- エイラ 地上の旅人(1) ケーブ・ベアの一族 上
- ジーン・アウル
- ホーム社 / 2004年9月24日発売
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子どもの頃ワクワクして知った、人類の歴史。アウストラロピテクスやネアンデルタール人など、最近様々な発見があり、研究が進んでいると聞く。
そのネアンデルタールとホモサピエンスが同時期にいた時代。出会うこともあっただろうということが言われている。その時期のことがこの本のベースである。今までにない設定にワクワクしながら読んだ。
ホモサピエンスの子どもがアクシデントによりネアンデルタールの一族と暮らすことになる。そこで引き起こされる事件は主に種の違いをもとにしたものだ。そんなことを想像できるとは著者もよく調べて想像を働かせているのだろうし、私自身もリアルに想像ができるのが本当に新鮮だ。これからひとりぼっちのホモサピエンスであるエイラがどうなっていくのか、とても楽しみだ。
2024年2月10日
- 動く指 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
- アガサ・クリスティー
- 早川書房 / 2004年4月16日発売
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ミス・マープルものとして読むとちょっと物足りないかもしれない。ミス・マープルの出番は後半のごくわずか。
それでもやはりクリスティらしい誰もが怪しく見える作品で、主人公の兄妹が微笑ましい。
じっと編み物をしながら、頭をフル回転させるミス・マープルのように世の中を見てみたいと思ってしまう。彼女の頭の中では様々なことがきちんと整理されていくのである。
2023年10月22日
- 死の家の記録 (新潮文庫)
- ドストエフスキー
- 新潮社 / 1973年8月1日発売
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ロシア文学のイメージは、なんだか暗そうで苦しそうと自分勝手に思っていた。そして、その勝手なイメージから、ロシア文学を避けていたのだが、この本を読んで全く違っていたことがわかった。
ここではドストエフスキーが4年間シベリア流刑での体験をもとに、監獄での暮らしや人々の様子などが描かれている。
日々の様子をつづったものや人物に焦点を当てたもの、イベント的に起きたことなどについて正確に緻密に描かれている。監獄という特殊性から興味が湧く部分もあるが、多くは普通の人物がどのように生活しているかを見るのと変わらないのかもしれない。
表現が非常にリアリスティックで、それでいて愛情に満ちた文だった。人間観察が緻密であり、その様子から考えられる心情や、監獄であったできごとを描いているが、決してドラマチックではない。また、貴族と民衆の溶け合わないことを実に実感をもって、そしてそれを胸苦しい思いで描いてもいる。
作家が人間に対して愛情をもち、生き生きとした人物を描く作家として確立するにはこのような人間観察をできるかどうかにかかっているのかもしれない。
2023年10月18日
- 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
- ヤニス・バルファキス
- ダイヤモンド社 / 2019年3月7日発売
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知っているつもりだったことをさらに平易にわかりやすく教えてもらって、経済についての問題点(特に資本主義経済)がわかりました。普段聴いている融資、債券、インフレなどそう言われてみればそういうことか、と納得しながら読みました。さらにこの本では説明するだけではなく、先にも書いたように問題点も指摘しており、私たちがこれからどうしたら良いかきめていく必要性について述べています。知らないふりはできないんだな。生きている限り経済問題からは抜けられないということか。
2023年9月23日
- ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論
- デヴィッド・グレーバー
- 岩波書店 / 2020年7月30日発売
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斎藤幸平の『人新世の資本論』でこの本を知り、手に取った。はじめはブルシット・ジョブとは誰の役にも立たない仕事や資本主義を成立させるために作られた(例えば広告代理店のような)仕事のことかと思っていたが、そうではない。役に立たないとわかっているのになぜかなくならない仕事のことだった。
私の周りではブラックな仕事の話を聞いてはいたが、その反対にこのような内容の伴わない仕事があるのかと暗然とした。
その対極としてあるのがケアワークである。教員の仕事がブラックであることは昨今知られていることであるが、このブラックさは政治によって作られたものであり、ケアワークをブルシット化することが政治的に進められた結果ではないかと思った。
労働に関して非常に示唆に富んだ本だと思う。
2023年9月23日
- ライラックどおりのおひるごはん: みんなでたべたい せかいのレシピ
- フェリシタ・サラ
- ビーエル出版 / 2022年4月25日発売
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さまざまなルーツを持つ人たちが住んでいるライラック通りのアパートで、それぞれの部屋でおいしいご飯を作っています。それぞれの国の食べ物を作っている様子がほほえましく、そしてレシピも出ているので作ってみたいと思わせられます。
最後にはお庭に持ち寄ってパーティーです。
気になるものは作ってみたいのですが、材料が身近になかったり出来上がりの様子などが分からなかったりするので、作ってみたいなー、やってみよっか、失敗しても良いし、どんなのができるんだろ?なんてノリで作ってみるのが良いと思います。
2023年10月13日
河内十人斬りという実際に起こった事件をもとに、主人公の熊太郎の心情を描いている。
自分の中にある気持ちをうまく言語化できない熊太郎がだんだんと社会からはじかれていくさまが、事実そのようなことがありそうだと思わせる。
自分の気持ちをわかってもらえないだろうという絶望は人をやけっぱちな気持ちにさせるのかもしれない。また、自分の気持ちがうまく言語化できないということは往々にしてあることで、熊太郎ほどではないにしても、口にした途端それが嘘であるかのような薄寒い気になるのは誰でもあることなのではないだろうか。
自分の気持ちを言語化できない、してもわかってもらえない、言葉の通じなさを感じる者達がドロップアウトしていく者達の共通項とは言わないまでも、そういう感覚を持つ者が一定数いるのではないか、そしてそれを押し殺しつつ生きている者もいるのではないか、それを無視して生きる、無視して生きることに慣れきってしまっているのではないか、などと深く考えさせられてしまう。
2023年10月13日
ヘッセの『シッダールタ』を元にした写真集。以前、ヘッセの『シッダールタ』を読んだのだが、ところどころピンとこないところがあったように思う。この本ではヘッセのシッダールタの足どりとともに、仏陀の足跡を辿ることもできる。
この今の生活がすでに完全性を備えていること、人生のある場面どのときにおいても全てが完全であること、時間は存在しないこと、など言葉だけではなんとなく抽象的でわかりにくいことを写真で表現しているように見える。私の今の生活に不満足であり、これから何かを成したいといまだに考えてしまうことがあるのはまだ悟りきれていないからだろう。できることを丁寧に見つめることが私の生活には足りないのかもしれない。
仏陀の悟りとシッダールタの悟りに違いはあろうけれどもその心持ちには同じものがありはしないか。あらためてもう一度仏陀の教えとヘッセの『シッダールタ』を読みたいと思う。若い頃にはまだわからなかったことも、またあらためて読めばわかるようになっているかもしれない。
2023年9月17日
- 他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ
- ブレイディみかこ
- 文藝春秋 / 2021年6月25日発売
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「アナーキー=無政府主義≒社会混乱」と考えていた私にとっては、びっくりする内容であった。なるほど、アナーキーであることは政府に頼らず自分たちで解決すること。だからこそエンパシーが必要であるということか。
今では忙しくなってしまい、形骸化している学校での発達段階に応じた目標の中に「相手の立場に立って考える(または行動する)」という文言があったが(今でもあるのだろうか?)それがこれとリンクしてくるとは思わなかった。相手の立場に立つことは「他者の靴を履く」という英語の言い回しになるわけだが、これが必要とされているということは、今それができていないということの裏返しである。
共感といっても必ずしもその人に同意しなくても良い。そういう考えもあるのかと一度受け止める勇気が必要ということか。
2023年9月18日
- 竜の騎士
- コルネーリア・フンケ
- WAVE出版 / 2003年8月1日発売
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フンケは『魔法の声』から入ったのですが、あれほどダークな感じではなく、もっと明るい冒険物語でした。悪役がしっかり悪役で恐ろしいところはフンケらしい。カサついた怖さというか。フンケの作品の中でも評判の高い本作をやっと読むことができてよかった。
こんなのが読みたかったんだよなぁという王道ファンタジー。不思議な生物がたくさん出てくるのに、甘ったるくならないのが素晴らしい。ラストにちょっと端折った感はある気がしますが、それはそれで良いと思いました。気持ちが清々しくなります。
2023年9月9日
- ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
- 細川貂々
- 幻冬舎 / 2009年4月27日発売
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同じ病気を持つものとしてちょっと避けていた本でしたが、やっぱり気になって読んでみた。この手の本の中には自分とは違ったり共感できなかったりするものもあるので…。でも、この本は、本当にそうなんだよ、と強く頷ける。そうそう、あるある。その連続。「わかっている」という人ほど結構わかってなかったりしてね。この病気、本当に厄介ですね。ツレの気分が移るって本当にあるんだよね、自分だけじゃなかったのかとほっとしました。
2023年9月9日
- シュガー・ラッシュ:オンライン MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- リッチ・ムーア
- ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 / -
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なんか悲しくなって終わった。
インターネット空間を理解するのにとても良い作品である。あー、インスタって、ツイッターってこういうことか、と目で見てわかる。
友情物語としてもいいが、ネットについて知りたい初心者やネットについて考えて見たい人にはおすすめできる。
また、予告編では、プリンセス達の行動がちょっと嫌だと思ったが、本編で見るとリスペクトされていることもわかりまぁ許せるかな。
2019年6月8日
- ミオよわたしのミオ (リンドグレーン作品集 別巻 1)
- リンドグレーン
- 岩波書店 / 1967年9月5日発売
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繰り返しが多く、昔話調の美しいお話でした。一人の少年が、幸せと不幸を経験して強くなる。そのためには愛が必要なのですね。心が洗われるような作品。そして言葉も美しく、目に見えるようで、主人公の少年と一緒にいる気持ちになって読めました。
中学年の少し長めのものに挑戦したい初心者さんにはおすすめです。読むのが好きな子なら低学年、2年生くらいでも読めそうです。もちろん大人が読んでも、主人公と共に成長できるように思います。
2023年9月8日
- みどりのゆび (岩波少年文庫 101)
- モーリス・ドリュオン
- 岩波書店 / 2002年10月18日発売
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今の大人にこそ必要な本。戦争は絶対悪。必要悪であるはずがない。
2023年9月9日
- おとうさんとぼく (岩波少年文庫)
- e.o.プラウエン
- 岩波書店 / 2018年7月19日発売
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子ども心を忘れないお父さん。その辺にもいそうな親子についクスッと笑えてしまう。
歴史的背後を考えて読むのも面白いのですが、疲れている時にちょっとページをパラパラめくるだけでも読めるので、気楽に楽しんで欲しい本。
2023年9月9日
- 1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 人物編
- デイヴィッド・S・キダー
- 文響社 / 2019年4月12日発売
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一般的な教養書の場合、名言や生き方にクローズアップすることが多いように思うのだが、この本は、カテゴリー分けに工夫がある。著名人や偉人ばかりではなく、「悪人」があるのが面白い。悪人についてはあまり知らないことが多いため、新鮮な気持ちで読むことができる。
2019年5月1日
- 1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
- デイヴィッド・S・キダー
- 文響社 / 2018年4月27日発売
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比較的知っていることも多いが、知識の確認になる。また、各ページの下にある豆知識が面白い。
2019年5月1日
- ハリスおばさんニューヨークへ行く (fukkan.com)
- ポール・ギャリコ
- 復刊ドットコム / 2005年5月25日発売
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元気なアダ・ハリスに元気づけられて読後もスッキリ。いつもピンチに陥り、いつもなんとか脱出し、うまくいくところがとてもいい。そしてそれが運だけでもなく、ハリスおばさんの度胸によるところが大きいのも好き。
思い込みが激しくその通りになると信じてがんばるおばさんには勇気をもらえる。とんでもない勘違いはおばさんの愛嬌で、とても好きなところ。
2023年9月9日
- チ。―地球の運動について― (7) (BIG SPIRITS COMICS)
- 魚豊
- 小学館 / 2022年3月30日発売
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いよいよあの父子を中心に話が回る…かと思いきや…。
やはり全編を通しての主人公は彼なのだろう。
次巻で完結するそうなので、どう着地していくのか楽しみ。さまざまな歴史を織り込んで、宗教と科学の折り合いをどうつけていくのだろうか。
2022年4月16日
- プロメテウスの罠 9
- 朝日新聞特別報道部
- 学研プラス / 2015年3月10日発売
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二人の首相の反原発について無批判で描いているのには違和感を持った。
当時複数の都知事候補者が立ち、反原発だけが争点ではなかったものの、その点で妥協できたのではないか。または、引退した者が出るのではなく、候補者の応援に回ることがベターだったのではないか、という思いがある。政治家に振り回されているのはやはり国民であるという思いを強くした。
2022年6月12日
やはり名言集は前後の脈絡があってこそなのかもしれないと思う。
私自身は何度もムーミンシリーズを読んでいるので、ある程度楽しめるのだが、それでもどういうシチュエーションだったのか、もう少し長めの引用だと想像しやすいかもしれない。
2022年6月12日
- 三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 北方謙三
- 角川春樹事務所 / 2002年6月5日発売
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孔明が死んでのちのことは描かれない。
なんだかちょっと尻切れとんぼのような気もするが、オープンエンドでこれからの時代を生きていく者たちに焦点を当てているという意味で、清々しさも感じた。
2022年6月12日
- マビノギオンの世界―ウェールズに物語の背景をたずねて
- 加藤公惠
- JULA出版局 / 2006年12月10日発売
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ウェールズのマビノギオンにまつわる地方を探して歩き、写真に収めている。
旅行に行けない今でも旅行した気分になれる。しかも、現在の世界だけではなく、時間を超え、魔法の国へ行くかのような不思議な気持ちになる。
残念ながら、ウェールズに土地勘がないので、もう少し大きめの地図も欲しかった。細かいところが載っているので、実際に訪れてみたい方は参考になるだろう。
2022年6月12日
- 三国志〈12の巻〉霹靂の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
- 北方謙三
- 角川春樹事務所 / 2002年5月1日発売
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孔明の南征は思いの外あっさりと済んだ。
武将たちは死に際まで潔く。病気でも戦でも何しろ潔い。
寂しくもあるが、納得しながら死に向かっていく。それを見送る側も、不要な言葉はかけないのだ。最後の武将、趙雲も病に倒れる。
あと1巻を残すところ。
少し名残惜しくもあるが、残る武将もなく、あとは国がどうなるかなど、山河を駆けた過去に比べると些少事に思えてしまう。
2022年6月1日