影との戦い ゲド戦記 (岩波少年文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 30年ぶりの再読。最後のとてもユング的なひとことだけが記憶にあったのだけど、すごく濃密でよかった。

    たしか「真の名」というものに言及があったよな、と思っていたんだけど、言及があるどころか、それこそがメインというか。この、真の名を知ってそれを呼べば相手を支配できるというのは、どこの文化からきた思想なんだろう。ネイティブアメリカン? 「千と千尋の神隠し」などのように、名前が重要な役割を果たしている児童文学はいろいろあるので、興味深いなと思っている。

    不安を感じながらも「おまえ、怖いんだろう」と挑まれたことに反発して影を呼びだしてしまう若き日のゲド。それに対し、本物の恐怖と敗北を知ってからのゲドは、自分の不安を直視し、人に対しても率直に「こわい」と認めるようになる。それこそが成長なんだろうな。

    いろいろな深さを持った本。あらためて読めてよかった。

  • ファンタジーといえば魔法!この物語では、魔法は代償を伴うものだと知る。便利が無限に続くなんてことはやっぱりおかしくて。均衡のバランスを崩してはいけないんだ、現実も。

    影という、得体の知れない恐怖は逃げても逃げても追ってくる。でも、向き合う勇気を持てば、形勢逆転。今度は恐れていた影を追うことになる。光と影は表裏一体。本来恐るものでも、逃げるものでもない。認めて、受け入れる。それでようやくスタートラインに立てる。自分の影はどんなカタチなんだろうか。

    この物語で、好きなところは、本当の名前がある、ということ。真の名前。それはむやみに人に教えてはいけない。弱みになってしまうから。でも、大切な人にはその名を伝えよう。たぶん、名前とは、唯一無二のその人をあらわすもので、真の名前の前には嘘も通用しないし、隠れることも出来ないんだ。

    カラスノエンドウはいいやつ。彼のような親友がいたら幸せだ。
    オタクもかわいい。言葉を持たない者たちの愛の深さたるや。一緒にいることが信頼の証。
    2021.05.03

  • 2022/3/31読了。
    なんだかひどく薄っぺらい国産ファンタジーを読んでしまったので、その口直し。
    学生の頃に岩波の同時代ライブラリーに入っていたのを読んで以来の再読だが、いまだに同時代で通用する、というか、僕が学生だった頃よりも遥かに今の世の中のほうに通用する作品だと思った。
    インフラやテクノロジーや法や権利といったある種の魔法を手にして濫用し(それ自体は素晴らしいもののはずなのに使い方を誤って)、自分が己の「影」を呼び出してしまったことに気づかず、したがって「影」と戦うこともなく、知らぬ間に「影」に支配されてしまっている人を多く見かけるようになったと僕には思える、今の世の中のほうに。
    もちろん本書に今の世の中のことなんか書かれていない。しかし読み手に多少の読解力があれば、今の世の中や自分の人生に深く通じることがいくらでも読み取れる。読み取りやすいようにファンタジーというジャンルが選ばれている。つまり本書には書かれていないけれども書かれていることがたくさんあって、子供でも読み取れるような仕掛けがきちんと施してある。そういう作品を一般的には児童文学と呼ぶ。
    もうそういうのは面倒くさい、キャラクターの冒険やいちゃいちゃだけ楽しんでいたい、ゲームでお馴染みのよく知ってる異世界でストレスなく遊んでいたい、というニーズに応えるファンタジーも否定はしないし大事だと思うけど、読み手の読解力や想像力次第で現実の社会なり人生なりを照射する力を引き出せるハイ・ファンタジーの読み応えも、僕は好きだ。

  • 主人公が思春期のいけ好かない青年であるせいか、ほとんど彼一人の孤独な旅路であるせいか、ストーリーが長々とした独白のようだった。
    受講してわかったことだが、このストーリー全体に広がる「長々とした独白のようなもの」こそ‟自己との戦い”であり、日本人には理解しえない、西洋独特のものなのだとわかった。そのように顧みると、孤独の深さ、静けさなどがじわじわと伝わってくる気がした。

  • 魔法使いの世界。
    自らの傲慢さゆえにゲドを苦しめる影を世に解き放ってしまう。
    その影から逃れるのではなく、戦うことを決めたゲドは、その影を追い求めて未開の地まで足を踏み入れる冒険小説。

    一人歩きする影のせいで風評被害を受けることも。

    最終的にはこの傲慢さはゲド自身の影であり、その負の側面すら自分のこととして受け入れることで全き人間になれましたね、となる。

    ゲドの物語は、人間誰しもに当てはまる物語。
    とてつもなく深い話。

    その発想力に衝撃を受ける作品。

  • 登録者:高石
    おすすめポイント:XXXX

  • 世界観に引き込まれる。いつ読んでも面白い。

  • 名作中の名作。何も足せないし、何も引けない。一巻は学生時代にざっと読んでいたのだが、当時は良さを理解できず今回キチンと読み終わっての感想はただただ見事ということ。
    キャラクターの配置、性格、作中での効果とその意味付け。
    ファンタジー王道のあらすじでありながら飽きさせない展開。
    泥臭いファンタジーの表現のなかにある何気ないギミックたちのカッコよさ。
    ハヤカワファンタジー10冊分に相当する内容の濃さです。
    指輪物語と双璧を成す二大ファンタジー小説だけのことはあります。

    ジブリが吾郎氏の元、アニメ化して久しいゲド戦記ですが、もし宮崎駿氏がキチンと作っていれば別物になっていただろうし、主人公ハイタカを誰よりもうまく表現できたのではないかと埒もないことを考えてしまします
    …読んでいく途中にリアルに思い浮かぶのは、氏の作品の映像だからです。(そしてジブリ作品との親和性も本来とても高い)
    ワシに変身したハイタカが人語を解せず戻らなくなっている設定と描写はハウルそのままだし、敵である影の描写はアシタカの呪い、いくつでも挙げられそう。
    ただ宮崎駿氏は日本人のほとんど知らない原作を引っ張ってきて自分のいいように改変しまくるのがスタイルなので、ゲド戦記ではメジャー過ぎたのかもしれません。
    まあ詮無き事を考えてもしょうがないので、自分の脳内変換の中だけの戯言というとこで 笑

    このまま2作目も読み進めようと思っています。

  • ハイタカの生い立ちがわかった。2巻に続いていく話もあった。

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