ラウリ・クースクを探して

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022519269

感想・レビュー・書評

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  • プログラミングという、理解者の少ないテーマが文学になる。
    IT立国エストニアの建国、黎明期を生きた天才が歴史に翻弄されながら、それでもしたたかに生きる希望の物語。
    才能、友情、技術、現代史が絡み合い、ミステリの要素まで盛り込んだ重厚さなのに爽やかな読後感。
    良い本を読んだ。

  • 主人公のラウリは、1977年にバルト三国のひとつエストニアで生まれた。ラウリがコンピューター言語に秀でた才能を持っていることやそのころのエストニアの様子がラウリの成長や周りの人との関りとともに語られる。章は三つに分かれていて、第一部が生後~学生時代。ラウリと同じような才能を持つ友人イヴァン、絵の才能があるカーテャの3人が中心(表紙参照)。それから時代が飛んで、就職してから(2章)、現在(3章)。
    結局一番この本で訴えてきたものがなにかわからないまま読了してしまった印象。IT?ソビエトと周辺国?政治が絡んだ時の友情?だけど、読みやすいし、いろいろ心に残るようなエピソードも多くて、サクサクと読了しました。全体を通してライターのような人物がラウリを取材したくて探しているのですが、これは作者みたいな人を想像して読んでいたのですが...なるほど。でした。
    カーテャの「わたしを不幸だと決めつける権利なんか誰にもない」のセリフが良かったです。あとは自分の特異な能力や趣味を貫くような生き方はなかなかできないだけに小説では堪能したい。そこも楽しかった。
    中学校から。語られる内容が難しく向いていないが、性や暴力の叙述は少なめなので小学生も大丈夫。

  • 時代背景が分からず、興味が持てなかった。自分には難しかった。

  • なかなか興味深い本。いろいろたくらみもある本。

  • 国家の独立とは、かくも大変なことなのか。ロシアに翻弄される今、改めて考えてしまった。

    あなたに訊く。国とはいったい何?
    国を領土とするならば、領土を失ったとき、わたしたちはまた国を失うことになる。
    わたしたちは国とは領土ではなくデータであると考える。だから領土を失っても、国と国民のデータさえあれば、いつでも、どこからでも国は再興できる

  • 先が気になって一気読み。
    良かった…

  •  「この受像機のなかに、本当の世界がある。本当の世界は、コンピュータという箱を通し、人の前にその姿を見せる。プログラミングという呪文が、それを可能にする。」

    絵であったり、文であったり、歌であったり、様々な形で自己を、世界を人々は表現する。その手段の一つとしてプログラミングを考えることも、なるほどあるだろうと思える。
    論理的な命令が、例えば映像化されていく様子をみるとそこに無から有の出現が起こる。刺激的で楽しくて、あらゆるものを対象とするために様々な勉強をする。機械との関わりだけれど、その気持ちを支えるのは友人の存在。

    「生きるってのは人とのかかわりあいだよね。」
    幼い頃の友人の言葉は世界の本質をついている。

    世界の中心に自分を置く事は傲慢で、人は関係の中で存在している。その事実だけが大きな苦難をも乗り超えさせてくれるのだと思う。

  • Amazonの紹介より
    1977年、エストニアに生まれたラウリ・クースク。コンピュータ・プログラミングの稀有な才能があった彼は、ソ連のサイバネティクス研究所で活躍することを目指す。だがソ連は崩壊し……。歴史に翻弄された一人の人物を描き出す、かけがえのない物語。



    ソ連崩壊の時代を生きた子供達。その激動の中で、差別や制限といった状況の中で、子供達が将来を奪われてしまったことに何とも心苦しく感じてしまいました。
    題名の「ラウリ・クースク」ですが、架空の人物ということで、歴史上の人物じゃなくても、実際にいたんじゃないかと思うくらいのリアルさがありました。

    歴史上としては名を残さなかったまでも、周囲の人達にとっては貴重な存在であり、そこでの登場人物同士の友情に素晴らしさを感じました。

    物語の構成としては、ラウリを取材しようとする「私」と過去のラウリ視点での2つの視点を交互に展開していきます。
    なぜ、一般人のラウリを取材するのか?そもそも取材している「私」は誰なのか?
    「私」視点では、そういったミステリアスな部分も垣間見れたので楽しめました。
    後々誰なのか。なんとなく誰なのかは想像できるのですが、明らかになった時の衝撃は良かったです。

    過去のパートでは、現在に至るまでのラウリの人生が学生時代を中心に描かれています。初期のプログラミングに興味を持ち、次第に特別な存在へと変わっていきます。
    その背景では、周囲との孤独、分かち合える仲間といった友情にも触れられていて、激動な時代を生きた人達の苦悩に今のウクライナ情勢でもこういったことが起きているのではと思ってしまいました。

    個人的には、もう少し特別な存在としてラウリのことを描いても良かったかなと思いました。淡々としていたためか、あまり激動といった時代の雰囲気は感じず、友人との出会いと別れを前面に出していたためか、あまりソ連についての時代背景が薄いようにも感じました。

    それでも、現在パートでは、過去編を補うかのように、それまでに至るまでの状況も描かれていたので、苦悩の時代を生きたんだという状況は理解できました。

    友情がいかに大事で、それがどんなに励みになるのか考えさせられました。

  • エストニアの歴史に翻弄された人物の伝記という形式を取ったフィクションです。
    エストニアのソビエト連邦からの独立という史実に即して物語が進みます。
    日本では想像もつかない国家独立の激動の波に飲み込まれて、友情がどうなってしまうのか、コンピュータのプログラミングに捧げた青春はどうなるのか、気になる要素を残して後半に進むので、もともと長くはない作品ですが、あっという間に読み切ってしまいました。
    思わぬサプライズには、心の中で喜びの声が出ました。

  • ソ連時代の、ごく普通の子どもが成長して大人になって行く話。

    普通の子は、どこの国に生まれたか、どんな内政の国なのかで人生が決まってしまう。

    思い描いたことが実現する可能性があるのは幸せなことなのだとつくづく思う。

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著者プロフィール

1979年生まれ。小説家。著書に『盤上の夜』『ヨハネルブルグの天使たち』など多数。

「2020年 『最初のテロリスト カラコーゾフ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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