火花 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 全体的に文章はあんまり好きではありませんでしたが、お話自体は面白かったです。

    特にスパークスが最後のライブを行い、豊胸した神谷さんと出会うシーンは感動しました。少し神谷さんが怖くなりましたが笑

    二人とも夢のために必死にもがいて生きて、その夢を諦めることになっても、まだ生きる。なぜなら、まだ人生の途中だから。そのことを再確認できる作品でした。

    ただめちゃくちゃ評判が良かったわりに、読後感はあっさりしてました。

  • この本を読んで、又吉さんのファンになりました。
    話題になっていた頃は、正直なところ「芸人が書いた本だから、そのネームバリューで売れてるだけじゃないの?」という偏見があり読みませんでしたが、今になって読んでみて、その印象が180度変わりました!

    作家なので文章力があるのは当たり前だと思いますが、又吉さんは言葉にならない事柄を文章として表現するのが上手いというか、表現力が豊かだなぁという印象を受けました。

    その表現力ゆえか、読んでいてなぜか鳥肌がたつことが度々ありました。

    ラストは予想外のオチでした。悲劇なのか喜劇なのか、紙一重なのも良いなと思いました。

    ▼心に残った部分
    ・他の大人がいると子供とコミュニケーションをうまく取れなくなる(→わかる…!)
    ・人を傷つけることは、他を落とすことで、今の自分で安心すること。自分が成長する機会を失い続けている。
    一番簡単で楽な方法を選んでいるけど、時間の無駄
    ・周囲に媚びることができない性質は敵を作りやすい
    ・世間を無視することは人に優しくないこと
    それはほとんど面白くないことと同義

  • お笑い芸人ふたりの青春物語。天才肌でぶっとんでいる神谷。神谷に弟子入りする徳永。それぞれのやり方でお笑いに対して真摯に向き合う。正解はない。人それぞれ悩みもある。神谷と徳永のキャラが対象的でとてもよい。私は天才肌でぶっとんでいて自分の芯を持っている神谷の人柄に惹かれた。キャラがいいのだ、神谷をついつい応援したくなる。自分の周りには神谷みたいな人はいない。周囲の目を気にせず自分を表現できる神谷がかっこいいし、憧れる。神谷は周囲の目を気にしがちな自分の対極にいる人物像である。世間の目と自己表現のバランスを考えさせられる。まじでかっこいい、神谷さん。

  • 「漫才は……本物の阿呆と自分は真っ当であると信じている阿呆によってのみ実現できるもんやねん」

    読み終えた後で本の帯に書かれているこの言葉を見て、神谷と徳永の”阿呆”の解釈が逆のようにも感じました。

    自分の世界を持ってる人を見ると、羨ましいし、妬ましいし、馬鹿馬鹿しく感じます。
    なんでこんなに輝いて見えるのかな。
    なんでもっと器用にできないの。
    それじゃあ無理だよ。
    勝手に期待して、落胆して、そんなことをしている自分に気づくとその惨めさがくっきりと浮かんで見えてより自分が何も持たない人間だと感じますね。

    漫才を通して人間模様を描いた純文学です。とても面白いです。
    徳永「死ね!死ね!…」で泣かされ、
    最後のぷるんぷるんで可笑しいけども美しいなと感じました。

  • 好きすぎてオーディオ版も聴いた。めちゃくちゃなのにみんなやさしくて、好き。

  • 又吉先生の「劇場」に出会い、すっかり惚れ込んだ私は、又吉先生の作品を買い漁った。「劇場」に続き「まさかジープでくるとは」の次に読んだのが、火花だった。登場人物の癖がよく目立つ、又吉先生ならではの一冊だった。芸人ピースの又吉直樹が芥川賞受賞とメディアで取り上げられた時は、著名人や世論から賛否の声があがった。芸人だから、有名人だから受賞できたと高を括っている人々には、伝わるはずがないと思った。これも一個人の感想だが。それでも次々とヒット作を生み続ける又吉先生に、神谷のセンスあるボケツッコミや媚びない精神がリンクして見えた。

  • 神谷さんのプロ意識かっこよかったです。
    世間的には認められない(憚られる)ような生き方であったのかもしれないけど信念に基づいて正しいと思うことから逃げずにぶつかっていく姿勢、素敵です。

    笑いを言語化されていてお笑いファンは特に興味深く読めました。

    小説というジャンルは滅多に読まないのですが、改めて言葉選びがおしゃれでうまく描写されていると感じます。
    憧れる。。

    #漫才

  • 「才能」とは自分の中にあるものだけれど、他者に評価されて初めて意義が生まれるのだと思わされた。
    特に「漫才の才能」なんて、視聴者が面白いと思うかどうか?という他者中心な技能であり、特にその傾向が強いのだと思う。

    師匠の突出し過ぎた才能は一般人にウケることがなく、漫才師としては中堅止まりのまま引退することになり、それを継いだ主人公もまた中堅止まりのまま時の流れに逆らえずに引退することになる話。

    恐らく筆者の伝えたかったダイレクトな所はこのシーンじゃないんだろうけど、ラストで引退前最後の漫才で多くとは言えないファン達に囲まれて、幸せになれ!と叫び続けるシーンが大好きで感涙にむせんでしまった。あれこそ一般人ウケしなかった師匠のリスペクトを感じるシーンで、一般人ウケするようなネタにはせず、なんなら眉を顰める人も居るようなネタであって、かつ師匠とは全く逆のことを言ってお笑いにする最高の追悼だと思う。別に師匠は死んでないが笑

    才能について悩んだことがある人におすすめ
    師匠について悩んだことがある人におすすめ

  • この本が読みたくなる名言
    『たとえば僕達の声が
    花火を脅かすほど大きければ
    何かが変わっただろうけど、
    現実には途方もなく小さい。
    聞こうとする人の耳にしか
    届かないのである。』
    https://bontoku.com/meigen-hibanamatayosi

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  • 言わずと知れたピース又吉直樹の芥川賞受賞作品。内容は今一つ芽の出ない二十代漫才コンビのスパークス・徳永が、同じく今一つ芽の出ない先輩漫才師・あほんだらの神谷に出会い、売れない時期をだらだらと過ごしていく、緩やかでありながら軽やかでありながら、その裏に潜む「人を笑わせたもの勝ち」の芸人世界のシビアな笑いと涙の日常物語。
    章立てが短くテンポが良く、かつ筆者の漫才師・芸人としての経験値から来る最高にくだらない会話のお陰で文学でありながらまるでラノベでも読んでるような感覚に陥るかなり独特な一冊であるように思う。漫才師として売れず自棄のように爛れた生活を送る神谷は客観的に見ればかなり痛々しい存在として描かれ、事実小説の中の社会からも白い目で見られているようだが、神谷は彼のことを生まれながらの漫才師であるとして物語の終盤まで徹底して師として持ち上げる心境にいる。二人が初めて出会った場で通行人のことを指さして「地獄!」と連呼する神谷は読者からすれば一貫して不謹慎な存在のようにしか見えないのだが、同じ芸人の立場である徳永が彼に寄り添っている姿が文学らしいと言えば文学らしい点。ただ、その神谷の不謹慎・不愉快な方法を使って曝け出される笑いにも作中で全く制裁がないわけではなく、最終的に仕事も放りだして1000万円ほどの借金を作って一年行方をくらませた神谷が女性の胸をつけて徳永の前に現れた時、徳永は「ジェンダーや性別に悩んでる人が見たらどう思いますか」と彼に尖った言葉を浴びせる。
    作中では神谷が一般庶民から見れば明らかに態度がデカくて偉そうな売れないおっさん芸人として一貫して描かれているが、そんな彼でも生きてる限り漫才師であり、人を笑わせることもできるだろう、という締め方をしていた。ある一面だけではなく、多面的に主人公が神谷のことを見ている点や、どん底にあっても生き続けることに希望を見出そうとするところが明るく気持ちよい点でもある。全体的にとにかく随所に入るギャグが面白くてクスクス笑っていたのだが、それも魅力の一つだろう。人が何かに力を傾けることの大切さ、尊さ、儚さ、それを理解しない傍観者たちの態度など、エンターテイメントを職業にする人間だからこそ書けたシチュエーションや思いなどが詰まっていて面白かった。話題性からもそうだが現代人が読むのに向いている純文学という観点でもこれが売れた理由はよくわかる。
    個人的には同梱の「芥川龍之介への手紙」(こちらも作者の考えがダイレクトに書かれてる分興味深くもある)で「はじめての手紙で一方的に自分の話を長々と書き連ねるような僕をあなたは嫌いだと思います」の一文が凄い好き。

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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