椿宿の辺りに

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022516107

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の会話がシュール。
    身体の不調が己のルーツに繋がる話。

  • 『f植物園の巣穴』の続編だそうですが、雰囲気は『沼地のある森の抜けて』と『冬虫夏草』を足した感じな気がしたな
    プラス古事記要素
    うん、梨木先生らしいな

  • 植物園の巣穴の続編。
    別物のお話だったけれど先祖から続く「痛み」の理由を探る旅という感じ。
    梨木さんの自然と信仰の考え方の形の一つを見た気持ち。

  • 植物園の巣穴の続き、といってもこれはこれで別の話ではある。宙が出てくるのは21世紀らしいというか。
    現代の話としては糠味噌よりこちらが好きかな。

  • 梨木果歩さんの文が好きです
    自然描写が好きです

    読んでいる世界へ入ってしまうので「痛み」の表現はつらかった
    痛くてたまらず……

    神話と治水と諸々を取り込んで語られる世界
    ふー
    やっぱ梨木果歩さんです

    ≪ 今生きる 人に伝える 椿宿 ≫

  • 原因不明の身体の痛みは、自分のルーツに端を発していた・・・
    大好きな祖母が亡くなる前に、導いてくれた椿宿で、自分を再発見していく主人公の山幸彦。
    わかったようなわからないような、不思議な展開だった。

    そして【f植物園の巣穴】につながって・・・

  • 古事記の話も膨らんで
    夢の中と現実を行き来するような不思議な気持ちになる。
    梨木香歩の作品は
    正直に言うとギブアップしたものもあったのですが
    今回は興味深く読みました。

    海子さん、もう少し活躍すると思ったんだけれど・・・

  • 「f植物園の巣穴」を読んだときに、言いしれぬ感動とともに、少しわからないところもあった。それが子孫を描いた本作ですっきりとした気がする。体の痛みと小さな稲荷、大黒様、家の治水、そして神話の兄弟。こう並べて書くとわけがわからないし、誰かに説明しろと言われてもできる気がしないのだけれど、そんなゆるくつながる世界を成立させてしまうのが梨木さんだなと思う。梨木さんが描く生真面目で流されやすい男性がとても好きだ。

  •  著者作品はお初。
     新聞書評で見かけて、図書館に予約していたが、そこそこ時間がかかったかな(2か月くらい)。

    “『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。”

     と本書の紹介にあるように、好きな古代史、というよりさらに昔の神話の世界を模した空想小説? どんな書評だったか日経新聞電子版で検索したら、女優の中江友里が紹介していたのだった。女優と言うか、元アイドルだった彼女。今や、文筆業もこなしていることに驚いたが、この書評を目にした時も、確か、近年の仕事っぷりがTVのブックレビュー担当だったり、各メディアに書評を書いてると知り感心したもの。

     そんな興味で読み始めた物語は、主人公の佐田山幸彦(通称 山彦)は三十路の化粧品メーカー勤務の研究者。四十肩を患ったことをきっかけに、従妹の海幸比子(海子)も自分と同じ原因不明の痛みを抱えていることを知る。
     海子の紹介で訪れた鍼灸院で出会う霊媒師的な「亀子」に導かれ、遠く疎遠になっていた実家「椿宿」という祖先の地へ赴き、佐田家にまつわる因縁と、郷土の歴史に触れながら、己の体の「痛み」と、人によって歪められた自然の「痛み」を知っていく。 ざっくり、そんな物語。

     神話の登場人物の名を持つ山幸と海幸が、一族に伝わる謎、椿宿にある実家で起きた江戸時代に起こったの事件を知り、自分の身にふりかかった「痛み」の原因を探ってゆく。亀(シ)に導かれていく佐田家が残した実家には、店子の鮫島氏が近年まで住まい、竜子や嫁泰子など、海を連想させる名前が登場し、竜宮城さながらの雰囲気を醸し出す。そんな神話の世界を現代に蘇らせるかのような舞台装置や、主人公の佐田山幸彦の、頼りないなんともトボケタ雰囲気が、万城目学の初期作品の主人公のようでもあり、『鹿男あおによし』や『鴨川ホルモー』的な、歴史ファンタジーな面持ちで読み進んだ。

     そんな設えは悪くはなかったが、自分で広げた大風呂敷を、うまく回収できなかったか、物語を締めくくる最後の2章が、鮫島(宙幸彦)氏と、山幸彦の書簡で終わってしまうのは、なんとも残念だった。 万城目作品ほど見事に史実を虚実ないまぜに読者を煙に巻くエンターテイメント性に欠け、なんとも肩透かし。 出だしと中盤まではよかったのに、ちょっと惜しかったなぁ。

     とはいえ、個人の発症した「痛み」から端を発し、故郷の土地へ舞い戻り、そこに流れる信仰の世界観、あるいは自然と人が共生していた歴史、また開発などで奪われてきた風景、自然の命の「痛み」に対する声なき声へと思いを馳せんとする著者の意図は汲み取れた気はする。
     山幸彦が診察に訪れる鍼灸院で、どこが痛むのかと問われ、痛のは肩だと訴えるが、

    「そこは痛みの顕れた場所ですな」

     といなされる。「ほんとうに痛いのはどこか?」 この、禅問答のような最初の会話には、この物語が面白い方向に転がっていきそうな期待を十分に抱かせる秘めたるパワーを感じた。
     そして、故郷の土地で、彼らが悟るのは、今、各地で起こる自然災害も、じつは起こった場所や、その時期に原因があるのではなく、長年積み重なった結果ではないのか、という思い。 それを、神話のモチーフを背景に、摩訶不思議なままに語られる作品トーンは、悪くはなかった。

     最後の書簡で山幸彦は振り返る。

    「痛みに耐えている、そのときこそが、人生そのものだったのだと、思うようになりました。痛みとは生きる手ごたえそのもの、人生そのものに、向かっているのだと。」

     河川の氾濫、地盤の崩落で自然自らが被る「痛み」もまた、ある種の手応え。そしてまたその結果、人々に及ぶ災害の「痛み」も、「生きる手応え」としたら、大きなものに身を委ねて、泰然と暮らし、生を全うしようという達観に至れそうな気がしないでもない。
     ・・・ 痛いの、キライだけどね。

  • It′s so mysterius and funny like "Murata一Effendi". Very nice. I felt I ampleased that Japanese language is so sweet and beautiful written by Ms Nashiki.

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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