- Amazon.co.jp ・電子書籍 (282ページ)
感想・レビュー・書評
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前半部分で先生の抱えている秘密がほのめかされ、後半は先生の遺書という形でその秘密が明らかになっていく。
財産分与で揉めたり、恋に振り回されたり…そういった人間のこころは今も昔も変わらないなと共感しながら読んだ。一方で、先生の「明治の精神に殉死する」という考え方は理解できないものだった。社会の規範や道徳観みたいなものは時代とともに移り変わるもので、その対比が面白いと思った。
教科書で終わらせるのは勿体ない。
全体として物語を読んでみると全然印象が変わる本だと思う。
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これは最初から最後まで男の物語なのだ。
ホモソーシャルな空間に閉じこもった物語。
名作であることは間違いないが、私のための物語ではない。
自分の倫理的負い目に押しつぶされるのはいいけど、目の前にいるお嬢さんを蔑ろにしている矛盾はどう説明するつもりなんだろうね。 -
恥ずかしながら、初めての夏目漱石。
「千円札の人」から「素晴らしい文才を持った文豪」へと変化を遂げました。
美しい日本語に、この国に生まれて良かったとまで思ってしまった。
誰もが人には言えない事はあると思う。一人それを抱えながら生きていく。
心を開くことができる存在というものは、掛け替えのないものなんだと感じた。
自分の人生を少し振り返ってみよう、そんな気持ちになった。 -
こころに残る本。
何年か経つとまた読みたくなる本。
こころの奥に静かに響く、好きな本のひとつです。 -
高校生の 教科書で 一度読んで 利己心ぐらいしか
感じなかったと思います。
このたび 再び読んでみました。
夏目漱石は 文章が うまいですね。
高校生の時には そんなこと 全然思いませんでしたが。
長い間 読み継がれる 理由が ちょっと わかりました。
「私は わざと それをみんなの目につくように、もとのとおり机の上に置きました。」
この表現 最高の 利己心ですね。
高校生の時に 今と同じ 感想を持てたら いやな 大人に なっていたでしょうね。 -
『こころ』を初めて読んだのは十数年前、高校のときの課題としてだった。こんな話だったかと、いま、思い出した。改めて読んで思ったのは高校生くらいの時分に強制的に読ますのは止めさせたほうがいい。この小説は沢山の駄作良作に触れてこそ真価がわかる。なるべく早く名作に触れさせたいというのは大人のエゴだ。せっかくの作品を嫌いになってしまう。
『こころ』は淡々と続く独白と終盤の激情、そこに至る登場人物の細やかな挙動と機微を味わう作品といえよう。漱石の文章はしっとりとして柔らかな、いうなればショパンのような文感を持ちつつも、感情を揺さぶる強さを兼ね備える。主人公とともに抱えきれぬ秘密を押し付けられる唐突な終わりの演出と筆力は、エンタメが揃った現代においても決して劣るものではない。とはいえ、そこに至るまでは小説としての古臭さと退屈さに我慢せざるを得ないのも事実だ。そこまでの道は「日本語」という言語の持つ質感を楽しめるかどうかが肝なのである。
この名作は、たくさんの小説に触れて文章の良し悪しがわかるようになった大人に是非読んでいただきたい。 -
これ結末を知らない状態でもう一回読み直してみたいです。何でこんなに死の気配が漂ってるんだろう…あっ、もしかして、って考察が捗ったと思う。それくらい構成が巧み。先生が思わせ振り、焦らし過ぎです。誰かに聞いてほしかったんだね。「私」との出会いは運命みたいです。
明治の精神に殉死すると妻に冗談を遺していった先生。しかし彼のセンシティブも辛さも、令和の私達にまで影を落としているような気がしてなりません。現代日本人に精神モデルを示した、小説を超えた思想書のようなものだと思います。なんて本を…なんという「遺書」を遺してくれたんだ漱石…いや「先生」。近代人はそれまでの決まりきった人生の営みから離れ、思考や行動の自由を得たけれど(本書は自由恋愛の話でもある)、同時にそれは「孤独」を強く意識させられることでもあったのかなと。影の面も書いています。
恋とは先生の言うような「罪悪」では決してありません。全ては先生が大切な人たちに開示できなかった「心」の問題なんです。勝手に死んでしまうのはずるい。
Kが死んだ本当の理由はわかりません。先生が彼を観察して語ったことしか書かれていないからです。けれど先生は手紙で、誠実な心からの偽りのない真実(これは先生から見てですが)を「私」に述べました。先生はついに、Kの死の理由に自分と同じ孤独を見出だしたんですね。おそろいの孤独を。 -
明治の文豪、夏目漱石。
本屋さんで夏のおすすめ本として置いてあった。
本書の主人公である「先生」の学生生活の下宿先のこと、学友について等が書かれている。
読み進みにつれてショッキングな内容に読み終わったらしばし悲しくなってしまった。
当時の時代背景や夏目漱石について調べてみたくなった。
国語の教科書にも載っているようであるが、全編を読んで欲しい。 -
まんがで読破を読んだ後にストーリーの細部が気になって小説で読み直した。
やはり細かい部分の心理描写、その機微は小説で読まないと伝わらない。
後半は「先生」の懺悔とも言える手紙が長々と続くが、不思議と「何言ってるんだこいつ」とはならない。このあたりの描写の巧みさが夏目漱石が文豪たる所以か。
明治末期、1910年ごろが舞台で、女性が家事の一切をするような男性優位な時代の描写をところどころで感じる。 -
「先生」とKの間に起きた事件と先生の自殺に至る経緯が、「先生」から私に宛てられた長い遺書の中に語られる。小説は「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部に分かれ、前半の2部で先生の人となり、私の環境が詳細に説明される。
しかし、本小説の最大の事件である「先生」の自殺については、明らかにされず、前半の2つの章と、遺書の中に述べられるKの精神的特質、西南戦争のときに自決を決意したまま明治天皇の崩御まで35年間待った乃木希典の殉死がヒントとして提出されている。Kの自殺が先生の自殺に多大な影響を与えているのは確かだが、①乃木将軍の殉死を持ってきて、先生が「私に乃木さんの死んだ理由がよく解らないように、あなたにも私の自殺する訳が明らかに呑み込めないかも知れません」とあること②「先生」の過去を善悪ともに他の参考に供するつもり」とあることから、過去の自分のエゴイズムからくる、単なる自己嫌悪による自殺ではありえない。
非常に暗い小説ではあるが、先生がなぜ人間を恨むようになったのかの経緯、奥さんとの関係が生き生きと描かれる。明治時代の手製のアイスクリームというのはどんなものか見てみたい。
おそらく数年経って読むと先生の自殺の意味が分かるかもしれない。小説そのものが再読を強く要求する稀有な小説である。 -
何度も読みかけては挫折して長らく放置していたのだけれど、ふとまた読み始めてみたところ、今度はぐいぐいと引き込まれるように読んでしまった。小説との出会いにはタイミングというものがあるのだな、とつくづく感じたところ。
教科書や読書感想文の宿題で読んだ以外は、実は初めての夏目漱石です。明治時代の書生さんや思想家などをイメージしながら、現代とは異なる考え方、ものの見方、ある種のプライドにふむ・・・とうなる一方で、現代と変わらない心の動きなども垣間見えて、近代文学を食わず嫌いしてはいけないなと。長く読まれるには、やはりその理由があるのだし。
先生の遺書は衝撃だった。人にされたことを憎み、それなのに人に同じようなことをしてしまい、その自分をまた憎み苦しみ、輪っかになっているような運命に巻き取られていくさま。読んでいて苦しかったけれど、この遺書を、病床の父を置いてまで電車に飛び乗って読んだ「私」はどう感じたのだろう。「私」にまで何かが及んでいないといいのだけれど。 -
高校の国語の教科書に載っていた極一部しか読んだことがなかったので読んでみた。
「先生」の気持ちはとてもよく分かるような気がする。
一部だけ読むのと全部読むのでは全然印象が違う。 -
現代人のわたしには、「先生」や「K」の考え方に対して同意出来ないところが多いが、夏目漱石の文書がとても綺麗で何度も読み返したくなる作品。
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こころ そのまんまやで
ただその罪悪感との葛藤はそれほどか。しみったれ!
ところで、こ...
ところで、この度はとても嬉しいコメントありがとうございます。当時は難しかった本書も、当時とは異なった印象を与えてくれることと思います。是非お楽しみくださいませ。