彼らは世界にはなればなれに立っている (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 427
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041138625

感想・レビュー・書評

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  • はじまりの町で起こる余所者羽虫差別と事件とその後の話。章ごとに語り部が変わり、進むごとに謎が解けていき、各々の葛藤が伝わり辛い。町の人から羽虫への接し方に腹立つ。人ではなく物だという扱いにこちらが耐えれなくなる。そして町の洗脳に気付かず良いように支配される、無関心ほど怖いものはないと感じる。先の章に行くにつれ未来が見えなくなり息ができなくなる。
    にしても、ファンタジーと割り切れない圧倒的既視感。他所の国で、この日本で、起こりそうで他人事には思えない。

  • 筋書きからはもう少しファンタジーっぽいものを想像していたけど、その想像とは全然違った。これは架空の町の物語に託されためちゃくちゃ現実の世界の話だった。

    〈はじまりの町〉の人間は、「羽虫」と呼ばれる余所者の尊厳を踏みつけることで自らの自由と誇りを保持している。その「羽虫」に属する4人の登場人物の視点から、町の人間の本質があぶり出されていく。

    全体主義や戦争に向かう道すじは、本当に些細なことから始まるのだろう。思考の放棄、貧富による差別や権力への盲従が、やがて自らの身も滅ぼすことを克明に描いている作品だ。

    著者はきっとこの物語を遠い何処かの国の話ではなく、読む者すべての人の自分ごとなのだと、警鐘を鳴らしている。

  • いつもの太田愛作品のつもりで読み始めたが、様子が違う…どこかで軌道修正されるかと思ったら、そうでもなく…これはなんなんだとずっと思いながら、最終章。
    何かがわかった訳でもなんでも、謎が解けた訳でもないけれど、号泣だった。
    今まで読んで来た本の中でベストに近い。

  • 始まりの町、が終わるまでを4人の語り手から

    語り手が変わるごとにどんどん絶望的な状況に

    初期の時点で違和感があったら止めないと流されるままになってどうしようもない状況に追い込まれる
    ただほとんどの人はその状況を理解できていない

    戦前はこんな感じだったのかな
    現在もどことなく‥

  • 2024/1/5読了
    いつの時代の何処とも知れない国を舞台にした……これは、ファンタジーなのか? 物語の中で起きている事は、過去にあったようなことだし、これからの時代で起ることかもしれない。G・オーウェル『一九八四年』、R・ブラッドベリ『華氏451度』のようなディストピア社会を描いているが、それが形成される過程、破滅、そしてその後の希望まで描いている点で、ボリュームは少なめながら、スケールは勝っているように思う。――って、褒めすぎか?

  • いつもの作風と大分違うから評価的には割れたって聞いてたから構えて読んだけど、元々ファンタジー行ける口なせいか全然行けた。ただ終盤魔術師目線になった辺りからちょっと直接的な社会批判が多めになっちゃって、”風刺”としてはもう少し読者に委ねてくれた方がジワジワ来るんじゃないかと感じなくも無かったかな 

  • ミステリーの太田愛さんを期待して読んだら、今回は作風が違うので驚いたけど、それはそれとして興味深かった。ディストピアの世界観、女性であること、生まれ、肌の色、といったもので奪われ暴力を受け続ける人たち。希望がない物語は、フィクションだけど現実だと感じた。けれどもうひと展開を期待してしまったのは、希望がないからでもあるかもしれない。救われない気持ちがやり場もなく、魔術師に語り継がれるというラストシーンは美しいのだけど。

  • なかなか読み解くのが難しい寓話だった。
    もう一度読まないと理解できないかも。

  • ファンタジー調に描かれているが、一つ一つのエピソードは現実世界のどこかで起こっている悲劇を風刺している物語だと思う。

  • テレビドラマの脚本を手がけ、「犯罪者」シリーズのノンストップエンターテイメントで唸らせてくれた太田愛さんによる、これまでの作品とは大きく変わった寓話小説。
    ただし、そこはさすがにこの作者。寓話の根底には、現代社会が抱える課題が描かれています。
    社会派エンターテイメントへと流れていく過程で書かれた作品なのでしょう。
    とっつきにくいけど、2回読むと、この小説のプロットが実に巧みであることに気付かされます。きっと。自分は一回しか読んでませんが(笑)

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著者プロフィール

香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。

「2020年 『彼らは世界にはなればなれに立っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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