- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041366042
作品紹介・あらすじ
昭和十年一月、書き下ろし自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成し、”日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。
感想・レビュー・書評
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上巻はこちら
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4041366038#comment
※※※※わりとネタバレ気味ですのでご了承ください※※※※
舞台は大正15年11月20日。語り手の青年は精神病棟で目覚めたが記憶が一切ない。
そこへ医学教授の若林博士が現れ、青年の記憶を取り戻すためにいくつかの書類を見せられる。
いま青年が読んでいるのは、若林博士の前任者で、一ヶ月前の大正15年10月20日に自殺した精神科医の正木博士が書き遺した書類だ。
上巻は正木博士の『空前絶後の遺書』の途中までだったので、下巻は正木博士の遺言状の続きで始まる。
ここで語られるのは、2年前に母を絞殺した疑いを持たれ、さらに数ヶ月前には従妹で婚約者のモヨ子を殺した呉一郎(くれいちろう)のこと。
この極めて不可思議な遺言状を読み終えた青年がふと顔を挙げると…、なんと眼の前に一ヶ月前に自殺したはずの正木博士がいるではないか!
(ーー?)になった青年と読者に対して正木博士は「君は若林博士に騙されたんだ。私は死んでいないし、今日は大正15年10月20日だよ」という。
正木博士の話は続く。
呉一郎の千年前の先祖は、中国で玄宗皇帝と楊貴妃に仕えた絵師の呉青秀だった。青秀は玄宗皇帝が国政を顧みないことを諫めるためにある絵巻物を献上しようとする。それは自分の妻を殺し、遺体が腐っていく様子を描き記すということだった。
だが青秀は絵を完成させることができない上に、新たな死体を求める死体愛好者になっていく。都にいられなくなった青秀は、死んだ妻の妹と海に逃げるが、途中で自殺する。その妻の妹は、日本に辿り着いて息子を産んだ。
青秀の血筋と遺した絵巻物は、呉一郎の代にまでに繋がっていた。
呉家の代々の男たちは、青秀の巻物を見ると気が狂い殺人狂となった。それは正木博士が『胎児の夢』『脳髄論』で書いてきた「細胞レベルでの遺伝」であり「心理遺伝」なんである。
そこで、呉一郎の母と婚約者モヨの絞殺事件に話が戻る。
呉一郎はモヨ子を殺して絵を描いた。だが呉一郎を殺人狂にさせた者こそが真犯人であり、それは呉一郎に「見ると殺人狂になる」巻物を見せた人物だ!
…あれ、真犯人とか言う話になってるぞ。そうだ、この小説って「推理小説」だったっけ。
読者は割りと初めから「記憶喪失の青年が呉一郎なんでしょ」としか思ってないし、青年も「自分が呉一郎なんですね」と察する。
ところが話はそんなに簡単には行かないのであった。
青年が窓から外を見ると、正木博士の提唱した「精神病患者解放治療場」があり、そこには呉一郎その人がいるではないか!
「ではぼくは呉一郎ではないのか??」「君こそが呉一郎の秘密を知る重大な鍵なのだ」
話が混乱、主人公も混乱、読者も混乱。しかし「正木博士の論文」が終わったらかなり読みやすくはなったぞ。
このあとは正木博士の過去語りとなる。
正木博士と若林博士は学生時代からの旧敵だった。だが呉家の精神病理を知った二人は精神病研究のために協力することになった。呉家に今後男児が産まれたら巻物を見せて狂わせよう。そのうえで「解放治療所」で治療すれば、自分たちの「精神病理学説」の正しさが証明されるではないか!
その、二人の実験対象が呉一郎なのだ。
…えーっと、事件を解決するために、事件を起こすのか(--メ)
推理小説としての犯人探しは、この後「呉一郎に巻物を見せて発狂させた人」とか、呉一郎の母の絞殺犯人について仄めかされていく。しかしこの『ドグラ・マグラ』が「読んだら気が変になる」といわれるのはここからでしょう。
上巻に出ていた正木博士の論文、『キチガイ地獄外道祭文』『球表面は狂人の一大解放治療場』『脳髄は物を考えるところに非ず』『胎児の夢』。
これらはまず『奇想天外の遺書』の中で語られる。
そして下巻の正木博士の過去語りで、論文を書いた状況や正木博士の真意、さらには論文の内容が実証までされていたことも明かされる。
これだけでもなんか凄い(・・;)んだが、最後まで読むと、その意味さえどうでも良くなるようなさらに大きな枠があったことが分かる。ヽ(  ̄д ̄;)ノ
結局この『ドグラ・マグラ』は読者自身が見ている夢なのか、人間の精神は自分の精神の中に閉じ込められているのではないか。
この出られない感覚。この読了感が醍醐味であり「気が変になる」所以なのだろう。
………ブウウーーーンンンーーーンンン………。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本はすごすぎます
もう二度と生まれてこないと思います
私は上巻から読んでいてなぜ胎児の夢を繰り返し説明するのか不思議に思っていました
胎児の夢→胎児がお腹の中で人間の進化を見てる
つまり遺伝子というものが形を成す過程を見ていることを言っている
はじめはミスリードばかりが多く真実が見えませんでした。
呉一郎の父親正木博士がなぜここまで自分(主人公)のことを息子と言えないのか。離魂病というのを患ってるのか。
最後の主人公の言葉に
「俺はまだ母親の胎内に居るのだ。大勢の人を片っ端から呪い殺そうとしているのだ。しかしまだ誰も知らないのだ。ただ俺のものすごい胎動が母親が感じているだけなのだ。」
主人公の見ている世界が壁を隔てて見てる理由も夢のように曖昧で不合理的な世界に納得も行きます。
正木博士は胎児の夢を胎児は恐ろしい世界でその過程を見ているから母胎にでてきた時産声を出すと言っていました。
主人公はまだ胎動の中で遺伝子の過程を永遠と繰り返しこれからの遺伝の形質が現れる優先遺伝を選別しこの遺伝から発生する未来を見ている。
それを考えると絵巻物は呉青秀の遺伝子なのかもしれない。
現に主人公は母体から出る瞬間呉青秀を見ているため
彼の遺伝が強いのでしょう。
また、しきりに出るブーーンこの音は胎動の音だと思いました。小説内では時計の音と言っていましたが胎児が産まれるまでの時間を表す比喩表現なのかなと思いました
呉一郎は推定明治40年の12月に生まれると父が言ったように離魂病を最後に患った今日11月20日に呉一郎はもう産まれてくると考察しました。
これからこの遺伝子を背負い生まれる呉一郎の呪い殺す遺伝を赤子がどうにか受け止め克服するために胎児の夢は見てるのだと信じたいです笑
人間は皆キチガイと正木博士が言っていたのは赤子がキチガイなこの胎児の夢を永遠と見せられるてるからなのかも知れません。
この発想力と精神力ものすごいと思います
感動しました
この本は生命を感じるほどの力作だと思います
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2023/05/04
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マメムさん初コメありがとうございます!
ドグラ・マグラは何度も読むのを断念しかけてますが読めて良かったです笑マメムさん初コメありがとうございます!
ドグラ・マグラは何度も読むのを断念しかけてますが読めて良かったです笑2023/05/04 -
りんさん、お返事ありがとうございます。
諦めかけても読了しちゃう所も凄いです♪達成感も格別でしょうね^_^りんさん、お返事ありがとうございます。
諦めかけても読了しちゃう所も凄いです♪達成感も格別でしょうね^_^2023/05/04
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読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
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読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
読み終わりましたが、精神には異常をきたしておりません。
……いや、正直なところ、毎晩寝る前に読んでいたら、その間ずっとヘンテコな夢を見る日々が続きました。後半を徹夜で読んでいたら、始終微弱な吐き気に悩まされるハメになりました。はい。
凄い本だった。
読み終わった瞬間、再読が決定した。
半分も理解できていない気がするが、以下感想。
読み始めてすぐに衝撃を受けたのは、作者の言語感覚。「語感」というものをこれほど有効に利用した文章も珍しいのでは。カタカナをはじめ、三点リーダや大活字の使い方がとにかく巧い。「こういう表記をしたら、読者はこんな印象をうけるだろう」ということを知りつくしている感じ。字面を眺めているだけでその禍々しさに当てられてしまいそうだ。「脳」ではなく「脳髄」と書くからこそ成り立つ世界。
その一方で、かなり笑えるワードチョイスを見せてくれるのも隠れたポイントかと。いや、だって、チャカポコチャカポコでアンポンタン・ポカンですよ?アタマ航空会社専用の超スピード機『推理号』ですよ?何という素敵なセンス。笑いを殺すためにほっぺたの内側を噛みしめながら読んだ。電車で隣に座ったおじさんの私を見る目が忘れられない。
そして言わずと知れた構成の妙、もとい、妙な構成。
率直に問いたい。読ませる気があるのか?上巻にチャカポコやら脳髄論文やら胎児の夢やらをあんなに詰め込んだお陰で、何人の読者が挫折すると思っているんだ。いくら何でも遺言書が長すぎるとは思わなかったのか。下巻に入ってからも参考人の供述責めかと思えば急にめちゃくちゃ読みにくい古文を交えてみたり、いったい何がしたいんだ。アハアハアハアハ……じゃ済まされないぞ。
と、思わず声を荒らげてしまうような構成となっております。こればかりは、読んでみないと何とも言えない。いや読んでも何とも言えない。
まさに幻魔怪奇探偵小説。本当に理解しようと思ったら、この本だけを繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し読むことになるんじゃなかろうか……。
あれこれ書いてきたが、最後に未読の方々のために以下を強調しておきたい。決して読めない本ではない。かつての私のように躊躇っている方がいらっしゃったら、是非一度挑戦されたし。本書はきっと読書人生のうちで忘れられない一冊になるだろう。いろんな意味で。
付記。
大学の図書館で最後のページを読み終わってしばし呆然としていると、友人が後ろから覗き込んできて一言。「あ、それ中学んとき読んだわ。」……私は思わず彼女の顔をまじまじと見つめてしまった…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。 -
論文パートや"キチガイ地獄外道祭文"等のパフォーマンスが乱舞していた上巻と比べると、まだ読みやすく感じた。
探偵小説風味が増しており、後半の謎が明らかになっていく部分は、読んでいて面白かった。
ただ理解出来ているかと言われると話は別...というのもどこまでが真実でどこまでが虚構なのかが、曖昧な部分も多く、正直なところ、なんとなくでしか把握出来ていない部分も多い。そこら辺はネットの考察サイトを後で見るとして(他人任せ)
なんだかんだ読みづらい部分もあって、他の作品よりは時間がかかってしまったけど、それでも読んで損は無かったと言える作品でした。
話変わるけどある意味この作品ってヤンデレ系妹萌え小説の走りだったりしない? -
再読。下巻に入っても続く正木博士の長い長いふざけた遺言書、さらにその遺言書の中に組み込む形で、呉(くれ)家にまつわる因縁話=死美人の絵巻物の祟りで代々発狂男性続出、あるお坊さんがお祓いして仏像の中に封じ込めるも・・・という経緯がようやく明かされる。そんなわけで上巻終盤でようやく出てきた「呉一郎」の名前、なぜ呉一郎(20才)が、16才のときに実母を殺害し、さらに今回、従妹で許婚の美少女・呉モヨ子を殺害(未遂)に及んだのか、先祖代々の「心理遺伝」について追及される。
中国、玄宗皇帝の時代の天才画家・呉青秀(ご・せいしゅう)(※架空の人物)が、楊貴妃の侍女だった美しい妻を、皇帝を諌めるためという激烈な忠誠心から九相図(六図で挫折したけど)を描くための犠牲にするも無駄に終わり発狂、そこへ妻そっくりの双子の妹が現れてなんやかんやあって結局その双子の妹のほうが日本へ辿り着いて呉青秀の子を産み落としたのが呉(くれ)家の先祖、という、死美人絵巻の発端話が迫力があっていい。ここにリアリティがないとなぜ呉家の男子が代々発狂するのかに説得力がなくなっちゃうもんね。
そんなわけで長い長い遺書を読み終えた記憶喪失の青年は当然、自分こそが呉一郎では?と思うわけだけど(読者的にもここは一致で確定なんだけど)作中ではそうは問屋が卸さない。実はまだ生きてた正木博士と、腹黒い若林博士の対立関係が表面化、青年は両博士の思惑に翻弄される。
推理小説として、真犯人は誰かという部分に焦点を当てるなら、殺人自体の実行犯は呉一郎だけど、そうなるように仕向けた(心理操作した)人間が果たして誰なのか、そしてその実験は20年前から始まっていたと序盤から明言されている以上、その人物は呉一郎の誕生にも関わっているはずで、つまり彼の父親が誰であるかという問題とも密接にかかわっており、結局専門知識がありこの研究に死力を尽くしている正木、若林両博士のいずれかが、殺人教唆者であると同時に呉一郎の父親ということになる。
ただ、この小説自体の醍醐味は、犯人捜しではなく、小説全体の特殊な構造のほうにあると思う。もしかして「私」は、何度も10月20日を繰り返しているだけなのではないか?という、ループものSFとも解釈できるオチ、作中に登場する「ドグラ・マグラ」という小説ノート(おそらく作者は「私」自身)の存在による無限マトリョーシカ状況、そしてすべてが「私」の狂気が作り出した妄想である可能性(博士やモヨ子の存在すらも)など。
「胎児の夢」や「心理遺伝」の内容は、けしてキテレツではない現実に通用する説だと思うし、序盤は不審だった一郎の母親の行動などは謎が解けるにつれてきちんと伏線回収されるあたりお見事。モヨ子ちゃんは可哀想ですね。ずっと6号室で泣いてるだけだし。
余談だけど若林博士(大男で顔が長い)は出てきた瞬間から脳内キャストが嶋田久作でした。そもそも芸名の由来は夢野久作らしいし、再び実写化することがあるなら是非出演してほしい(笑)なかなかに過激な表紙絵作者は、俳優としてのほうが有名な米倉斉加年。耽美でデカダンで、バイロスあたりを彷彿とさせる。 -
思考、感情があっちこっちに飛ばされ、とても面白い。推理小説?と呼んでいいかな。
下巻を読んだ後は、もう一度上巻を読み直すのをオススメ。印象が全く変わる。
捉え方次第でグッドエンド、バッドエンド、キツネにつままれたようなエンドに持っていかれ脳が騙されます。
上巻は、心理や遺伝について丁寧に説明がある。
下巻の後半から、ようやっと殺人事件の詳細が記されるが……上巻で丁寧に説明されてたことが腑に落ちてくる完璧な伏線回収。
補足
本作品では下記の2点の論文?が展開されており本筋に深く関わってくるので簡単にまとめる。
①脳は考えるところにあらず
→脳は解釈するだけのところ。脳で考えてる気になると脳に騙される。
②胎児の夢の考察
→胎児は10ヶ月の間過去までに先祖が経験した出来事を夢として見ており追体験をしている。そのため何世代も前の性格を遺伝することもある。