絵物語 古事記

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037448707

感想・レビュー・書評

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  • 世に「現代語訳古事記」は多い。易しく書かれた絵本もかなり出ている。しかし、原文の形を残したままに、絵本形式の古事記は、ほとんど例がないのではないかと思う。

    古事記は、粗筋も大切だが、細部にこそ命がある。もっと言えば、リズムや比喩表現が大切なのだが、この本にそこまで求めるのは無理だ。そのかわり、この本ならではの絵画表現が、大人にも数々の発見を持たらすのではないか?と思う。

    私は古事記初心者なので、簡単なことに感心する。例えば長い矛で「コオロコオロとかきまぜ」て生まれたオノゴロ島は、いったい何処なんだろと思ったのと同時に、矛の形は明らかに弥生後期にしか出現しない形態で、古事記作者の視点は作成時の700年ぐらい前にしか遡れないのだな、と独りごちた。本当は皇紀で言えば、1300年以上は遡るはずだ。

    涙や雫から次々と生まれ出ずる神々の姿は、原文ではイメージが湧きにくいけど、絵で見ると、あゝなんて簡単に神々が出てくるのか、と思ってしまう。神が神を産んで、綿々と繋がって、天皇に成って行くことを「説明」している。この本の大きな特徴だ。

    イザナミは火の神カグツチを産んだ火傷がもとに亡くなるのだが、イザナギは怒りに任せてカグツチの首をちょん切ってしまう。その剣の滴る血から戦さや水の神など、災いと生産の神々が次々と産まれる。小さな事件は、次の来たるべき社会の転換点になったことを示していると思う。絵を見ると、まだ子供のような神なのである。小さく産んで大きく育つ。そうやって、日本人は神々(社会)と向き合ってきたのかもしれない。

    何年か前、出雲の国で黄泉比良坂(よもつひらさか)と言われる森の中を訪ねたことがある。死の国の住人になったイザナミを閉じ込めた岩も見た。真偽はどうであれ、1300年近くそういう伝説を伝える人々のエネルギーに圧倒された。絵の中の最後の彼女の姿、子供が見たら夢の中に出てくるかな。

    ヤマタノオロチは、ずっとキングギドラみたいな姿を想像していたけど、原文をきちんと読めば「ズルズルと体をひきずり」やってくるのだ。絵を見て初めて知った。巨大な大蛇が8匹同時にズルズルやってくるのは、確かに気持ち悪い。

    等々、書き出すとキリがないのでここまで。大人が読んでも、大人が読んでこそ、面白い絵本でした。

  • 「なになに、この国のはじまりのことをしりたいというのかな?よしよし、はなしてあげよう。」で始まる語り言葉で書かれた古事記。「国生み」から「海幸彦と山幸彦」まで、全13の物語を収める。全頁に「頭山」等のアニメーションで知られる山村浩二の挿絵入りで、読みにくく覚えにくい名前の神さまたちの物語の理解を助ける。

    物語自体は古事記なので、特に新しいストーリーがあるわけではないのだが、親しみやすい語りと動きのある挿絵とで手に取りやすい一冊となっている。

  • 日本最古の歴史書物。
    って、教科書で昔に学んだけど、
    古事記の内容までは知らなかったし。

    まさか今頃、古事記を読むことになるとはね!
    なんて思いながら。

    最近ハマっている富安作品、
    またもや手に取りました♪

    全ページ挿絵ありの、
    とっても読みやすいわかりやすい内容。

    そして読んでびっくり。
    神様って、
    こんなに妬んだり、怒ったり、殺し合いをしたりするのね···?
    結構なすったもんだな大騒ぎの末に
    日本は誕生した···らしい。
    不思議な内容なんだけど、
    最後まで一気読み。


    はるか昔の人の思想や信仰に触れことで、
    私の身体のDNAにも
    そのはるか昔の時代のご先祖様の血が流れているんだよなー。
    なんてあらためて想いをはせました☆

  • 「なになに、この国のはじまりのことを知りたいというのかな?よしよし、話してあげよう。でも、少々長い話になるぞ。なにしろその物語は、むかしむかし、大むかし、まだこの世の形が定まらず、なんにもなかったところから、はじまるのだからな」(P6)
    古事記上巻を語りかけるような文章と、動きを感じる挿絵とで表現した一冊。
    古事記を知るための第一歩というところで、説明も丁寧だし文章と絵とがつながっていて非常にわかりやすいです。私は最初にこちらの「日本文学全集」で古事記全訳を読んだのですが、まずはこの絵物語で概要と視覚的イメージを掴んでからが良かったかも。
    https://booklog.jp/item/1/4309728715

    例えば挿絵は、「イザナギが体を洗ったら次々に神々が産まれた」という文章に合わせて、イザナギの体から沸き立つように神々が産まれてゆく絵が描かれていて、文章だけで「体を洗って神様が」といわれるよりも、視覚的に表現されるととてもわかりやすいです。
    古事記では多くの神様が出てきて、一柱ずつの判別が難しいのですが、こちらの「絵物語」では再登場時には「アマテラスは使いに出す神としてアマノウズメを遣わすことにした。アマノウズメとは、アマテラスが天の岩屋に隠れたときに岩屋の前で踊りを踊った女神だ」などと説明が入ります。

    そして最後は「天からくだったホノニニギ(※アマテラスの孫)が、山の神の娘コノハナサクヤビメと結婚して、ホオリが生まれ、そのホオリが今度は海の神の娘トヨタマビメと結婚して、ウガヤフキアエズが産まれた。これからさき、中つ国は、天の神と、山の神と、海の神の血を引くものが治めてゆくことになったのだ」と結びます。
    古事記フルバージョンで神様の名前を読んで行ったときにはこの事実にすぐに思い至らなかった…!

    このまま古事記中巻、下巻も出してほしいなあ。このあと神様がどんどん人間に近づきそして人間の世になり、騒乱や戦争の話になるので、お話としてはあまり面白くなかったり子供向けではないから描くのは難しいのかな。

  • 古事記なんて縁が無い と思っていたけど、ふとした出逢いでこの絵物語を読んだ。子供たち向けに作られた本だから見易く読み易いのであっという間に読了した(^^)
    これで古事記の一部を分かった積もりですけど如何ですかね♪

  • 夏休みの読書感想文のために購入したのですが
    文がとてもわかりやすくさらに個性的な絵が入ることで文と絵が一致して頭に残るので、とてもオススメです。古事記だけど、普通の本としても楽しめるし、何度でも読み返したくなるような、そんな本です

  • 山村浩二さんの装画で古事記!と気になっていた本をようやく…。文は富安さんだったのかー…!
    読みやすくてわかりやすくて、大学の授業のおかげか漢字ばっかりのは少し脳に留まってくれているので、そこをほぐす形で頭に入ってくるのよいっ。しかも山村さんの装画もにやにやする。

    え…そこからうまれるの…。というところからぽこぽこうまれてくるカミサマ。気性が激しかったりメンタル弱かったりどこの国のカミサマも自分に正直だなあ(˘ω˘)

    考えて、まとめあげて、語り継がれて、神話って不思議。なくならず語り継がれるのがすごい。その語り継いでっている歴史をみてみたい。

  • いやもうほんとに、古事記って摩訶不思議で楽しいって思わせてくれる、読みやすい本でした。
    大人の私だって楽しめたんだから、子どもたちもなんじゃこりゃ、へぇ、きいたことある。なんて思いながら楽しんでくれるんじゃないかしら。

    イザナキとイザナギ、アマテラス、スサノオ…日本人なら知っておいてほしい神様たちの姿、富安陽子さんが書いてくれたなんて本当に嬉しい限りです。

    山村浩二さんのイラストも味があって嫌味がないし、人間くさいけども飄々とした神様たちの姿が、愛おしくなってしまう。

    名前が面倒くさくってすぐに途中で投げ出していた古事記、やっと全て読めました。児童書だけど、しばらくはこれでいいや私。

    日本の神様っていっぱいいるからいいですねー。平和です。

  • 今まで読んだ古事記の中で一番読みやすく面白い!

    全ページに入る挿画が、難解な物語の理解を助けてくれる。文章だけでも面白いが、挿画が見せる神々たちの強さ賢さ滑稽さが何倍にも面白くしてくれている。
    あとがきで、『文章が語る物語と、絵が語る物語が一体となって展開するような新しい本を作りたい』とコンセプトが記されているが、まさにそれが実現した一冊。
    日本の神々について、断片的な知識はあるけど全貌はよく知らない大人、そしてヤマタノオロチやスサノオの剣から興味を持った子どもにおすすめしたい。

  • どんな風に切り取っているかな?
    (子ども向けだからって、猥雑さをカットして「美しい国」とか無しでお願いします)

    偕成社のPR
    『古事記』の上巻におさめられた神話が、富安陽子さんの息のかよった文章で生き生きとよみがえりました。全ページ、山村浩二さんによる挿し絵入りで、迫力のあるイメージが広がります。子どもから大人まで、初めて読む『古事記』の決定版です。
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784037448707

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著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

富安陽子の作品

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