ユージニア (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.37
  • (316)
  • (810)
  • (1237)
  • (289)
  • (73)
本棚登録 : 9080
感想 : 796
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043710027

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 数年前から気になっている作品にいよいよ手を出した。
    ある一家で起きた大量毒殺事件をもとに構成された物語。
    語り手が頻繁に変わる中、読み進めれば進めるほど真相が分からなくなっていく、なんとも不思議な話であった。
    とにかく不穏で、読んでいる間はずっと不安な気持ちにさせられていた。
    真犯人は誰なのか。
    ユージニアとは。
    不気味さが魅力な恩田ワールドを体感できる一冊。

  • 恩田陸らしい、重層で深い世界観に飲み込まれます。
    特に前半では、点と点が結びついて、線になりつつも、線が交わったり交わらなかったりして、この物語がどこに続くのかわくわくさせられます。
    以下若干ネタバレになりますが、明確な結論をあえて明示しなかったのは、ひとつの答えや真実を求める現代社会へのアンチテーゼのように思えました。
    『忘れられた祝祭』はあえて細部の記載が事実と変えられていましたが、そもそも人の記憶は曖昧なもの。インタビュー内容がすべて事実という保証はありません。各章がインタビュー形式になっているのも、それらが意図的にしろ無意識的にしろ、物語の中での矛盾を許容しているものとなっています。
    誰かが「真犯人」ということではないことで、もやっとする終わり方ではありますが、分かりやすく誰もが納得する「正解」はないということが、物語の奥行きを出しているように思えました。

  • 読んだことのある恩田陸のイメージしか持ってなかったから、推理小説だと思わずに読み始めた
    一気に読んだ
    現実とか事実って、こんな感じで世の中に存在するものよね、と裁判所に関わってみてつくづくそう思う

    読み返したら面白いだろうな
    すぐはやらないけど

    結局、物語中の多くの人物が夢中になった対象である緋紗子が犯人的な位置付けにはなるんでしょうね
    で、動機を持ってた人物は複数いて、ほとんど語られない母親もその一人であり、意図的にか無意識的にか知らないが制御していたというあたりかと
    その外に、不穏な気配に気づきつつも止めようとはしなかった人物もいて、後々その罪悪感に苛まれている
    満喜子や満喜子の長兄の言う「仕方なかった」という考察が一番説明として近いのかなと思う
    とはいえ、この兄も「弟が何でも口に入れていた」ととらえていたりもする

    8章に出てくる、実行犯にかつて懐いていたエンジニアが高校時代に聞いた「死んじゃいなさいよ」は一体何なのか
    言葉自体は熱中症が起こした空耳だったとしても、丸窓の家に数人の女たちが笑いさざめいていたのは事実としてあったのではないか
    一人を望んだ緋紗子は誰とそんな会話をしていたのか

    キミが聞いたどこかで聞いたことのある声は、単に擁護施設の子の声なのか、「異様に物真似の上手な満喜子」の描写とは無関係なのか

    赤いミニカーが怪しさを纏って描かれているが、何の関係もなくただ落ちていただけなのか

    藪の中風の展開で、まさに真相は藪の中

    とりあえず満喜子は懺悔部屋の出来事は予め知っていて、その懺悔部屋の話を事件直後にしていたエピソードから黒幕の見積もりを誤っていたと気づき、「夢の通い路」の筈だった緋紗子との関係(これも満喜子のいわば片思いだと思われるが)が端から成立していなかったことに衝撃を受けながら天に召された…のかな
    勘違いに気づいた後のはずなのに、書籍の設定のままインタビューに答えているのも、緋紗子と二人だけの物語にしたかったからなのだろうか

    …なんてことをぐちゃぐちゃ書きたくなるような物語

  • 『雨は、海から降ってくる。』日本海側はまさにその通り。その表現に圧倒され、最初から引き込まれて行った。小説の中に小説があって複雑さを感じるにもかかわらず次から次へと展開していく場面がスルスルと頭に入っていく。面白くて読むのを止められなかった。緋紗子さんは、母親のことを実際どう思っていたのか。家族をどう思っていたのか。緋紗子さんは、裕福ではあった。ただ・・・想像が膨らむ。

  • 正直、全く期待せずに読んだからかめちゃくちゃ面白かった。普段ミステリー小説などの、読破後気分が下がるような小説は避けているが、今回たまたま読む予定の本が届くまで日があり手持ち無沙汰だったため読んでみた所、ページをめくる事にこの事件に惹き込まれてしまった。登場人物が魅力的であったことと、事件があまりにも現実離れしていたことが大きかったように思う。誰もが憧れる盲目の少女の言う「1人になりたかった」という気持ちは少し共感できる部分があった。ここまで狂気的ではないが…。こんな事件を起こしてしまうような気持ちを胸に抱えながらも、人々からは尊敬され敬愛されるとは確かに選ばれた人間であり、彼女が多くの人を魅了し、操れるのも納得できた。飲み物を運び自殺した青年はなんというか、率直にいうと憐れだった。たった1人の家族である妹を事件で亡くし、精神を病んでいた彼は何かに縋りたかったのだろうか。しきりに返答しなければと言っていたが、世界は彼に何と語りかけていたのか、とても気になった。「お前がこれ以上生きなければならない理由はなんだ、答えられないと殺すぞ」とでも言われていたのだろうか。彼にとっての声はいつから現れたのか、そして世界に返答したあと、彼はどんな気持ちで彼の人生を生きたのだろうか。働いておらず近所との関わりはなかったけどにしろ、頭も良く、子供に対して誠実で、端正な顔立ちという他人から羨まれる部分を沢山持った彼はどこか憎めない。むしろ利用され、可哀想とさえ思う。この事件の犯人は、どちらも「見られる側」、つまり羨まれる側の人間だったように思う。周りから全てを持っていると思われ、気づけば人を魅了しているような人物。私はその共通点からこの事件に繋がったのではと感じた。私にも憧れる人はいるが、彼らも彼らにしか分からない欲望や闇を持っているのかも知れないなと思うと、私は心が安らぐ。性格が悪いかもしれないが、そう思う。世界はなんだかんだ平等だと感じさせてくれるようである。
    ユージニアは読破後、そこまで気落ちはしなかったように思う。しかし、心の奥に確実に何かが溜まった気はする。人間らしくて、美しく、恐ろしい小説だった。

  • はぁ怖かった。色が…怖い!
    なんともいえない不気味さと不安に襲われ…読了後何日もユージニアの世界に浸ってしまいました。
    映画もそうですけど、余韻に浸れる日数が長いほど自分的傑作入りです。

    色んなところですっきりしない、と見かけたもので
    時系列にまとめ、また、真偽の取捨選択やら紙に書き出してみたのです。
    そうしましたらあやふやだった箇所もクリアになりまして、この作業がまた面白く痺れる読書体験になりました。

    インタビュー形式で始まるこの物語は、読み進めるのはたやすいのに読み解くのが難しいお話なのですね。
    インタビュー、1人称、作中作、独白…読み解くヒントはこれらの章ごとに異なるスタイルの信用順位を意識すること。
    偽証も誤解もありますからややこしいです。

    私も一読ではわからない点が残りなんとか一応疑問点が無くなるまで読んでみた感想としましては、無駄な情報の無い緻密なミステリだと思うのですが如何でしょう。

  • ハードカバーの装丁が好きだったのでジャケット買いした思い出。物語を通じて流れる夜明けのような暗い青色。
    ある大量毒殺事件を主題に多人数の語りで物語は進行する。被害者、観客、犯人の目撃者…究明される凄惨な毒殺の手口、犯行の裏側。

    しかし深まる「犯人」と「少女」のあいだの静かな謎。
    ユージニア、ユージニア。と光を失う少女は口にする。
    タイトルに込められた意味が最後に謎を綺麗に剥ぎ、明かされる少女と青年の関係。
    耽美的なミステリ。
    恩田陸でいちばん好きなものを選ぶなら1つは絶対にこれ。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      うわ~、お仲間がいて嬉しい。
      私も絶対に恩田作品No.1は「ユージニア」です!!
      でも恩田ファンの中ではこの作品を押...
      こんにちは。

      うわ~、お仲間がいて嬉しい。
      私も絶対に恩田作品No.1は「ユージニア」です!!
      でも恩田ファンの中ではこの作品を押す人って少なくないですか?
      もっとSF色が強い方が良いのかな。
      私は「ユージニア」の感動を求めて恩田さんの本を追い続けてます。

      あまりに感激して家族にも無理矢理読ませましたが反応はイマイチでした・・・(-_-;)
      2013/03/06
    • とうかさん
      こんにちは。コメント有難うございます!

      同じ思いの読者さんがいらしてとても嬉しいです。 いいですよね、すごいですよね、これ!
      恩田陸さ...
      こんにちは。コメント有難うございます!

      同じ思いの読者さんがいらしてとても嬉しいです。 いいですよね、すごいですよね、これ!
      恩田陸さんはジャンルの裾野が広すぎて読者もかなり好みが分かれるんでしょうかー。

      もっと広まるといいのに!
      2013/03/06
  • 例えるなら「藪の中」
    まるで現実世界のように、一人一人に真実があり、ただ事実がひとつあるだけ。
    ここまで読了後にゾッとするお話はあまりない気がする。すごい。

  • 掴めそうで、掴めない。もどかしさと、ゾワっとする不安なきもち。「事実とはある方向から見た主観」ということがよく分かる。

    大好きな小説でこれまぇ数えきれないほど読んでいるのに、毎回新鮮な気持ちでドキドキしながら読む。今回こそはちゃんと分かりそうな気がする…!と思いながら読むけど、やっぱり分からなくて。

    なんて中毒性の高い小説なんだろうか…

  • とにかく不思議な本という印象。
    時系列の整理がやや困難でありながらこれはこうなのかと独自に考察が立てられて面白い。
    青澤邸のひさこがこれまたいい不思議な神秘的なキャラクター。
    こういう人がいたら惹きつけられるだろうなと感じた。
    割とダークでありながらどこか爽やかさもありスラスラ読み進めることが出来た。
    2日で読んでしまったから自分の中では内容が入ってきやすい作品であったと感じた。
    恩田陸さんの作品は少し不思議な作品が多い印象。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×