- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883792580
作品紹介・あらすじ
カストリ本から「有害コミック」問題まで、マンガの多様性を最底辺で支えながら、文化として無視され続けてきた「エロマンガ」の通史をまとめた初めての書。マンガの"歩く百科事典"だった著者が、急逝直前まで連載していた遺作を単行本化。
感想・レビュー・書評
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年代順に 時代の移り変わりと流行がよくわかる
戦後、70年、80年 創刊ラッシュがあったこと
その後 ロリコン以降に有害図書となりコミケ、ネットをへて 雑誌は減少していく
図や写真のデータが豊富である詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2006年10月1日ですから、もう4年近く前に亡くなったマンガ評論家の急逝間際まで連載されていた、文字通り遺作となったものの単行本化です。
こういうものは、雑誌「劇画アリス」の元編集長の亀和田武あたりが書くのではないかと思っていましたが、『戦後少女マンガ史』『戦後SFマンガ史』『戦後ギャグマンガ史』を書いた米澤嘉博が、まさかエロマンガまで守備範囲にしているとは夢にも思いませんでした。
それが、彼のかかわりは昨日今日に始まった訳ではなく、もう30年以上前からの深いつき合いで、なんと先ほどの雑誌「劇画アリス」の編集者でもあったということです。
私は、男性専用の趣きがあるエロマンガにも少なからぬ興味があって、いろいろな機会にこっそり見て(読んで)きましたが、耽美的・暴力的など様々に描かれたほとんどが男性の性欲解消の目的以外に重きを置いていないことに不満がありました。
その中にあって、もっとも幻想的で時にSF的あるいはナボコフの『ロリータ』的な作風の村祖俊一というエロマンガ家の発見は、私を有頂天にしました。
ですけど、私の狭いエロマンガの世界観では話にならないと前から思っていましたので、この本は、待ってましたという感じで手にしたのです。
実は、言及されているマンガを読んで(見て)いなければ話にならないと、ここに出てくるマンガの大半を蒐集することから始めたので本編を読むのに手こずっていたのですが、これがなかなかの困難なことで、たとえば一般的に図書館を利用するということがまったく意味をなさなくて、だいたいエロマンガを常備している図書館などないのに決まっていますよね。
ということで総論はおろか各論も、まだまだ端緒にすらおぼつかないのが現状ですが、あきらめずにもっと追究します。 -
米沢嘉博著『戦後エロマンガ史』(青林工藝舎/1890円)を購入。
夏目房之介さんがブログで絶賛していたのを見て、手をのばしてみた。
2006年に肺ガンで早世した著者の遺作である。あと数回連載すれば完結するところにさしかかっていたが、惜しくも絶筆となり未完に終わったもの。
生前の米沢さんには、その晩年に一度だけ取材でお会いしたことがある。それだけのご縁だが、マンガ評論家としての仕事にはかねてより敬意を抱いていた。
本書は、「マンガ史三部作」と呼ばれてきた著者の代表作『戦後少女マンガ史』『戦後SFマンガ史』『戦後ギャグマンガ史』につらなるものである。
タイトルとは裏腹の上品な装丁は、少しでも手に取りやすいようにとの配慮であろうか。まあ、それでも通勤電車などでは読みにくいだろうが、マンガ好きならもっておいてよい本だ。
まだざっと眺めただけだが、詰め込まれた情報量に圧倒される。豆粒のように小さな活字が、二段組みでぎっしり。図版も、縮小されてはいるものの、ぎっしり。収録図版は約2500点(!)にのぼるという。
夏目さんもブログで言うとおり、「とんでもない労作」だ。エロマンガをめぐる資料でこれ以上のものは、今後現れないだろう。これでこの値段は安い。
図版は大半が表紙や扉絵だが、有名作品はもちろん、聞いたこともないような作品もズラリと並んでいて、見るだけで楽しい。さすがは「マンガの“歩く百科事典”」と呼ばれた米沢さんの仕事である。
終戦直後の「カストリ雑誌」の挿し絵、すなわちエロマンガの前史から説き起こされ、1990年代の「有害コミック問題」にちらっと言及するところで終わっている。
それ以降の約20年の歴史が書かれずに終わったのは残念だが、これだけでも資料的価値はすこぶる高い。マンガのアカデミックな研究も進んできた昨今だが、エロマンガについては今後もまっとうな研究対象にはなりにくいだろうから、なおさらだ。米沢さん自身も次のように書いているように……。
《底辺の娯楽と見られていたマンガの中でもさらに最底辺に位置するエロマンガは、雑誌のマイナー性、ゲリラ性もあって、単行本化されたものも少なく、残っている資料も少ない。また、あまりにも解り易い「エロ」というテーマもあって、評論の対象にもなりにくかった(41ページ)》
正統的(?)エロマンガのみならず、宮谷一彦、山上たつひこら一般劇画・マンガの性表現についても、またレディースコミックなどについても言及されている。その意味で、本書は狭義のエロマンガのみならず、「戦後マンガの性表現」をめぐる通史でもある。
ところで、俳優の田口トモロヲって昔エロ劇画家だったのだね(田口智朗名義)。本書で初めて知った。「ばちかぶり」(パンク・バンド)のヴォーカルをやっていたのは知っているが、そのさらに前の話である。
『劇画アリス』を舞台に特異な青春パンク・エロ劇画(私は読んだことがないが、本書の記述から推測)を手がけていた彼の当時の担当編集者が米沢氏で、「いつもマンガとロックの話をしていた覚えがある」そうだ。 -
よくぞここまで詳細に、偉業。
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すごく勉強になった
しかしなぜこれを勉強しようという考えに至ったのかは謎 -
想田四(マンガ研究家)が本書を「2006年10月1日に急逝したマンガ評論家・米沢嘉博が三度の中断を経たのち『アックス』(青林工藝舎)にて七年近く連載、その簡潔を目前にしながら絶筆となった「戦後エロマンガ史」を『アックス』以前の執筆分も含めて一冊にまとめたもの」と解説している。
戦後マンガ史を国際マンガミュージアムで体感できたが、エロマンガ史となると唯一のものであろう。ゆっくり読んでみたい。