1973年のピンボール (講談社文庫) [Kindle]

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  • p.2022/12/5

  • 鼠三部作二作目。一作目の主人公「僕」とその友人「鼠」とで何度も視点が入れ替わり、それぞれの物語が前作同様淡々と展開される。
    「僕」の話が双子との暮らしやピンボール台探しなどふわっとした非現実的なものである一方で、「鼠」の話は彼の孤独や変化のない生活への焦燥を
    感じさせる現実的なエピソードが中心となっている。
    喪失、そして孤独を受け入れている「僕」とそれを受け入れられない「鼠」の対比が上手いと感じた。

  • 寂しさのなかの美しくて儚くて切ない感じが、つらい
    さいご、ビートルズ聴きながら過ごすところ、好き

  • ちょうどよく、きもちわるい。

  • 『1973年のピンボール』 村上春樹 (講談社文庫)


    大学を卒業して翻訳の仕事をしている「僕」と、故郷の街で大学を辞め、悶々とした日々を送る「鼠」。
    一見対照的とも思える二人の物語が交互に語られるのだが、それは最後まで交わることはなく、まるでお互いにあえて無視しあっているかのように、パラレル状態を保っている。

    しかし、「これは『僕』の話であるとともに鼠と呼ばれる男の話でもある」という言葉が作中に出てくるように、この二つはどこか表裏一体のようにも見え、彼らの本当の姿がどこにあるのか、時折見えなくなってしまう錯覚に襲われる。

    「僕」は友人と翻訳事務所を開いている。
    仕事は順調なのだが、プライベートはどこか茫漠としている。
    双子と一緒に暮らし、かつて夢中になったピンボールに思いを馳せる。

    208、209というシリアルナンバーをふられた機械のような双子は、家に帰るといつもいて、彼の両側に寄り添って眠り、おいしいコーヒーを淹れてくれ、料理を作ってくれて、両耳一度に耳掃除をしてくれる。
    そしてある日突然、バスに乗って帰っていくのだ。
    この双子は何だろう。
    母体回帰のメタファーなんだろうか。
    配電盤と別れる儀式はそこからの決別?

    「僕」がピンボール台と再会する場面は、凄みがあって引き込まれる。
    世界の果てのような寂しい場所にある、今は使われていない養鶏場の冷凍倉庫。
    分厚い壁に隔てられた象の墓場のような異様に広い倉庫の中に、78台のピンボールがずらりと並び、その中に彼が探し求めていた「3フリッパーのスペースシップ」はあった。

    倉庫の中の風景描写があまりにもリアルで、読んでいて本当に凍えそうな気分になった。
    スイッチを入れたときに78台のピンボールが一斉に立てる機械のうなり、スコアボードにゼロを叩き出すパタパタという音、点滅する原色の光。
    寒さと死んだ鶏の匂いの中、そこはまさに夢の墓場だった。

    「何処まで行けば僕は僕自身の場所をみつけることができるのか?」

    彼は思う。

    ピンボールと別れ、配電盤と別れ、双子と別れ、そんなふうにいろいろなことが彼の上を通り過ぎて行き、鼠もまたジェイに別れを告げ、街を出て行く。

    私は一作目よりもこの二作目の方が好きだ。
    物語がちゃんと動いているし、色彩が豊かで風景の描写がとても美しい。

    犬を捜した駅、ゴルフ場、ピンボールマニアのところへ行くまでの景色。
    ジェイズ・バーの沈んだような佇まいもいい。
    そして何と言ってもラストの「何もかもがすきとおってしまいそうなほどの11月の静かな日曜日」の光景。

    ところで、25歳になった主人公「僕」は、一見きちんとした社会人だが、話している言葉はかなり後ろ向きで冷めている。
    自分が25歳のときもこんなだったかもしれない。
    今はどうだろう。

    そんなふうに頭の隅っこに小さくいて、また何年か後にひょっこり思い出すような、地味だけれど何かが残る、そんな小説だった。

  • 情景がくっきりと浮かぶ。
    心を痛めてしまう。

  • 個人的には前作「風の歌を聴け」の方が好きでした。僕パートと鼠パートが交互に語られる点、「双子」と「女」の存在感が忘れてしまいそうなほど薄い点など、少し混乱しやすいかなとも思いましたが、物語後半の過去への決別の場面は、二人それぞれの青春の終焉を告げると共に、行く末へのなにか虚無的な朦朧たる雰囲気を感じて、鼠三部作の最後、「羊をめぐる冒険」が楽しみになりました。

  • 前作の「風の歌を聴け」よりはグレードアップした感じ。特に自然や状況の描写が、実に文学的になってきたと思う。僕と鼠の話であるが、鼠のほうの話は彼の性格がやや虚無的で、投げやりで、何をしたいのかよくわからないので、あまり好きになれなかった。それに比べて僕の話は実に面白い。特に双子の姉妹との関係が不思議であるが、彼らとの会話や彼らと一緒に行動することが結構興味を惹かれた。外見では分からないので、Tシャツの208と209で区別したり、一方が喋りその続きをもう一方が喋ったりと面白すぎ。ただ、最後は彼のもとを去ってしまったのはちょっと残念であった。いつの間にか現れたので、多分いずれ去っていく事は想像はできていたが。

  • 2021.05.16. 再読了。

    何度読んでも「風の歌を聴け」と「羊をめぐる冒険」の幕間的な感じがする。良い意味でも悪い意味でも。
    無くても成立するし、あったら少しだけ前後の話がつながる気がするし。

    大人になってこんなにゆったりとした気持ちでこの本を手にしたのは初めてで、前に読んだときよりもいろいろ考えられた。

    何となく残ったフレーズ
    「幸せとは暖かい仲間」
    「靴箱の中で生きればいいわ。」
    「ねぇ、誰かが言ってたよ。ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲めってね。」

    また時期が来たら読もう。

  • 読み進めはできる
    が、理解はできない、、、

    想像力が足りないのだろう、、

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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