷実が、ギャグ路線を完全に封印した超問題コミック「ヒミズ」の映画化!
感想・レビュー・書評
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「軽口のバラード」 ヴィヨン
牛乳の中にいる蝿、その白黒はよくわかる、
どんな人かは、着ているものでわかる、
天気が良いか悪いかもわかる、
林檎の木を見ればどんな林檎だかわかる、
樹脂を見れば木がわかる、
皆がみな同じであれば、よくわかる、
働き者か怠け者かもわかる、
何だってわかる、自分のこと以外なら。
襟を見れば、胴衣の値打ちがわかる、
法衣を見れば、修道僧の位がわかる、
従者を見れば、主人がわかる、
頭を覆っているものをみれば、どこの修道女かすぐわかる、
誰かが隠語を話してもちゃんとわかる、
道化を見れば、好物をどれほどもらっているかがわかる、
樽を見れば、どんな葡萄酒かがわかる、
何だってわかる、自分のこと以外なら。
馬と騾馬の違いもわかる、
馬の荷か騾馬の荷か、それもよくわかる、
ビエトリスであろうとベレであろうと、知ってる女はよくわかる、
どんな数でも計算用の珠を使って計算する仕方もわかる、
起きているか眠っているかもわかる、
ボヘミヤの異端、フス派の過ちもわかる、
ローマ法王の権威もわかる、
何だってわかる、自分のこと以外なら。
詩会の選者よ、要するに何だってわかる、
血色のよい顔と青白い顔の区別もわかる、
すべてに終末をもたらす死もわかる、
何だってわかる、自分のこと以外なら。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古谷実の同名マンガの映画化。園監督としては初の原作つき映画だ。
原作はダークな青春マンガの傑作だったが、この映画版もじつに青春映画らしい青春映画に仕上がっている。
園監督には珍しく、エロ要素はほとんどなし(神楽坂恵演ずる、妙に色っぽいホームレスの下着姿がある程度)。意外なほど正攻法の青春映画になっている。
私は原作も好きだが、本作の原作改変はとてもうまくいっていると思う。ラストに希望をもたせた(原作では主人公は最後に死を選ぶ)のも納得できるし、ちまたで賛否両論を呼んだ、東日本大震災の被災地をあえてロケ地に選んだことについても、私は「賛」だ。3・11後に現代を描く映画を撮るのに、大震災のことを抜きにはできないと考えた園子温の姿勢は、表現者としてまっとうだと思う。
全編にささくれだった暴力が満ちた映画だが、暴力と背中合わせに豊かな詩情も横溢。詩人として出発した園子温らしい、まるで詩のような青春映画である。
主演の新人俳優2人がまことに素晴らしい。その存在感で、曲者ぞろいの脇役陣に堂々と拮抗している。
とくにヒロインの二階堂ふみは、「野生化して肉感的になった宮崎あおい」という趣で、すこぶる魅力的だ。 -
★ネタバレ
私は原作がすごい苦手で、主人公が最後に自殺するんだけど全然納得出来なくて。
でも映画観て映画は最後生きるんです。
女の子が頑張れ頑張れって何度も叫ぶの。
辛いこととか悲しいことって結局他人とは共感できなくて、でもだから頑張れって言えるんだなと思って、僕は君じゃないからだから支えてあげられるよって言ってるような気がして、よかったなぁと思った。
映画を見て原作も好きになれた。
ただ震災後絡めなくていいのにと思った。 -
観ている間は心臓が痛い。
ストレスに弱いからこの手の映画は観終わった後に失敗したと思うことも多いんだけど、この映画は「観てよかった」感が強い。
二階堂ふみの存在感・演技がこの映画の動力であり心の拠り所なんじゃないかな。
すげーよ二階堂ふみ。もちろん染谷将太も。
津波被害をうけた場所で映画を撮ったのはすごいなと思った。
あれはどんなにお金をかけたセットやCGよりパワーがある。
どのへんで撮ったのかなと調べたら、私の地元でした。
私はあの状況が映像で残るのはいいことだと思う。 -
普通最高!
この映画が好きだ。何度観ても精神的に限界まで叩きのめされ、最終的に「生きなきゃ」と思える。
染谷将太と二階堂ふみの極限まで追い詰めた演技がさらにその現実感をこちらへ叩きつけてくる。最高の映画だ。 -
染谷将太と二階堂ふみが大好きになる。
思春期のなんとも言えない気持ちとか、苛立ちとか、苦しさとか、どこにぶつけたらよいのか分からないエネルギーを全力で演じてくれて、引き込まれていった。
彼らの狂気を揺れ動くカメラワークでとる園子温監督は流石だと思う。
原作も是非とも読んでみたい -
住田がフクシマとだぶって見えた。国策遂行のために棄民にされた。これからの未来は翻弄されるのではなく自立と自己主張が必要だと。だから「住田、がんばれー!」「がんばれ!住田!」
茶沢さんの言う通り「まだまだ時間はたっぷりあるよ」きっとやり直せるよ、と。心に響いた。 -
☂~ 軽口のバラード ~☂
園子温作品はやっぴゃり苦手はわかる
牛乳の中にいる蝿、その白黒はよくわかる、
どんな人かは、着ているものでわかる、
天気が良いか悪いかもわかる、
林檎の木を見ればどんな林檎だかわかる、
樹脂を見れば木がわかる、
皆がみな同じであれば、よくわかる、
働き者か怠け者かもわかる、
何だってわかる、自分のこと以外なら。
イヤ、園子温作品はなにを観てもわからない
放射能を連想させるノイズが最悪
二階堂ふみの役どころが
しつこい、
うるさい、
ただひとつ
窪塚洋介の演技がサイコーによかった
なんであんなチャライ役がうまいんだ -
繰り返し浴びせ続けられる激痛に、
麻痺から狂気へなだれ落ちていくとき、
求めたものはただ私という存在が許されること。
ロウソクに囲まれる2人は、
魂の葬式をしているようだった。
しかし、死して終わるのではなく、
最後に光さす朝もやのような希望に、
絶望が昇華される。
*
若い役者の才能に舌を巻く。 -
過去の自分の、極端versionを見ているような感覚を持った映画。とても面白かったです。この映画から受け取ったメッセージは二つあります。
①自分の作ったルールにがんじがらめになる必要はないんだって、こと
②何事もいつからでもやり直せるんだって、こと
お父さんお母さんに「あなたは本当に必要ない」、「死んでほしい」とずーっと言われても、それとあなたが生きる尊さは関係ないということ。取り返しのつかないことをしてしまい、罪滅ぼしで自分の生きる意味を定義してその通り生きようとして苦しくなったとき、その定義を無くしてもそれはその人の存在否定になるわけではないこと。いつからでも物事はやり直せるし、時間はかかるかもしれないし不利な状況にはなっていくかもしれないけど、それをちゃんと見届けたり応援したりしてくれる人が、必ずいること。
ただ映画を観終わった後にぽっと感じたのは、主人公への嫉妬でした。主人公の住田君は母親が蒸発したり、父親に虐待されたりと、様々な逆境に陥り、その中で「平凡」に生きるために様々なルールを自分に敷き、そのなかで苦しんでいきますが、その主人公をいつも応援する茶沢さんというかわいいヒロインが登場します。どんな逆境に陥っても茶沢さんのような人が傍にいてくれるなら、それでいいんじゃねーの?と思っている自分が、映画を観終わった後、いました。