敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041022481

感想・レビュー・書評

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  • 母子がベランダから転落死した事件は一時事故とされるが、そのなくなった母の手記、息子の祖母宛のメールで状況が一変する。両親に殺されるかもしれないと語る息子、共に息子を殺そうとしたが夫の秘密をあげて自分は殺されるのだという母。死者の告発と、親友の証言、生者の反論。良くも悪くも死人に口なしである状況のもとどちらが真実で裁判の結論はどうなるのか、そしてその後について。
    こんな流れの話ははじめてで読む勢いが止まらなかった。
    224冊目読了。

  • つらみ。結局犠牲になったのは子供。
    一人の女性を、いろんな人から見たお話とも言えるのかもしれない。

  • 人はいろいろな理由で殺意を抱く。
    そして、その殺意が誰に向くかは当人でなければわからない。
    まったく理不尽なこじつけで殺されたのでは浮かばれない。
    殺された時点で浮かばれないのは同じなのかもしれないけれど・・・。

    独りよがりの愛情は、結局相手も不幸にする。
    独りよがりの復讐は、結局自分をも不幸にする。

    予想を裏切る衝撃に結末と帯にはあったけれど、ある意味、予想通りの結末に人の身勝手さがもたらす無情さを感じた。

  • インタビュー形式で、妻子が亡くなった事件について描かれていく。
    非常によく練られた構成だったと思う。インタビュー形式であることで終盤がとても際立ったと感じた。読了後に様々な思いに襲われて、登場人物たちについていろいろと考えてしまった。

  • 最初タイトルを見た時、スポーツ系ミステリ?と思ったのだけど。
    子どもが被害者である二つの痛ましい事故。その事故が実は殺人であった、しかも容疑者がその家族?
    なんだか不穏ないやあ~な雰囲気を醸されつつ読んでいく。
    被害者である妻と息子の告発メール。容疑者とされる夫の証言。関係者による語り。その全てが食い違い真実が見えなくなっていく。
    一旦事件は解決する。もやもやとしたいらだちを抱えたままページをめくるとそこから本当の「事件」の目的が明らかになっていく。
    「敗者の告白」このタイトル、すごい。そう。「敗者」である理由に少し心が落ち着いた。

  • タイトルにもある通り最初から最後まで被害者、加害者、関係者たちによる一人称の「告白」形式で進んでいきます。この作者は女性ながら(女性だから)、またはご自身が弁護士という職業をされていたからか本格ミステリというジャンルにも関わらず、女性の心理とか内面の残酷さを辛辣に表現して、さらにそれを男性に糾弾させている。「欺瞞の殺意」を読んだ時も感じましたが。女性だから女性の醜さを赤裸々に描けるのかもですが、そこにハラハラさせられます。もちろん面白かったです。

  • ツイッターでおススメいただいた初めての作家さん。
    物語は一転二転三転とたいへん興味深く読めたが、いちばん恐れ入ったのは作者さんのプロフィール。

    ====
    東大法学部卒。弁護士として活動したのち、60歳で執筆活動を開始。2010(平成22)年『鬼畜の家』で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、同作で翌年作家デビュー。
    ====
    すばらしいバイタリティーだ。もうこれだけでもっとこの人の作品を読んでみたくなった。人生経験も豊富だろうし、ぜったい面白いに違いない!


    さて、本書は次のような内容だ。
    ====
    食い違う証言が導く真相とは!? "告白"だけで構成された大逆転ミステリ

    とある山荘で会社経営者の妻と8歳の息子が転落死した。
    夫は無実を主張するも、容疑者として拘束される。しかし、関係者の発言が食い違い、事件は思いも寄らない顔を見せはじめる。
    遺された妻の手記と息子の救援メール。事件前夜に食事をともにした友人夫妻や、生前に妻と関係のあった男たちの証言。容疑者の弁護人・睦木怜が最後に辿り着く、衝撃の真相とは!?
    関係者の“告白”だけで構成された、衝撃の大逆転ミステリ。
    ====

    とくに妻の人柄が証言する人によってずいぶんと異なる。人は一面とは限らないというお手本のような描き方に、本当の姿はどうだったんだろうかと興味が最後まで引き付けられた。
    そしておそらくはごくふつうの男の子なのに性格異常者として語られる8歳の息子くんと彼を取り巻く隣の家族への社会的影響とか。
    それを見事に跳ね返して生きていく決心をした隣家族の奥さんの潔さと太陽のような強い明るさがよかった。

    この作品を嫌ミスとしている方もいるようだが、私は嫌ミスの範疇ではないと思う。
    世間的に、表面的には裕福で幸せに見えるある家族の本当の姿を事件の真相を知るために暴かざるをえないという作品だ。

    最後の最後、「終章 決着」。
    ああ、やっぱりそうなるよね、と納得の結末だった。

    登場人物たちの隠されたキャラ造形もふくめ、すべてのロジックに納得がいった作品だった。

  • 同じ時間に同じ場所でひとつの事柄を経験した二人の人間が、正反対の事実を述べて第三者に判定を求める。よく考えれば、裁判とはおかしなものです。(本文より)
    視点が変わるとみえる景色が反転する、この著者らしい作品。
    最後まで事実はわからない。

  • 山梨の別荘で母と子が転落死した。
    死んだ2人の残したメール、容疑者となった父の供述調書、弁護人が集めた陳述書などから事件が語られていく。
    誰が真実を語り、誰が嘘をついているのか。
    好きな手法で面白くはあったが、一人ひとりの証言が長くて、テンポよく読めなかった。
    (図書館)

  • 事件はある母子が別荘のベランダから転落死したところから始まる。登場人物は、IT関連の会社社長・本村弘樹、妻の瑞香、息子の朋樹、娘の由香。本村の山梨の別荘の隣人で友人の溝口雄二とその妻・佐木子。
    瑞香と朋樹の転落死、それが弘樹による殺人だとみなされ、逮捕される。それは死者の告発として、瑞香が知り合いの雑誌編集者に宛てた手記があり、そこに自分と息子が夫に殺されそうだと記してあったから。更には朋樹まで祖母宛にメールを送っていて、自身が両親に殺されるかもと、書いてあったのだ。
    小説の様式も変わっていて、弁護士に話をしているかのような文章、供述調書や供述など、もと弁護士ならではなのかなぁと思った。
    ラストも無事無罪を勝ち取ったように思えた弘樹、じつは…というところもよかった。

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著者プロフィール

みき・あきこ1947年東京生まれ。東京大学法学部卒。元弁護士。60歳を機に執筆活動を開始、2010年に『鬼畜の家』で島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。『衣更月家の一族』『螺旋の底』が第13回・第14回本格ミステリ大賞にノミネート、『ミネルヴァの報復』が日本推理作家協会賞にノミネートされるなど、注目の作家。他の著書に、『敗者の告白』『殺意の構図』『交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー』『猫には推理がよく似合う』『消人屋敷の殺人』『ミネルヴァの報復』『消えた断章』『罠』など多数。

「2023年 『欺瞞の殺意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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