ミステリーアンソロジー 大逆転 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022650870

作品紹介・あらすじ

日本探偵作家クラブの例会で朗読された作品で、著者が読者に挑む「達也が嗤う」。事故により記憶を失った主人公が自らの素性を求める「四〇九号室の患者」。ミステリーの名手6人が紡ぐ変幻自在なトリックを、あなたは見破れるか!?

感想・レビュー・書評

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  • 6人の作者の短編集

    「カマラとアマラの丘➖ゴールデンレトリーバー➖」初野晴
    初めて読む作家さん
    ファンタジーな話 まぁまぁ先が読めたしあまり好きなタイプの作品ではなかった

    「母の務め」曽根圭介
    この作品は『腸詰小僧』にも収録されていたけど、読んだくせに軽く忘れていて、今回また読んで感心させられた 巧いミスリード

    「ピクニック」一穂ミチ
    こちらも初めて読む作家さん
    語り手が誰なのかと思いながら読んでいたが、なるほどそういう事かと納得した〜なかなかゾワッとくる結末でけっこう好み

    「四○九号室の患者」綾辻行人
    十角館の殺人の作家さん 読んでみたいと思っていたけどいまだに読んでいない
    この作品はなんだか強調する表現のしつこい部分が多くて苦手だった

    「裂けた繭」矢樹純
    こちらも初読みの作家さん
    昔、長い期間普通の一軒家に監禁されていた少女の事件を思い出してしまった…酷い事件だったのを覚えている その事が頭をよぎったが、作品としてはよく出来ているし面白かった

    「達也が嗤う」鮎川哲也
    この方もたぶん初読み
    かなり嫌味くさい作品でうわー…と思ったけど、タイトルの秘密でおお〜となった

    あまり捻くれた考えは持たずに素直に読むと楽しめる短編集だと思う

  • 佳多山大地・編『ミステリーアンソロジー 大逆転』朝日文庫。

    6人の作家のミステリー短編を収録したアンソロジー。タイトルが『大逆転』というだけに、どんでん返しや、驚愕の結末が待ち受ける粒揃いの短編ばかりが収録されている。非常に良いセレクトで全く外れが無い。

    初野晴『カマラとアマラの丘 ― ゴールデンレトリーバー ―』。初読み作家。心憎いお洒落なミステリー。タイトルにある『カマラとアマラ』は狼に育てられた少女の名前ではなかったか。閉鎖した遊園地の中にあると噂される秘密の動物の霊園。噂を聞いた主人公がその遊園地を訪ねるが……そういうことかと感心した結末。ヒントは最初から全て明らかにされていたのに。★★★★★

    曽根圭介『母の務め』。華々しいデビューを飾ったのにその後は余りぱっとしない作家。面白い作品もあるのに寡作であるのが残念。『腸詰小僧』に収録されていた既読作。母親は強しといったところか。ミスリードを誘う見事な仕掛け。末期癌の夫を抱え、さらには死刑囚の息子を持ち、婚約を破棄された娘が失踪するという悲劇の渦中にいる母親である田丸美千代の決意。★★★★★

    一穂ミチ『ピクニック』。初読み作家。日常に潜む恐怖とミステリー。真相が明らかになると非常に悪い後味が残る。女手一つで娘の瑛里子を育てた母親の希和子。瑛里子は裕之と結婚し、未希という娘を授かる。ある日、瑛里子が単身赴任の裕之の元に行くため、母親の希和子に未希を託すが、ふと目を離した隙に未希が亡くなる。警察の取り調べを受ける希和子……★★★★

    綾辻行人『四〇九号室の患者』。ストーリーの大半が大怪我を負った女性の日記で綴られるという変わった短編。夫婦で交通事故で全身に大怪我を負い、両足を切断し、記憶を失った女性は芹沢園子なのか、それとも夫の愛人の岡戸沙奈香なのか。少しずつ甦る過去の記憶と辿り着いた真相に驚愕。★★★★★

    矢樹純『避けた繭』。既読作。『妻は忘れない』に収録されていたサイコミステリーっぽい短編。10年間も自室に引き籠る誠司には、もう一人《みゆな》という女性の人格があった。実際に過去に起きたよく似た事件をベースにストーリーは展開し、凄惨な結末が待ち受ける。★★★★★

    鮎川哲也『達也が嗤う』。二重にも三重にも仕掛けられたトリックは見事。そして、LGBTを先取りしたような設定は読者をミスリードへと誘う。日本探偵作家クラブの例会の席上で、余興の犯人当てゲームとして朗読されたテキストという設定の短編。犯人は最初から示されていながら、最後の最後まで解らない。これだけ見事に騙されると快感。★★★★★

    本体価格890円
    ★★★★★

  • 【収録作品】「カマラとアマラの丘-ゴールデンレトリーバー-」 初野晴/「母の務め」 曽根圭介/「ピクニック」 一穂ミチ/「四〇九号室の患者」 綾辻行人/「裂けた繭」 矢樹純/「達也が嗤う」 鮎川哲也

    叙述トリックに絞ったアンソロジーとのこと。
    「カマラとアマラの丘」「ピクニック」「四〇九号室の患者」「達也が嗤う」は既読だが、面白い。他は気持ちが悪くて苦手。

  • 豪華なメンバーによるアンソロジーということで手に取りました。
    ミステリー好きの人なら既読が多いかもしれないけど、以下に記した本を読んだことなくて、推理ものが好きなら超おすすめの一冊です。既読でもこの小説たちの性質上もう一度楽しめるかと思います。
    タイトルの通り最後にアッと展開の変わるものが多くて(ネタバレになるので詳しく書けないけど)特に「母の務め」はもう一度ざっと読み返してもどこがどうだったのかわからなくて少し丁寧に読み返したりしました。
    〈底本〉
    初野晴 「カマラとアマラの丘 ゴールデンレトリーバー―」(『向こう側の遊園』 講談社文庫・二〇一四年)
    曽根圭介「母の務め」(『腸詰小僧』光文社・二〇一九年)
    一穂ミチ「ピクニック」(『スモールワールズ』 講談社 二〇二一年)
    綾辻行人 「四〇九号室の患者」(『フリークス』 角川文庫・二〇一一年)
    矢樹純「裂けた繭」(『妻は忘れない』 新潮文庫・二〇二〇年)
    鮎川哲也 「達也が嗤う」(『下り”はつかり″」創元推理文庫・一九九九年)

  • 初野晴、曽根圭介、一穂ミチ、綾辻行人、矢樹純、鮎川哲也

    ミステリーの名手たちの叙述トリック短編集

    一穂ミチ「ピクニック」がいちばん好きかな
    ゾッとする真相
    声は届かないから悲しいけどまた繰り返すんだろうな

    綾辻行人「四〇九号室の患者」
    なんとなく正体は、と思ってたらあってた
    読んだことあったかな

    曽根圭介「母の務め」
    母にとっては理想的な展開だったな

    矢樹純「裂けた繭」
    登場人物が嫌すぎて‥いい気味なラスト

  • 日本探偵作家クラブの例会で朗読された作品で、著者が読者に挑む「達也が嗤う」。事故により記憶を失った主人公が自らの素性を求める「四〇九号室の患者」。ミステリーの名手6人が紡ぐ変幻自在なトリックを、あなたは見破れるか!?


    6編からなる短編集。どれも最後の最後で大逆転というかどんでん返しがある。最初の話以外は、最後の最後で少し怖かった。


    秘密の動物霊園が廃墟となった遊園地にあるという噂を聞きつけた「私」が、そこに大切な人を安置してほしいために頑張るお話。最後の最後で、そういうことだったの??てなった。少し悲しいお話だった「カマラとアマラの丘ーゴールデンレトリバーー」


    死刑囚となった息子を抱える母親と好きだった女を殺した男の話。夫が投資用に持っていたマンションに住んでいた女の正体には驚いた。まさかだった。お姉ちゃんにはどこかで幸せになっていてほしい。そして、最後の「科捜研の女見てないの?」は笑った。確かに、マリコさんは骨からでも特定する。「母の務め」


    幸せな家族に訪れた幼い子供の死。虐待を疑われ、祖母が捕まった。これすごく怖かった。もう頼むから誰か気がついてって思ったし、次の子は絶対に預けないでほしい。また同じことが繰り返される。「ピクニック」


    大きな事故を起こしながらも生き残った主人公。記憶を失っており、自分が誰なのかわからない。自分なりに推理し始めるが…これは、他の作品と違って少し長かった。そして、もう本当にあなたは誰なの…と思った次の瞬間にまさかの正体。本当に怖い。狂ってる。「四〇九号室の患者」


    引きこもりの男の話。これが一番怖かった。やはり作者が矢樹純さんだからなのか。少し頭を掠める「マザー・マーダー」の薄っすら寒い恐怖。怖すぎでしょ。引きこもり特有の気持ち悪さとその母親の曲がった愛情。本当にこういう話うまいですよね、って言いたくなる。「裂けた繭」



    今までの作品とは少しテイストが違って、本格的な推理小説的な話だった。鮎川哲也好きだわってなった。そして、騙された。最後に解説的なところあるけど、「確かにね?そう書いてあったけど、まさかそうなるとは思いませんでしたよ?」って逆ギレみたいになるんだけど、それが好きなんだよなぁ。そして、タイトルに込められた意味。もー本当に!ってなる。「達也が嗤う」



    全部面白かった。知ってる作家さんが多かったし、本のタイトル通りに「大逆転」だった。


    2023.11.12 読了

  • 大逆転がテーマのミステリーアンソロジーだが、後味が悪い作品もあって思っていた内容とは違った。
    ピクニック、四〇九号室の患者は良かった。

  • 『カマラとアマラの丘 ―ゴールデンレトリーバー―』初野晴
    「わたし」の職業は心理療法士。
    廃墟と化した遊園地にあるという噂の動物霊園を訪ねた「わたし」は、お骨になったハナを埋葬してほしいと墓守の青年に懇願するのだが……

    『母の務め』曽根圭介
    田丸美千代は死刑囚の母である。息子の純が誘拐殺人を起こし、塀の中にいる。
    娘の陽子は事件をきっかけに家を出て行ってしまった。
    そして癌で入院した夫から、ある秘密を引き継ぐことになる。

    『ピクニック』一穂ミチ
    きょうは待ちに待ったピクニックの日です。
    母と、娘と、その夫と、夫の両親、それから、半年前に生まれたばかりの、娘夫婦の赤ちゃん。
    この一家が何を乗り越えてきたかについても、いつかこの子に話すのでしょうか。

    『四〇九号室の患者』綾辻行人
    病院のベッドで目覚めた「わたし」、芹沢園子の記憶は不確かだ。
    夫の峻と同乗していた車が崖から転落し、炎上。
    かろうじて生き残った「わたし」は、事故に至るまでのいきさつを徐々に思い出してゆく……

    『裂けた繭』矢樹純
    引きこもりの青年、誠司は、不登校になった中学時代に作り出した架空の友達《みゆな》をよりどころにしていた。

    『達也が嗤う』鮎川哲也
    本編は、日本探偵作家クラブの余興の犯人当てゲームとして朗読されたもののテキストであります。
    さて、人一倍推理力がすぐれていなくてはならぬ会員たちでありながら、本当の意味での正解者はただの一人もありませんでした。
    では、読者のあなたは果たして如何でしょうか。

  • 既読作が多かった上に好みじゃない系統のアンソロジーだった。もっと爽快感のある大逆転かと思ってた。

  • 最後の最後になって話が意外な方向に向かう短編が6本.結末が理解できずに何度も読み返したものがほとんどだった.「母の努め」で田丸美千代のタフな生き方が楽しめた.女性の強さが認識できた.「達也が嗤う」での女性陣、ミミ、チヅ子、芳江の行動がそれぞれ謎めいていた設定が面白かった.

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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