- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043829019
感想・レビュー・書評
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原爆の話をされるとミステリー要素が吹っ飛ぶな。一応、ミステリーなんやけど…
アメリカさん、ドイツに負けじと原爆開発(ドイツに先んじられると大変な世の中になる!)
しか〜し!もう向こうは、降伏して終わってんのに、完成まで続ける。
そのお陰で、今も核の恐怖に怯えて生きなあかんやん。
更に、今はウクライナの問題もあって、核がクローズアップされてる。
そんな大きな事件があった後の1人が殺されもなぁ〜
まぁ、「ヒロシマの英雄」(アメリカから見た場合)とか言われても、一瞬の業火で大量の人らを…
罪の意識があるだけマシで、研究してた科学者さん達は?
白い閃光が地上を焼き尽くす…
目を開くと、白い髑髏の仮面をつけた死神たちが私を取り囲み、黒い口を開けて笑っていた。
それがあなた達の新世界なのですね〜
後悔ぐらいはして!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『ジョーカーゲーム』シリーズを読んで面白かったので、他の作品も読んでみたいと思って本屋で見かけた本作を購入。
原爆開発が行われたロスアラモス研究所を舞台にしたフィクション。所長であるオッペンハイマーの旧友の視点で書かれた、終戦祝賀パーティの夜に行われた殺人をめぐるミステリーになっている。だが、その裏にある原爆開発の大義名分と、それがもたらす結果についての苦悩、戦争の非情さ。全体主義的な責任の観念と善悪の区別の欠如。そちらの方が重厚なテーマであったように思う。責任を感じないようにすれば罪悪感はないが、結果を目の当たりにしてしまったら正気ではいられまい。殺すか、狂うか。一体誰が正気なんだ。 -
ミステリー仕立てで、原爆投下の是非、人間の原罪を浮き彫りにした作品。
メッセージ性がある物語ですが、ミステリー部分がかなりいまいち。なぞ解きは主題ではないものの、ミステリー部分の中途半端感は否めません。
ストーリとしては、
原爆開発の指揮を執ったオッペンハイマーが、ロスアラモスで発生した殺人事件について記載したという設定。
原発開発の為に集められた天才科学者たちが暮らすロスアラモスにおいて、戦勝を祝うパーティで発生した奇妙な殺人事件。その犯人は?というのがミステリー。
事件の解明が進むとともに、開発した科学者、投下したパイロットの闇と狂気の部分が明らかになってきます。
原爆を生みだした科学者の意識、そして、彼らなりの正義。しかしそれはほんとに正義だったのか?
自分としては、当然ながら、ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下は不要だったという認識ですし、国際法にも違反する行為だったと思っています。
といっても戦争当時に国際法っていってもねぇ。
そして、放射能事故での被害者の凄惨さ。原爆そのものの威力、恐ろしさが描画されています。
さらには、原爆の仕組みについても描かれています。
さらにパイロットの苦悩と狂気。
そうしたところから、語られていくその瞬間...
考えさせられる物語でした。 -
原爆の開発のため作られた科学者の町”ロスアラモス”。戦勝パーティーが行われた翌日、一人の男が殺されているのが見つかる。原爆の開発責任者”ロバート・オッペンハイマー”は友人のイザドア・ラビに事件の調査を依頼する。
最近でも日本に原爆を落としたことは是か非か、という議論を見かけることがあります。戦争を終わらせるためにやむを得なかったという意見もあれば、国際法に違反する戦争犯罪だ、という意見もあったりするみたいですが戦後、それも平成生まれの自分からすると原爆も戦争も繰り返してはいけない、くらいにしか実感がわかず世界大戦当時の原爆投下の是非については、どちらの意見も正しいように思えてしまうのが事実です。
この小説に登場するのはその原爆を開発した科学者や投下したパイロットなどその当事者たちです。事件の調査が進むとともに彼らの中の狂気の部分が明らかになってきます。それは原爆を生み出した、という罪の意識と、それを麻痺させようとする戦時下の全体主義や科学者としての興味、喜びといったものです。
こういう矛盾した感情を抱いて、そして知性があるからこそ人間というものは恐ろしい生き物なのだろうな、ということを思いました。
ミステリという体裁をとっていて犯人探しの要素もあるのですが、個人的にはこのミステリは犯人探し(フーダニット)ではなく、なぜ殺したのか(ホワイダニット)のミステリだと思います。最後に明かされるその動機はまさに狂気そのものです。
しかし読み終えたころには、その狂気は本当に狂気だったのか、この状況では狂うことが人間として当たり前なのではないか、という思いも抱かされます。それもまた原爆という魔力を持った存在が、このミステリの中心にいるからではないでしょうか。
作品のタイトルである『新世界』。第二次世界大戦後、アメリカとソ連の核競争が始まり、最近でも北朝鮮やイランの核開発、そしてフクシマ原発など、核の脅威は止むことはありません。それがアメリカの原爆投下から生まれた『新世界』の姿のように思います。
犯人は連行される際、ラビたちに自分の思いを叫びます。その叫びはある意味では原爆、あるいは原爆を生み出した科学力自身の叫びであるかのように思います。そしてそれこそが『新世界』に足を踏み入れる前の人類に対する最後の呼び声だったのではないでしょうか。
そしてその叫びがアメリカの戦勝、世界大戦の終わりという勝ち鬨でかき消されてしまったとき、人類は核との共存という新世界に疑問を抱くことなく突入しました。そして現在、核は広島、長崎という一地方にとどまらず世界すらも破壊する力を持っています。その脅威に気づいた今からでも、犯人の、そして科学の叫びに耳を傾け、そして選択する必要があるのではないか、と思いました。 -
何回も読んでます。中毒です。
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マンハッタン計画の中心施設であるロスアラモス研究所での出来事を、オッペンハイマー博士の手記という形で綴っていく。きっちり虚構と宣言しているにもかかわらず、原爆投下後の広島の描写にそれを忘れる。原民喜の「夏の花」の引用も効果的だ。研究所の科学者達が、被爆者のことをどれだけ想像できたのかは分からない。「新世界」ってタイトルも効いてるよね。
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舞台がロスアラモス。原爆開発の天才科学者が集まっている町での殺人事件。
ミステリーではあるが、それよりも別のテーマのウェイトが高い。 -
これは小説というものの完成形のひとつだと思う。政治的、思想的な側面に囚われる人もいると思うけど、ペンは剣より、を地で行き、示すものとして評価されるとよいのでは。
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小説家である「私」のもとに、エージェントと称する謎の人物から持ち込まれた原稿。それは「原爆の父」と呼ばれた科学者、ロバート・オッペンハイマーの未発表の遺稿だった。
内容は、第二次世界大戦終結に沸く夜、ロスアラモス国立研究所内で起きた奇妙な殺人事件について。
オッペンハイマーに依頼されたイザドア・ラビが、事件の真相を追っていくというものだが――。
ヒロシマ・ナガサキの悲劇、数十万の死と数百万の苦しみを生み出した場所で〈たったひとりの死〉を追う物語は皮肉に満ちみちている。
夜を打ち払い、忽然と地上に現れる小さな太陽。
その瞬間はひとつの世界の終わり、別の世界の始まり。
そう、これがわれわれの新しい世界。そこでわれわれは常に、狂気の淵に立つ。すべての民族は今、地獄のかまどのまえに整列している――。
この『新世界』はノン・フィクションという体裁をとったフィクションである。
どこまでが事実で、現実で、どこまでが虚構で、想像なのか。その境目を曖昧にすることで、かつてこの国に起こった悲劇と、また同じ悲劇がいずれ起こりかねない、ここはそういう世界だという容赦ない現実が浮かびあがってくる。
異色のミステリ。
KADOKAWAさんの文芸情報サイト『カドブン(https://kadobun.jp/)』にて、書評を書かせていただきました。
https://kadobun.jp/reviews/375/33cca1f4