- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042541059
感想・レビュー・書評
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これが噂の、という期待感で臨んだ本書。冒頭の有名な一文から全てを聖ヴァレンタイン・デイの惨劇へと収斂させていく手並みは見事。
日常の、本統に何気ないアクシデント、例えばTVの故障などが文盲であるユーニスにとって狂気へ駆り立てる一因となっていく事を実に説得力ある文章で淡々と述べていく。そして事件後の真相に至る経緯も、事件前に散りばめられた様々な要素が、単純に真相解明に結びつかない所が面白い。
運命を弄ぶレンデル、そして“怪物”を生み出したレンデルに拍手を贈りたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◆◆ ベッドでミステリー ◆◆ 第三十七回
・・・ 第三十七回 「ロウフィールド館の惨劇」 ・・・
ルース・レンデルは怖い本を書く作家です。
なんで、読後感は決して良くない、と思っていた方が無難です。
で、なんでこの本を紹介するか、をここで書くことはできないのですが(種あかしになってしまふ)ポイントは読書に関することなので、司書は読んどいてもいいでしょう。
これが原因で?!
殺人事件が起こってしまった!?
誰かがなんとかできなかったのかなぁ、と思ってしまった一冊です。
2018年10月30日 -
初っ端に結論ありきの書法が、本作の場合は実に有効に活かされていて、どんな流れで虐殺に至ったかの経緯を読み進める手が止まらなかった。陰惨なシーンは最後の僅かだけで、あとは至って能天気な場面も多いんだけど、通底する冷酷スパイスが良く効いていて、緊張感のある流れが出来上がっている。そこかしこでオススメもされていて、オールタイムベストにも入ってくるような作品。ずっと気になっていたけどようやく読了。期待に違わぬ面白さでした。
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ミス・パーチマンは雇主のカヴァデイル家にとって、料理、裁縫、掃除といった家事万端を完璧にこなす有能な家政婦だった。ただし、彼女は不気味なまでに無感動でもあったが。しかし彼女は自分のある秘密が露見することを死ぬほど恐れていた。カヴァデイル家の善意がそれを暴き立ててしまった時、惨劇の引き金が引かれたのだった。
冒頭の1行で彼女の秘密と物語の結末が提示される。次に、人のいい陽気な中上流階級の一家が惨たらしい運命に一路向っていく様が描かれていく。「文盲であること」が何ゆえに彼女を凶行に走らせたのか、それは感情というものが欠落したようなパーチマンと、善良なカヴァデイル家の人々との対比が鍵かもしれない。
人間味の感じられないパーチマンの人物造形は不気味だが、善意のお節介というのもこれまた……。 -
1977年作。
<ユーニス・パーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。>という一文で始まり、ミステリとしては犯人がいきなり明かされて、「ではどういう経緯で殺人が起きたか?」という問いがクローズアップされる。
淀みなくどんどん書かれ、ユーニスがカヴァデイル家の家政婦となりそこで何を体験し、カヴァデイル家の人びとはどのように遇したかが克明に記述されてゆく。
「殺人者」ユーニスは感情の無い人間として描かれており、今で言うサイコパスの一種なのかもしれない。
全般に読んでいて興味が持続し、退屈はしなかったし、特に、いよいよ殺人が描写され、そこから結末に至る部分はさすがに一気に読まされた。
なかなか面白い小説ではあり、このような物語が、確かに80年代辺りの「やや懐かしいような映画」にはよくあったような気がする。
クライマックスの、祝祭じみた殺人の場面が印象的だった。 -
のっけから犯人をばらしているので、犯人当てとかそういう楽しみはないが、結構引き込まれる内容。作品が書かれたのはサイコパスという言葉が明確にない頃だけど、サイコパス小説になるんだろうな。久しぶりに推理小説を読んだなあと実感した。
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善良な一家が、ある文盲の家政婦を雇ったことで起きる惨劇。潤滑に回ってたはずの歯車が少しずつ噛み合わなくなり、死へと突き進む一家の運命が皮肉たっぷりの文体で描かれる。強大なコンプレックスは人を狂気に駆り立てる。見事です。
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夜を通して読みました。
面白いんですが読後感はシンドイ作品です。
法廷での彼女の一言で済むお話でしたよね。
「恥」の概念はかくも人柄を縛るものですと。 -
ものすごく久々に再読。
10年以上振りかも。
今で言うならサイコパスだよねぇ。
ディスレクシア(失読症)と名前が彼女のスイッチ。