落下する夕方 (角川文庫 え 4-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 11836
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043480012

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織さんの文章はすごく好き
    今回も好きは好きだけど恐怖の方が強かった
    華子の奔放さ無邪気さが身体の芯につきささってくる
    綺麗で苦しくて恐ろしい話だなと私は感じた

  • 大好きな江國香織さんの本
    江國さんの言葉は読んでるとゆらゆらと
    ハンモックに揺られている様な
    小舟に乗っている様な心地よさを感じます

  • この本が悪いわけではないが、私はこれを読んでひどく落ち込んだ。大切なものを失っていく期間が生々しくて、永遠のようで、文体が冷静なのもあいまってどんどん気持ちが追いつけなくなって、喪失感が大きくなっていくうちにそれすらも無くなってしまった。

    梨果も華子も健吾も目を瞑りながら前に進もうとしているような、そんな不安な心地だった。私はそれをとても不健全だと感じた。これは私の好みなだけだけど、人が進む先は健全で居てほしいと思っている。
    彼らは次のステップへ進めたかもしれない、けど、これからも目を瞑っているような気がしてならなかった。

    でも、それはこの物語が始まる前の彼らもそうだったのかもしれない。元来そういう人達だったのかもしれない。そうだとしたら、この進み方こそが彼等の健全さだとも思う。彼らはそういう運命のもとの人たちで、その中で必死に自分の行える最良を選択し続ける結果なら、それが良いなと感じた。
    どれだけ交わらない感性でもそう思わせる力のある本だったと思う。



    そもそも華子が現れなければこの2人は続いていたかと言えば、そうだがそうではないのかもしれない。
    プロポーズを断ってなお8年付き合い続けた2人はもうその時点からすれ違い始めていたのかもしれないと思う、
    でも勝矢夫妻を見ている以上、華子はどのタイミングで現れようとも全員の関係を引っ掻き回したようにも感じる。

    私は平穏で気楽なものが好きなので、華子を描くために消えてしまった勝矢夫妻や健吾と梨果の平穏な暮らしや愛情、その他多くのものをどうしても考えてしまう。15ヶ月もかけてゆっくりと大切なものを失うなんて残酷な事は、どれだけ魅力的なものが目の前にあったとしても、気なんて紛れないと思う。

    皆もっと気楽にしていてほしい、苦しいことから真正面から傷つきに行くような梨果を見ていると本当に苦しかった。傷つくことからは目を背けて良いと思う、適度に

  • おそらく20年振りぐらいの再読。この本の空気感というか独特な浮遊した時間感?が昔読んでた時と変わらない気がして懐かしくも不思議に感じた。

  • 読書好きの友人から恋愛小説、青春小説、ショートショートの3冊の文庫を頂きました。ありがとうございました。

    「落下する夕方」は異色の恋愛小説。江國香織さんの本では「きらきらひかる」に続いて読んだ2冊目の小説。「きらきらひかる」は「異色かつ強烈な恋愛小説」という印象でした。本作も異色の恋愛小説であることに間違いはありませんが、恋愛という感情の中に芽生えてしまう執着や未練という調味料が若干効いていると思います。

    主人公の梨果は8年同棲していた健吾から突然別れを告げられます。理由は「他に好きな女性ができたから」。健吾は家を出ますが、入れかわるように、その女性、華子が押しかけてきます。華子と暮らすはめになった梨果はいつの間にか華子の不思議な魅力に取り憑かれてゆきます。一方、健吾も華子を追って梨果のもとに頻繁に来るようになります。この小説は健吾に出て行かれてしまってからの、梨果の15ヶ月を描きます。
    小説の中心となるのは奇妙な三角関係。梨果と健吾の間にある後悔の念、健吾から華子への一方通行の執着、梨果から華子へのある種の愛情と憧れ。この微妙な雰囲気が意外に心地よく、小説を読むという楽しみを味わえました。また、華子の人物描写が秀逸です。男なら誰でも惚れてしまう(と思われる)女性を江國さんは創造しました。1998年に公開された映画では華子を菅野美穂さんが演じましたが、イメージに合っていると思います。

    小説は梨果が感じる少し歪んだ日常を淡々と描きます。どういう結末になるのかと思っていましたが、最後の梨果の行動は個人的には納得できました。
    切ない小説ですが、楽しめました。読んだ方とお話ししたくなる小説です。

  • あとがきも含め全部が好き.....
    読み終わった後も何日も華子について考える日々が続きそう私も華子が愛おしくてたまらない

  • 私はあまりのめり込めない世界でした。

  • 8年間同棲していた健吾が家を出た。その代わりに梨果の家へ転がり込んできたのは、健吾の新しい恋人であるはずの華子だった。華子の不思議な魅力に憑りつかれた人たちの、静かで透明な落下を描く恋愛小説。

    「私は冷静なものが好きです。冷静で、明晰で、しずかで、あかるくて、絶望しているものが好きです。そのような小説になっているといいなと思いながらこれを書きました。」
    あとがきで語った通りの物語。空虚なのに空気のように満ちている透明な何かから逃げ続けている、そんな話だと感じた。

    「『好意を注ぐのは勝手だけれど、そちらの都合で注いでおいて、植木の水やりみたいに期待されても困るの』」
    登場人物はみんな柔らかな狂気を抱きながら、執着という名の終着へ落ちていく。華子が咲く場所はきっと誰のもとでもなかったのだろう。一夜だけ咲く月下美人のような物語。

    読んでいて手ごたえがない。何もつかめないまま終わる不気味な読後感だった。ホラーかなと思ってしまうほどに。ただ、その空虚感こそがこの物語の核なんだろうね。今の自分には何とも言えない不思議な物語だった。

  • わからないお話だなぁと思った。
    わからなくなっていったのは自分の心の方だった。
    好きってなんだろうか。
    わからなくなったし、最初からわからなかったなぁと思う。
    ひとを好きになること、その人を好きな生活ごと好きでいること。
    それは自分の中に深く根を下ろすことで、簡単には変えることも消すこともできなくて、そしてそれはすごくしあわせなことなんだろう。
    そんな他愛もないことを思った。
    江國香織さんの文章はどこか淡くて、掴みどころがなくて、でもだからこそ心にいつのまにか積もってゆく。

    こういうお話、中学生の頃にも読んだけど、今の方がだいぶ染み渡ると思う。わかるようになったこと。わたしが歳を重ねたこと。
    好きって何だろうね、そういうことを漠然と、見ないふりをすることで考え続けていたけれど、これを読んでいくうちにまたわからなくなって、でも、やっぱりそうだよねと軟着陸する感じ。

  • 8年一緒にいた梨果と健吾。ある日突然現れた健吾の新しい恋人、華子。梨果の元を去った健吾の代わりに華子が同居することに。歪な関係のまま、過ぎてゆく日常。あちらこちらをふらふらと気ままに彷徨う華子はまるで野良猫のよう。もしかしたら、彼女は自分の居場所をずっと探し求めていたのかもしれない。生きる理由も含めて。華子は何かに絶望した訳ではなく、寧ろ満足してしまったのだろう。もう充分だと思った末の行動だったように思う。華子によって止まっていた梨果の時間が流れ出す。全てを肯定するように。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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