- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988142016416
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
なんてポップで、コミカルで、ゲスで、グロテスクで、と思ったら意外とヒューマンで、なにより、とことんシュールな、摩訶不思議なおとぎ話的映画。
1968年。スランプと孤独に陥いった作家は、共産主義国家・ズブロスカの山あいにある寂れたホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」に一人で滞在し、ある老人と出会う。
その老人こそは、ホテルのオーナーで、かつての大富豪、ゼロ・グスタヴ氏だった。
作家は老富豪と食事をし、彼の昔話に耳を傾けることになる…。
時は1932年。舞台はズブロスカ共和国にある名門高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」。
細やかなサービスに定評のある、コンシェルジュのグスタヴ・Hは、お金があるのに愛に飢えた、金髪の軽薄な老婦人たちから熱狂的な支持を受け、ホテルは大繁盛していた。
ある日、そんな彼の上顧客で愛人の一人でもある大富豪の老婦人「マダムD」が急死する。
グスタヴは、彼を慕う移民系ベル・ボーイのゼロを従えて、慌てて彼女の屋敷を訪れるけど、彼女の長男ドミトリーを中心とした遺産争いに巻き込まれ、無実の罪で投獄されてしまう。なんとか脱獄に成功したのもつかの間、刺客に追われて…。
と、あらすじを書き起こしてみると、暗いクライム・サスペンス映画のようになってしまうのだけど、実物は全くそうではなく。
架空の国の架空のホテルを舞台に、コンシェルジュと移民系ベル・ボーイのコンビに降りかかった群像ドタバタ劇を、超ハイスピード展開と、レトロカラフルな映像をベースに、コミカルポップなのにグロテスクな味付けと、ちょっぴりの感傷をアクセントに加えて見せる、なんとも不思議な作品なのです。
この他にないシュールなおとぎ話っぷりを、なんと説明したらいいのか…。説明できない…。
とりあえず、観終わった後に、この映画の監督が、「ダージリン急行」の監督と知って、超納得しました。すごく通じるものがある…。
こんな作風を、破綻なくまとまった作品として撮れる人なんて、そうそういない。
奇天烈で異色だけど、よくできた作品です。 -
老いた作家が語る、かつてヨーロッパ最高峰と
うたわれたグランド・ブダペスト・ホテルにま
つわるミステリー作品です。
ホテルを仕切るコンシェルジュ・グズダヴは上
客であった伯爵夫人の作家容疑で逮捕される。
知恵をしぼって脱獄した彼は新人のロビーボー
イととともに真相を究明します。
主人公である伝説のコンシェルジュに扮するの
はレイフ・ファインズで、神経症の作家をジュ
ード・ロウ、殺されてしまう伯爵夫人をティル
ダ・スウィントンが演じていました。
オーウェン・ウィルソンやビル・マーレイらが
思わぬ場面で顔を出す場面が見所です。
見応えがあって面白い作品です。 -
話題作をようやく見る事が出来ました。
舞台になった時代のせいもあってモノトーンな色彩を使った手法を上手く生かしたサスペンス・コメディでした。
あの『アーティスト』を連想してしまう様なクラシカルな雰囲気が何とも言えぬムードを充分に楽しめる作品で満足感を味わえました。 -
回想形式で進んで行く伝説のコンシェルジェとベルボーイの波乱にとんだ事件簿。
欲や金、権利や軍事司令部まで絡んである老婦人の本当の遺言の行方を紐解くまでを
ミステリー色濃い料理にウィット、ラブ、メルヘンチックの調味料をふりかけた感じかな♪
人も殺されたりするが、悲惨さはない。
由緒あるホテルの栄枯盛衰ではないが、外観、そして利用客の変わり様も興味深い。
主役の二人は天然ぽく?変わってはいたが共に師弟関係のような信頼でどこまでも繋がっていた。
富や地位が欲しかった訳ではない、
老いて尚、ベルボーイ時代の自分の部屋に宿泊するゼロの気持ち、分かるな。
カタチより想いが人を幸せに包むということ。
いつまでも宝物だったあの頃の面影に包まれていたいんだね。。 -
ヨーロッパの超高級ホテル「グラウンド・ブダペスト・ホテル」。伝説のコンシェルジュ・グスタヴ・Hが宿泊客マダムDの遺産相続に巻き込まれる。
二つのストーリーが同時並行で展開される。コミカルでアニメーションぽい展開。哀しくもユーモアがある、ヨーロッパ風の構成で飽きない。 -
きれいな画、きれいなストーリー。
とてもチャーミング。
水平、垂直、45度のフレームワーク。
なんか紙芝居みたいな気分で楽しかったっす! -
面白かったです。
華麗でノスタルジックで、ちょっと寂しくてチャーミングな映像とお話でした。
ミステリなのかコメディなのか社会派なのかヒューマンドラマなのか…きっと全部乗せ。
ホテルも、マダムDの家(お城)や、街とかの美術も美しかったです。古き良きヨーロッパ。メンドルのマカロン可愛い。
グランド・ブダペスト・ホテルのコンシェルジュ:グスタフとベルボーイ:ゼロの関係が好きでした。
グスタフ、コンシェルジュとして一流だし、ゼロの過去を知ったときにちゃんと謝れるところが素敵でした。なので、瞬間は描かれないのですがグスタフの最期めっちゃつらい……。
お話が、今は廃墟のようになったホテルで、今はホテルの所有者になったゼロから小説家が聞いた話、というのもよかったです。そしてそれは小説に書かれて、後年読者に読まれている。。
結構、豪華キャストなのも驚きました。
ティルダ様が84歳のマダムDでひぇえとなりました。本当におばあちゃんだった。。
レア・セドゥのメイドさんもかわいい。
小説家がジュード・ロウというのにエンドロールまで気付きませんでした。。
全部乗せでワクワク観ていましたが、ちょうど良いコンパクトさも良かったです。感傷的になりすぎないバランスでした。
上質な映画でした。 -
評価も高く期待して観たけど、ドタバタ寸劇を見せらせた感じ。コミカルなインド映画とか三谷幸喜作品っぽい。
他の方の評価を見てみると、内容より映像が高く評価されてる感じ。
特撮映画のような、内容より特撮技術とか映像美なんがか話題になるそれと同じなんだなと。
作業しながらのながら観だったので、次はその辺にも注目して観たいと思います。 -
いつもハイクオリティで楽しみなウェス・アンダーソンの映画。まるで精巧につくられたミニアチュールの世界を拡大鏡で見るような楽しさは変わらないままに、今回は円熟の風格さえ匂わせて、かつて本当に存在していたかのような懐かしい幻想を見せてくれます。
特に注目したいのは物語の構造で、とある欧州国の女学生がひもとく偉大な国民作家の本、その作家が古めかしいホテルのオーナーから聞いたという冒険譚と、観る者は箱入りケーキを味わうようにして、歴史と物語が混然一体となった世界に誘われます。ロープウェイで登っていく山頂のホテルや、路面電車、弁護士さんが殺される美術館など、幻想の歴史の中のヨーロッパを作り上げているアイテムのひとつひとつが魅力的すぎ。その中心に君臨する、エレガントで滑稽でメランコリックなレイフ・ファインズが、失われてしまった偽の過去への郷愁を味あわせてくれます。
今回は持ち前の軽やかさに、『エステルハージ博士の事件簿』みたいな欧州偽史小説にも通じる味わいが加わって、このまま円みと重さを増してきたら、どんな世界を見せてくれるのか、ますます楽しみ。