緋色のヴェネツィア: 聖マルコ殺人事件 (朝日文庫 し 10-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022640086

感想・レビュー・書評

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  • ルネッサンス時代のヴェネチアとトルコを舞台にした、壮大な歴史物語。文章が流れるように美しく、華やかなりし当時に思いを馳せてうっとりした。
    ヴェネチアの貴族に生まれたマルコという青年と、幼馴染で私生児のアルゼッティという青年を中心に描かれたドラマである。作者あとがきによると、本書はフィクションではあるが登場人物以外は史実に基づき、宗教や政治が絡んでくるので非常に興味深い。登場人物は美しすぎる。
    この本を読むとヴェネチアやイスタンブールに行きたくなる。素晴らしい本だ。

  • ゆっくりと読みたい本。
    何度も何度も読み返しました。

    この本を読むのは何度目だろう。
    前回よりも、さらに面白く感じる。

    この時代の人は、飛行機なんてなかったのに。
    イスタンブールとベネチアを軽々と移動していることか!!

    また年数をおいて、読もうと思います。

  • ベネツィアが、ヨーロッパとトルコの間で揺れ動いている時代
    その救世主が、トルコ生まれのベネツィア元帥の息子アルヴィーゼ
    彼の働きはトルコにあってヴェネツィアの協力者。でも、愛する女性のために一世一代の勝負にでたが、、、
    あまりにもかわいそすぎる結末。
    友人のマルコはどうするのか?

  • この作品は、「銀色のフィレンチェ」、「黄金のローマ」と続く3部作です。

    16世紀前半、海の都ヴェネツィアはトルコ、スペイン、神聖ローマ帝国の3強大国に挾撃され国家存亡の危機に瀕していた。国難にあたる若きヴェネツィア貴族と謎のローマの遊女、貴婦人との秘めた愛を胸に野望を抱く元首の庶子…。権謀術数が渦巻く地中海世界を描いた、ルネサンス歴史絵巻第1部。

    スレイマン大帝率いるトルコには宰相イブラヒムが控えており、ヴェネツィアに最大の危機が迫る。
    ともにヴェネツィア貴族の子弟である、マルコ・ダンドロとアルヴィーゼ・グリッティ。2人は幼き頃から互いに尊敬しあう親友といえる仲である。この2人の命運を分けたものは祖国ヴェネツィア。

    ダンドロ家の嫡子として生まれたマルコ。
    当時のヴェネツィア元首の庶子として生まれたアルヴィーゼ。父からは認知されてはいるが、ヴェネツィアの法は庶子を嫡子になおす事を禁じている。
    マルコは黄金の名簿に連なる一員としてヴェネツィアの政治に深く関わっていくが、アルヴィーゼにはその道はない。
    銀の名簿に名を連ねて、ヴェネツィアの中産階級として生きる道よりも、トルコを舞台にした交易の道を選んだアルヴィーゼ。

    大人になり、ともに愛する人を持ち、それぞれの世界で生きていた2人に再び濃密な関係が形成されていく。
    しかし、それは大国同士の政治と裏で密接に関わることであり、マルコとアルヴィーゼにとっても辛い現実が待ちわびている。
    アルヴィーゼが愛して愛された人は、アルヴィーゼにそこまで求めていたわけではない。一方のヴェネツィアとしては、アルヴィーゼの願いが短期的に成し遂げられるのなら、国益を優先すべきだともいう。
    最終的にアルヴィーゼが危機に陥ったとき、ヴェネツィアの援護ない。
    それでも大切な友のために可能な限り奮闘するマルコの姿に救われてた思いがする。

    色々ありながらもと複雑な思いを胸に帰国したマルコに待っていたのは、CDXからの呼び出し、監禁、尋問により愛する人のもうひとつの姿を知らされることだった。

    友情と愛と政治の話であるが、一連の3部作の中で、本書が一番切なく、胸を締め付けられる思いがする。
    ただただ、切ない。

    しかし、ヴェネツィア共和国の深部を知るには格好の題材ではなかろうかと思う。

  • 久しぶりに読みたくなり再読。
    同じ貴族に生まれながらも嫡子と庶子の違いでその後の運命が大きく違ってしまった友人二人。
    当時のヴェネツィアとトルコの複雑な関係やヴェネツィアの諸制度等が物語の中でさりげなく説明されているので読みやすいです。
    庶子であるがためどれほど才能を持っていてもヴェネツィアでは生かすことのできないアルヴィーゼの苦悩や寂しさが読んでいて辛かったです。

  • 主人公のマルコ・ダンドロは、中世の名門貴族に生まれ、ヴェネツィア公国の独立を守るため、誇り高い職務を全うする日々。そんな中突如、学生時代の親友アルヴィーゼ・グリッティが「恥じ入る乞食(ポーヴェロ・ヴェルゴニョーソ)に扮し現れ…。

    周囲を魅了してやまないアルヴィーゼには、秘密があった。
    再会し、マルコの「女友達」に会いに行ったり、学生時代に戻ったかのような楽しい時間を過ごすも、親友の顔はどこか晴れない。マルコがC・D・Xの極秘任務に就いてから、少しずつ親友の行動がわかり始め…。

    時代小説、それも、2人の主人公以外はほぼ実在の人物で、時代背景、暗号通信など、作中で描かれている背景は史実になるのだそうです。
    この時代独特の、貴族の誇りの高さ、宗教や国家の絶対性、嫡出子でない事による、帰属国家のなさ・貴族になれない事への葛藤、結婚の足かせなど、他国に占領される危険性の高い中での情報収集や潜入、交渉など、それぞれの人物が守りたいもののために真剣だった事が伺えます。

    この時代だったからこそ、アルヴィーゼは誰も成し遂げなかった高い理想を追い求め、有能にも関らず、少しずつ不運が重なり、志半ばで農民達に殺されるというあっけない最期を辿り、プリウリの奥方も、キリスト教徒だから大丈夫だろうとマルコが安心していたのに、アルヴィーゼの後を追うように身を投げてしまいました。高い目標を持たなければ、正式な結婚をせずとも、家族としてちいさな幸せをかみしめて生きられたかもせれません。
    最後、マルコは2人の子供である、娘のリヴィアとの結婚を決意しますが、その後2人は幸せになれたのか気になります。

  • ヴェネツィアへ向かう飛行機の中で読みました。

    小説と言う形式ということもあり当時のヴェネツィアの様子が臨場感を持って伝わってきます。
    舞台はアンドレア·グリッティが元首を勤めていた16世紀前半のヴェネツィア。
    西にスペイン王カルロス五世、東にトルコのスレイマンが座する状況において、ヴェネツィアがどの様に諜報活動を行い、政治を展開したかが伝わってきます。

  • ほぼ史実を基に描かれた小説。ベネチアはじめとする小国家がどうして地中海に覇を唱えられたのか不思議でしょうがなかったが、その外交・経済活動その他が生き生きと小説に描き出されており、非常に面白く勉強になった。

  • (1995.08.20読了)(1993.07.03購入)
    (「BOOK」データベースより)
    16世紀前半、海の都ヴェネツィアはトルコ、スペイン、神聖ローマ帝国の3強大国に挾撃され国家存亡の危機に瀕していた。国難にあたる若きヴェネツィア貴族と謎のローマの遊女、貴婦人との秘めた愛を胸に野望を抱く元首の庶子…。権謀術数が渦巻く地中海世界を描いた、ルネサンス歴史絵巻第1部。

    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「サロメの乳母の話」塩野七生著、中公文庫、1986.01.10
    「海の都の物語(上)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10
    「海の都の物語(下)」塩野七生著、中公文庫、1989.08.10
    「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生著、新潮文庫、1991.04.25
    「ロードス島攻防記」塩野七生著、新潮文庫、1991.05.25
    「レパントの海戦」塩野七生著、新潮文庫、1991.06.25
    「男の肖像」塩野七生著、文春文庫、1992.06.10
    「男たちへ」塩野七生著、文春文庫、1993.02.10

  • 硬質な書き味がやっぱりいいなぁ。マルコはまだまだ若くってあの時代でも男が成熟に近くなるのは本当に30過ぎだったのだろうか。都市を書きたくて始まったシリーズだと言うけれど、1人の男の成熟の方がよく書けている気がする。ミステリーと言うよりはラブストーリー。とはいえマルコの学友で悪友でもあるアルヴィーゼの一生には心を動かされる。流石に現代を歩いていても、あの時代を歩いている自分を感じるというだけあって、そのあたりの描写はすばらしい。今のヴェニスはどぶ川のにおいがすごくて(特に夏は)、ただの観光地、彼女並に知識と思い入れがないと行ってもむなしいと聞いている。(でも行ってみたいけど)

塩野七生の作品

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