「日本」論 東西の“革命児”から考える

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054741

作品紹介・あらすじ

日本外交は、完全に敗北したーー。
「本書は、私の強い危機意識から生まれた作品である」(「まえがき」より)

この敗北の危機を日本が抜け出すことは出来るのか?
この乱世にいったい“平和”はどうすれば創れるのか?

いま、日本は急速に弱体化してしまう危機に陥っている。
北朝鮮に対する制裁と圧力を唱えていた日本外交は完全に敗北したからだ。
しかし、危機の時代は改造、革新、革命といった、人を動かす(時に人を殺しうる程の)力ある思想が生まれる契機ともなる。
平和はいかにして創り出すべきか? 
日蓮とルター。東と西の宗教改革の重要人物であり、誕生した当初から力を持ち、
未だに受容されている思想書(『立正安国論』と『キリスト者の自由』)を著した者たち。
変革の古典思想にして、未だ影響を与える改革者の思想を改めて見直すことで、
この乱世の時代を「日本」は、我々日本人は、いかに生き抜くべきかを考察する!

佐藤優にしか出来ない、宗教と日本をめぐる講義!!
・ルターを尊敬していたのはヒトラーだった。
・仏教にもテロリズム思想との親和性がある。
・シオニズムは共産主義思想と同じ場所から生まれた。etc.

優れた宗教思想には常に両義性がある。
変革の古典思想にして、未だ影響を与える二人の宗教改革者。
その“毒にも薬にもなる思想”から、
この乱世に“平和”はどうすれば創れるのかを考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 危機の時代をどのように抜け出すかというとき、必ずわれわれが立ち返るべき人が何人かいて、そのうちの一人が日本では日蓮であり、ヨーロッパ、特にドイツを考える文脈においてはルターなのだそうです。
    日蓮の『立正安国論』とルターの『キリスト教の自由』を読んでいけば、トランプの大統領就任演説の意味にもつながり、宗教と政治の現実が見えてくるはず、と。

    この本は2017年2月3月4月朝日カルチャーセンター新宿教室での講義を大幅加筆修正再構成したもの。
    今までなんどか佐藤優さんのこの手の本を読んできましたが、そのなかで面白いほうじゃないかなあ。本論とはずれた話が。あ、それいつもだったかしら。
    今回は「日本で「革命」はあった」のところで、佐藤さんが隠岐島に行った話がとても面白かった!
    ここに内容は書かないです。読んでください。

    ヒトラーが最も尊敬する過去の偉人はルターだと言っています。
    その話聞いたことあって、不思議に思っていたのです。
    〈結局、優れた宗教思想には、常に両義性があるということです。
    後世の解釈によって、ルターからものすごく危険なものも生まれてくるし、それは日蓮においても同じではないかと思います〉と佐藤氏。

  • 佐藤優『「日本」論 東西の革命児から考える』

    本書は朝日カルチャーセンター新宿教室で全三回行われた同じタイトルの講義に加筆修正・再構成して出版したものだ。僕が通っていた新潮社の『資本論』講座も、この教室で行われていた。KADOKAWAからの出版だから、新潮講座ではなかったのだろう。うちに案内も来ていなかった。

    しかし、ぶっ飛ぶような設定だ。本書の出だしで佐藤さんは「今回は、これまで私もやったことのない難しいことに取り組みます」と最初にかましている。その謂いは「21世紀のいま、この時代の危機を読み解くことです。そのために二人の人物に焦点を当てます。一人はマルティン・ルターで、もう一人は日蓮です。テキストは、『キリスト者の自由』(岩波文庫)と、『立正安国論』(講談社学術文庫)になります」と。
    そして『立正安国論』を読むにあたって、指定した講談社学術文庫版を「てんこ盛りでわかりにくい」として「私が見た中で、『立正安国論』に関して首尾一貫して説明がわかりやすいものは、一つしかありませんでした。それは『池田大作全集』(聖教新聞社)です」と。「読み下し文、解釈の両方ともわかりやすく、調べた中では、最も詳しい。この講義では主には扱いませんが、もし自分で勉強するのであれば『池田大作全集』の25巻と26巻を買って、じっくり読むのがよいと思います。」と、池田大作先生の『立正安国論講義』を評価したばかりか、受講生に学習を薦めた。
    しかし、この後に続く『立正安国論』解釈は興味深い。日蓮大聖人の生涯に始まり、見出しを拾っただけでも、「日蓮は専守防衛的だった」「日蓮は信仰の対象に対して敏感だった」「創価学会のドクトリンからすると靖国神社に英霊はいない」「信仰をめぐる残実存をかけた戦いはある」そして公明党と創価学会を論じたうえで、『池田大作全集 第25巻』の157頁から158頁の国家神道批判を読み上げた。
    読みながらワクワクしてくるフレーズが続々と出てくる。

  • ・日蓮(というか創価学会)とルターの本。
    ・2020年には新書化(これは佐藤優×角川書店だとよくある)。新書versionのタイトルは、『宗教改革者――教養講座「日蓮とルター」』。元タイトルの《日本論》はどこに行ったのか?

  • ルター派と浄土真宗の類似性については「他力」の点で言及される事が多かったが、著者は日蓮宗こそルター派に類似しているという。で、日蓮宗(国柱会)と軍国主義との関係は「八紘一宇」等でお馴染みではあるが、ルター派とヒトラーの関係については勉強不足で知らなかったので、この両宗教と日独におけるファシズム性との類比に興味関心が向くのだが、後者についての説明は殆どなかったのでやや消化不良。宗教学と神学は実証主義の点において仲が悪いと述べているが、宗教学が実証主義的かというとかなり疑問も感じるのだが、この点については思想史研究の課題でもあるだろう。
    「思想というのは人を動かさないといけない」には共感するし、「ポストモダンからは何も生まれなかった」というのは宗教者ならではの見解ではあるとは思うのだが、結局人を動かすのは経済ではないのか?という疑念もあり(というか佐藤優はマルクス主義を評価してるんじゃ?)、あらためて思想と経済の関係について問い直してみたいと感じた。(現時点ではマルクスよりもウェーバーの方が説得力はあると思っているが・・・)

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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