関ケ原(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1974年6月24日発売)
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上中下巻をたっぷり使い、秀吉亡き後の豊臣家(西軍)と、知略を巡らせていよいよ天下を取ろうという家康とこれに群がる諸大名(東軍)との駆け引きや戦闘をつぶさに記した名著。石田三成、三成の懐刀の島左近、徳川家康、その謀臣本多正信を中心に、戦国の世の最後の戦いに至るまでの道筋とその結果を丁寧に紐解いて見事な筆致で描き出してくれているので、膨大な情報量にも拘らず、するすると吸収しながら頷きながらぐいぐい読みました。大河ドラマ「真田丸」を書いた三谷さんは、司馬さんのこの本をきっと読んでいるでしょう、と思いました。一人一人の性分、生まれたタイミング、地理的条件、残された史料をどれだけ読まれたのだろうと途方にくれながら、緻密な調査によって再構築されてゆく人間模様と濃い霧のようで見えるけれど掴むことのできない勢力地図が鮮やかに目の前に甦ってくるようで、時間はかかりましたが大変満足しながら興奮しながら読みました。歴史の教科書よりずっと面白いし、人間というものの強さ弱さ、裏切りと忠義、を楽しみながら学べます。何かひとつの出来事か、誰か一人の行動が違っていたら、歴史は変わっていたのではないかと思うような薄氷を踏みながら進むような展開に、史実なので結果は動かないのが分かっていても、ハラハラドキドキしながら最後まで興味を失うことなく、大変満足して読了しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史/実話
感想投稿日 : 2020年5月21日
読了日 : 2020年5月21日
本棚登録日 : 2020年5月21日

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