三年長屋

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041063514

作品紹介・あらすじ

下谷、山伏町にある裏店、通称『三年長屋』。この長屋に住むものは、なぜか三年ほどで、出世していくため『出世長屋』とも呼ばれていた──。河童の神様が奉られた長屋で起きる奇蹟の感動物語。

感想・レビュー・書評

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  • 三年ほど住むと河童様のご利益で願いが叶い出ていけるという噂の〈三年長屋〉。そこに新たに雇われた差配人の左平次は元武士で生き別れの娘を探し続けるお節介屋。
    新たに入って来た店子はいきなり面倒を持ち込み、何故か捨て子までやって来て…。

    いわゆる人情系の長屋もの。ちょっとクセはあるが気の良い店子たち。そこに加わる左平次は、曲がったことが嫌いでついつい『差し出がましいようですが』と口を挟む。それが災いして武士から町人になった。
    どん底の左平次を拾った、長屋の大家であるお梅とその付き人・捨吉は何だか不思議な存在で、左平次はおろか店子たちのこともお見通しという感じ。

    三年住むと願いが叶うということにはからくりがあったのだが、何にしろそれを活かすも殺すも本人次第。河童様にお願いすれば願いが叶うなんて、都合の良い話はない。
    …とバッサリ切り替えていたら、意外と河童様は重要な存在にもなってくる。

    店子たちそれぞれの面倒も大変なのに、町の地主やその子分格の差配人たちと同心の悪巧みも目に余る状況になってきて、左平次の差し出口がムクムクと騒ぎ出す。
    それを察知した悪人たちもまた暗躍を始める。

    色々詰め込み過ぎかなと思ったが、一つ一つ片付けていく手法でテンポ良く読めた。
    最後はちょっと駆け足だったのが残念だが、上手いこと大団円。
    最初は店子たちに煩わしく思われていたり良いようにあしらわれていた左平次が段々長屋の面々と心通わせて行くところ、大家のお梅が長屋を作った事情、店子たちの共通点、悪人たちを成敗するために結束する人々…様々な要素がごちゃ混ぜになることなく同時進行で展開する。
    店子たちの様々な職業、年齢、得意なことも活かされて、皆が自分の出来ることを懸命にやることで結果的に誰かのためになったり自分たちのためになったりするところは心地好い。
    三年長屋に住んでみれば、自分にとっての幸せが何なのか、真の願いを見つめることが出来るのかも知れない。

  • 3年も住めば、願いが叶ったり、立身出世したりして、長屋を出ることになる。
    不思議な噂のある長屋に住む、差配と店子たちの物語。

    元武士の差配に、いわくありげな大家のお梅と捨吉。
    訳アリ、癖ありの面々による、人情時代小説。

    お節介ではあるものの、武士の身分を捨ててまで不正を許さなかった、佐平次。
    そんなまっすぐな主人公だからこそ、町人になっても不正に向き合う姿が、すがすがしかった。

    店子たちも、河童のご利益に甘えようとするのではなく、それぞれ努力しているところに、好感が持てる。

    ハートウォーミングな物語。

  • 三年住めば河童のご利益(?)で願いが叶うという「三年長屋」の差配になった、元武士の左平次と個性豊かな店子たちとの人情噺です。

    「差し出がましいようだが・・」が口癖で、ついついお節介を焼いてしまう左平次。その正義感の強さで上役の不正に我慢できず脱藩し、妻とは死に別れ、娘とは生き別れているという事情を抱えています。
    店子たちの問題に、逐一首をつっこみお節介を焼く左平次は毎日大忙し。最初は店子たちから若干ウザがられていましたが徐々に馴染んでいく感じです。
    そして、長屋の店子たちが自分の道をそれぞれ見つけ、それで幸せになったり巣立っていく様が良いですね。
    さらに、嫌みな“付け髷(所謂“ヅラ”ですww)差配”・市兵衛とズブズブの癒着をしている、定町廻り同心・鬼嶋の不正を暴く為、持ち前の正義感を発揮した左平次が中心となり皆が一致団結して“一芝居”打つ場面は、胸がスカッとしました。
    左平次の生き別れになっていた娘の事などが、ラストで一気に解決していくので、ちょいと慌ただしさはあるものの、大団円で何よりでした。

  • 2016年6月〜2018年4月にかけて学芸通信社の配信で、新聞6紙に掲載されたものに大幅加筆修正を加えて2020年2月角川書店から刊行。元武士の新米差配の佐平次を中心にした江戸人情長屋もの。次々にちょっとした事件がおこり、長屋の住人や人々の力を借りて、佐平次が解決していく。佐平次も前に進み、また周りの人も前に進むというところが楽しくて良い。

  • 江戸の長屋ものといえばもちろん人情溢れるお話なのは当たり前.それに加えて三年のうちにカッパの御利益で希望が叶って三年のうちに長屋を出ていくという成功譚.また,大家のお梅さんの住人を選ぶ基準など謎解きがあったり,悪代官ならぬ悪差配などを懲らしめるなど面白さがてんこ盛り.これシリーズ化するのかなぁ.

  • 武士をやめ、長屋の差配となった左平次。
    その長屋は河童を祀り、住めば三年で出世するとか。
    正義感の強さ故、融通が効かない。
    でも芯が通っている。
    そんな差配さんは長屋の面々に慕われている。
    ほっこりとする心持ちで読了。

  • 勧善懲悪の時代もの。長屋が舞台だから市井の人々の一喜一憂の日々がおもしろい。
    左平次が差配をしている三年長屋にいる人々はみななんらかしかの重い荷物を持っている。その重い荷物が隣近所の結びつきに助けられ、それぞれの生きざまのなかに受け止められていく。左平次の悩みも最後は大団円となった。

  • 出ると読んでしまう梶よう子さん。お節介と差し出口過ぎる、わけあり新米差配と店子のお話。軽い読み物です。

    「お茶壺道中」とか「赤い風」とかでは満足できな~~い。「よい豊」のような作品が読みたい。

  • 初読み作家。長屋や捕物帖の人情時代小説を読みたくなって。ハピエンで読後感が良かった。権助の図々しさが私には羨ましい。金太の歓迎の宴で皆が重箱の料理に遠慮なくがっつく姿が好き。「皆で蛤を守れ」「おまえら、たんと食べとけ。明日からは目指しと納豆だからな」ってホントご馳走だったんだね。

  • 人情もの。時々ハッピーエンド読むとホッとする。

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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