読書状況 読み終わった [2012年1月13日]
読書状況 観終わった [2011年8月9日]

副題は「反宗教改革のイタリア」。
上巻に引き続き、イタリアを主軸としたルネサンス期のヨーロッパ世界を、人物に焦点を当てながら描く。上巻がイル・モーロ(ロレンツォ・ディ・メディチ)とサヴォナローラの対決で幕を閉じたが、下巻は上巻末尾で権力を握ったサヴォナローラの失墜と火刑に幕を開ける。また、上巻は地理的な舞台はイタリアが主体だったのに対して、下巻ではルネサンスの潮流がイタリア外へ移行するのと軌を一にし、イタリア以外のヨーロッパ各国を舞台とする。それは宗教改革と反宗教改革の舞台と重なる。
宗教改革のうねりに揺さぶられながらもルネサンス期をもがいていたイタリアは、最後にミケランジェロ・タッソ・ブルーノの3巨人を輩出して終焉を迎える。
各章が比較的短く、その中で各人物にスポットを当てながら小気味よく文章が流れるので、ルネサンスを網羅的に概括するのにお勧めできる好著である。

2011年3月6日

著者がこれまで参加した主要な水中考古学の現場、つまり発掘プロジェクトを回想する形で、水中考古学という学問の思想や方法を分かりやすく紹介する。水中考古学は水没した遺跡・遺構、あるいは沈没船など、水中にある物が研究・発掘の対象である。地上での発掘・調査と共通する部分もあるが、多くは水中(海中)という特殊な環境にさらされており、それ故の様々な理論や方法論――堆積物の除去、潜水中の地上との連絡、資料の保存や復元など――が、現在も探求され続けている。

本書は地中海やカリブ、東アフリカ、九州での沈没船探索や遺跡探索のプロジェクトが紹介されている。おそらく高校生くらいを読者対象と想定しているのだろう、著者一人称による語りの形式で、肩のこらない雑談風に読みやすく書き起こしている。沈没船という言葉には何かロマンのようなものがあるが、そのロマンを追い求める現場の様子が伺える好著である。

2011年2月18日

読書状況 読み終わった [2011年2月18日]

ルネサンス期の通史。イタリアを中心に、人物に着目して列伝体で描く。主要な王・皇帝・教皇・芸術家・人文主義者などを網羅し、軽妙な語り口で読者を飽きさせない。人物を追っていると自然にルネサンスの流れが頭に入ってくる。
上巻は新大陸発見(1492年)まで。

2011年2月18日

読書状況 読み終わった [2011年2月18日]

スペインによるインディアス(カリブ・南米)の征服の歴史。
征服活動の概要や特徴、メソアメリカ及びラテンアメリカへの征服、その後のスペイン人の定着および先住民の衰退、布教活動や精神的征服あるいは文化変容など、広範囲にわたって概説する。
西洋側の肯定的見方からにとどまらず、同じ西洋人でもラス・カサスなどの批判者からの意見、さらに被征服者であるインカ・アステカなどの先住民からの視点も加えている。とはいえ被征服者側の視点は、実際には被征服者側の視点に立った西洋人あるいは西洋人と先住民の間に生まれたメスティソによる物が多いことは考慮するべきであろう。
簡潔にポイントがまとめられており、内容も難しくなく読みやすい。

2011年1月25日

読書状況 読み終わった [2011年1月25日]

初期ルネサンスの萌芽の地であるフィレンツェについて、都市の制度面や中世から引き継いだ文化面を背景にルネサンス芸術が創出される過程を描く。主として建築・絵画・彫刻などの芸術作品が本書の主題であり、思想・哲学方面、人文主義、あるいは宗教面での変化などは軽く触れられるに過ぎない。換言すれば、本書ではフィレンツェを代表する初期ルネサンス芸術家についての概要をつかむことが出来る。

ルネサンスという時代が中世から明確に切り替わったいわゆる断絶史観ではなく、緩やかに中世ゴシックの内容を包含しつつも新しい様式へと移行してゆく時期のフィレンツェ美術を描き、やがて舞台は北方・西方に移りフィレンツェがルネサンス芸術の舞台としては衰退してゆくまでの過程を通観する。

2011年1月23日

読書状況 読み終わった [2011年1月22日]

人の移動に伴って人と共にある地点から別の地点へと移入されるのは、モノや文化だけではない。病気も人と共に移動する。
本書は、旅先での医療や事前の予防措置など広範な旅行に伴う医学、すなわち旅行医学の発達を概観する。日本人にはあまり馴染みがないが、西洋世界では旅行医学はありふれた存在である。
長距離移動は、人に様々なストレスを与える。また、ある土地に特有の病気や、逆にそこにない病気を持ち込む可能性もある。こうした予防・検疫・現地での医療対策などに対処する医学が、旅行医学である。
歴史的なことばかりでなく現代(2002年頃)における旅行医学の現状についても記している。海外旅行や長期旅行の場合は、ワクチン接種や現地の医療情報の確認など様々な対策のためにトラベルクリニックの受診が望ましいという、考えてみれば当たり前のことに気付かされた。

2011年1月12日

読書状況 読み終わった [2011年1月12日]

GPSによる航法以前に広く使われてた羅針盤のメカニズムである、磁気コンパスの成立を辿る。

イタリアの南部アマルフィのフラヴィオ・ジョイアが、磁気コンパスを発明したとされる。少なくともアマルフィではそう言われて、記念碑もある。しかし実際は、フラヴィオ・ジョイアなる人物の実在自体が疑問視されていた。
本書は、磁気コンパス以前の航海法から始め、羅針盤の歴史やその根本となる磁気コンパス発見の歴史、さらには東西南北という方角の由来や12方位から16方位に切り替わった理由などを丁寧に検証する。その過程で、謎の人物フラヴィオに関する調査も進められる。
磁気コンパスそれ自体は、中国で発見されたものであった。しかし中国では当初は風水の占いに使用されており、航海で使用する羅針盤として用いたのは中世ヨーロッパの方が先であった。また羅針盤はアマルフィで完成されたかもしれないが、フラヴィオ・ジョイアは発明者ではなく羅針盤について文書で説明した最も初期の人物である可能性も指摘された。

現代ではGPSによって取って変わられている羅針盤であるが、その根源には東西南北という観念や地磁気とその性質、東西文化の交流など様々な要因が絡み合うものであった。
比較的大きな文字で1ページあたりの字数が少なく、内容も平易で読みやすい。

2011年1月10日

読書状況 読み終わった [2011年1月10日]

オスマン・トルコ帝国の成立から、スレイマン大帝を経てレパントの海戦までの前期オスマン帝国を概説する。
黄金期であるスレイマン大帝の治世も、そこに到るまでの専制帝国システムの成熟があってこそのものであった。イスラームは宗教的に不寛容であり、またオスマンは残虐な征服者であるという、従来西洋諸国からの視点で描かれてきたオスマンは、実際にはそうではなく、宗教的にはキリスト教・ユダヤ教に対しても寛容であり、また専制とはいえ地方の実情と歴史に合わせた柔軟な支配体制であった。著者は「柔らかい専制」という言葉でこれを表現している。また科学技術的にも、西欧諸国よりはるかに優れていた。
オスマン・トルコについての入門書として優れた概説書である。ただし前述のとおり、近代まで続く後期オスマンについては触れられていない。

2011年1月6日

コロンブスによる、あるいはスペインによると言い換えてもよいかもしれない、新世界の「発見」を概括する。コロンブス自身の生い立ち、当時のスペインを中心としたヨーロッパ世界、当時の航海技術を紹介し、コロンブス=ユダヤ人説を検証し、新大陸への影響をまとめる。
特にユダヤ人説については、類書にも述べられていることではあるが、数多くの傍証を紹介してその可能性の高さを指摘する。
全体的に読みやすく説得力のある文章と感じた。

2010年12月31日

読書状況 読み終わった [2010年12月31日]

大航海時代・スペイン・南米関連の泰斗である増田先生によるコロンブス本。講演録を加筆修正したものであり、親しみやすい語り口でするっと読めてしまう。
本書はコロンブスの伝記ではなく、コロンブスがインディアス発見につながる航海を行う背景としての、9世紀~15世紀にいたるヨーロッパの文化変容、宗教観、政治情勢などを解説する。著者は、コロンブスは金銭的事業として、あるいは地理学的発見のためにインディアスを目指したというのは短絡的な理解であり、その根底にはコロンブスが所属していたフランシスコ修道会に由来する終末思想観に基づく宗教観の影響を抜きに考えられないと説く。そこには、ユダヤ人に関する迫害や改宗者、新教徒の問題なども含まれる。
このように本書はコロンブスの航海の目的やその時代背景についての平易な紹介であり、その点において格好の本である。一方でコロンブスの航海それ自体や、インディアスでのコロンブスの事績などについては、本書ではなく他の本をあたるのが良いだろう。

2010年12月25日

読書状況 読み終わった [2010年12月25日]
読書状況 読み終わった [2011年3月26日]

副題が「ある史的肖像」とあるように(ただし原題とは異なる)、14世紀末から16世紀に至るルネサンス文化に関わる哲学者、科学者、歴史家、芸術家、その他諸々の人物を中心に、ルネサンスの前提、成立、特徴、ポイントなどを網羅的に描く。あたかもジョルジュ・ヴァザーリの『芸術家列伝』を敷衍したような全体像となっている。
主要人物は概ね登場するが、何しろ人数が多いので人々の波に溺れそうになる。その中でも特にペトラルカ、エラスムス、アルベルティ、ピーコ・デッラ・ミランドラなどの人文主義の重鎮を主軸に据え、ルネサンスの起源から始めて哲学・教育・政治・宗教・科学・文学・美術などあらゆる分野での関連人物の事績や互いの影響を論じる。
中世とルネサンスの間を完全な断絶とは捉えず、ルネサンスは中世の世界を引きずりながらも大きく変容していくものと捉えている。
やや散漫な印象も受けるが、ルネサンス期の重要人物を一通り知るのには格好のガイドとなるだろう。

2010年12月21日

読書状況 読み終わった [2010年12月21日]

古代ギリシャから近代までの、地域間の情報の行き交いを通観する。当初は近隣の諸国にとどまっていた交渉が次第に遠距離になり、やがては地球を一周するまでに成長するさまを、時代を追ってその時々の手段や歴史的背景を記す。西洋一辺倒ではなく、中国と西洋を結ぶシルクロードや鄭和の遠征など東アジア地域についてもしっかり触れる。基本的な概説書であり、東西交渉史の入門書として気軽に読める。

2010年12月17日

読書状況 読み終わった [2010年12月17日]
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ユマニスト(人文主義者)のアルベルティを通じて、フィレンツェの街やルネサンス期のユマニスト達の様子などを描く。

記述自体がルネサンス期を意識しているのかいないのか、修辞的な言い回しに慣れず、目が上滑りしてしまい内容を掴めなかった。機会があったら再挑戦しよう。

【図書館】

2010年12月15日

読書状況 読み終わった [2010年12月15日]

書名は『大航海時代の戦争:エリザベス女王と無敵艦隊』。
15世紀末~16世紀末までのヨーロッパ人が関わる戦争について。
取り上げられているのは傭兵、新大陸へのコンキスタドール、アルマダの敗北、騎士戦争~宗教改革~30年戦争、オランダ海軍と英国艦隊の伸張、英蘭戦争など。陸戦海戦ともに、この時代の主要な戦争について一通り述べられており、分かりやすい。

各章は別々の著者が執筆している。図版の数は多いが、ほぼすべて白黒で小さいので細部までは分からない。人物、戦局、政治関係を中心にマクロな視点で述べられており、逆に武器や細かい戦術、民衆への影響などミクロな視点からは物足りなさが残る。

2010年12月2日

この時期(1420-1620)のヨーロッパ人による探検と発見に関する一巻本としては、最も詳述されているのではないだろうか。メジャーな東廻り航路(ケープ経由インド・東南アジア行き)や西回り航路(南米経由東アジア・インド行き)だけでなく、北西航路や北東航路への挑戦についても詳しい。また初期の西アフリカ探検についても紙幅を割いている。また、地理学・地図学や一次資料に関する文献解題にもそれぞれ一章を割いて詳述している。
訳語が固い・やや言い回しが難しい・地図を除き図版が全くないなど、軽い気持ちで読むにはちょっと重たいかもしれないが、じっくり腰をすえて勉強する本としては非常におすすめできる。巻末の参考文献リストは圧巻。

2010年11月6日

読書状況 読み終わった [2010年11月6日]

現代世界に生きるわれわれにとって、本の100年前には存在していた植民地という負の遺産から眼を背けるわけにはいかない。
「植民地主義以後」をどのように捉え、また考察した上でどのように行動するか。ポストコロニアリズムは、植民者と非植民者の両面からの、植民地主義以後へのアプローチである。
本書は、思考の枠組みとしてポストコロニアリズムを理解するための入門書である。まず歴史上の大規模植民地活動の始まりと言える、コロンブスに端を発するアメリカ大陸の植民地化の歴史を、植民地支配を必要とするための方便としてのカニバリズムを通して把握する。その後3人の論者によるポストコロニアリズムへの姿勢・関心を紹介する。最後に、日本国内でのポストコロニアリズムに目を向ける(植民地主義は日本にも無縁ではない)。
歴史を学ぶ際に、過去の出来事を理解するだけでなく、なぜそのような出来事が起こり、現在も続いているのかを考察するためのツールとして、ポストコロニアリズムに興味をもつ人の助けになる。巻末に参考文献もまとめてあるので、ここから知識を広げることが出来る。

2010年10月31日

地中海に面するエジプト第二の都市アレクサンドリア。この都市の成り立ちからイスラム世界に併呑されるまでを、様々な人物を通して描く。
この都市を建設したアレクサンドリア大王と、彼を引き継ぎ街の基礎を固めたプトレマイオス1世をはじめとして、綺羅星のごとく様々な人材がアレクサンドリアに関与する。プラトン、アリストテレス、エウクレイデス、ヘロフィロス、タレス、ピュタゴラス、アルキメデス、ヘロン……。まだまだいる。政治だけでなく哲学、数学、医学、文学、あらゆる学問の第一人者がアレクサンドリアに直接あるいは間接に関わりあった。それはアレクサンドリアが誇るムゼイオンとそこにある大図書館の威力による。アレクサンドリアはまさしく古代世界の知の集積センターであった。
多くの人物の事績に依拠しながら、アレクサンドリアの街を中心とした古代世界の状況を分かりやすく論じている好著である。

2010年10月29日

読書状況 読み終わった [2010年10月29日]

古代から近代までの帆船史を概括する。船の種類だけでなく、船の構造の違い、大砲の構造、船員の食料、航海方法など帆船の航海に関わる様々な事柄が簡潔に述べられている。専門用語もその場で説明されており大変に分かりやすい。帆船に関する入門書として、広く浅く一通りの知識が得られる。絶版らしいが是非とも復刊して欲しい一冊である。

2010年10月27日

読書状況 読み終わった [2010年10月27日]
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