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感想・レビュー・書評
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有名な作品だが、初めて読んだ(ではなく聞いた)。面白かったが恐ろしかった。
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絞首刑を目前に控えた殺人犯の奇妙な告白。
心優しき妻と、愛する動物たちに囲まれて質素に生きていたはずの男が、いつのまにか黒猫の影をもった悪魔に追い詰められて殺しに手を染めるまでを一気に駆け抜ける。
酒癖の悪さが性格を変えたのか、それともこれが男の本性だったのか。
黒猫は悪魔の化身か、それとも男が作り出した幻影か。
「一匹の畜生が私にーいと高き神の像に象って造られた人間である私にーかくも多くの耐え難い苦痛を与えるとは!」
子供の頃からおとなしくて情け深いと知られていた、お前はどこへ言った。
自分で、「自分を情け深い」などと言う男は、信用ならない。
この男には潜在的に悪鬼のような極悪の本性が隠されていたと考えたほうが腑に落ちる。
という訳で、男の狂気があらわになるにつれて、正常と異常の境目が曖昧になっていく感覚が味わえる。
決して後味は良くないけれど、短編ならではの潔い終わり方をするので、読後感は意外にさっぱり。
海外怪奇小説の入門編としてチャレンジするのにちょうど良い本。 -
2022年3月度「100分de名著」ポースペシャルで取り上げられていたので読んだ。引き締まった文章。物腰柔らかい、動物好きな男性が、酒におぼれて愛猫を殺害してしまう。その後に彼を襲う不幸。ラストの段で、畳み掛けるように記されているくだりが見事。
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最後にちらっと出てくる壁に塗り込められてしまった死体の描写、細かくされているわけではないのに、何故だかありありと目の前に映し出されて背筋がぞわりとしてしまった。
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本当に怖い。「黒猫」が怖いというイメージは、この本によって植え付けられたのでしょう。しかし最も恐ろしいのは人間です。アルコールに溺れた挙句、動物への虐待を繰り返す語り手です。猫のプルートォはそんな人間に罰として、「死」以上に恐ろしい「恐怖」という極刑を与えたのです。
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【壁】
エドガー・アラン・ポー作『黒猫』
ただ読むだけでは面白くないので、図書館にあった翻訳本でいちばん古いもの(1985年)と新しいもの(2016年)で読み比べ。
1985年版『まごころのない・わるぶった・うわべだけ』
2016年版『下劣・軽薄・忠誠心』
使われている漢字の量や種類、表現がここまで違うのかと意外な発見があった。
ただ、読み終わったあとの恐怖感は新旧同様。
とくに壁の中から黒猫が現れるシーンは・・・。