霧笛荘夜話 (角川文庫 あ 46-1)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043865017

感想・レビュー・書評

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  • 港が見える奇妙な意匠のアパート、霧笛荘。酔狂な男が建てたというそのアパートの管理人は、チャイナドレスを着た纏足の老婆。そんなアパートにやってきた人物に、老婆が空室を一部屋ずつ紹介する形で物語は進みます。

    自殺願望があるのに死ねない女、社長夫人だった強烈な美貌の女、お人好しでおつむの足りないチンピラ、ミュージシャン志望の青年、レズのふりをして生きる自称オナベの女、特攻するはずが終戦で死にそびれた男。そして最後に老婆自身のことも明かされます。他人から見れば不幸でも、霧笛荘の住人はみんな幸せだった。

    およそ現実とはかけ離れた光景だと思われるのに、老婆が語る住人たちの様子が目に浮かぶよう。湿った空気まで伝わってくるのが凄いです。みんなが幸せに暮らしていた夏のこと。切なさ満載で、もろに好み。

  •  幸せとか不幸とかをうっちゃった人間の優しさが、きりりと光る心の温まる小品集でした。決して大作品ではありません、そしていつもの浅田さんのような涙を誘う場面もありません。でも一つひとつの作品から漏れ出す優しさが、何とも言えない良い後味を残してくれます。
     いつもこの人にはやられます。

  • 2016年12月3日読了

  • 独特の世界観。
    変人なんだろうなあ。
    違うかな?
    自衛隊にも行ってたっていうし。
    て、また怒られそう。

  • 初読みの作家の方。読んだきっかけは勤務先の大学生にこの作家の作品が良いと勧められて。霧笛荘にかつて住んでいた住人のエピソードを管理人の老婆が語っていくという話のあらすじ。3話目の任侠に成り損なった男の話と、4話目のスターになった男の話、5話目のオナベになった女性の話がそれぞれ印象に残った。ただ、反面イマイチ作品の良さが解らないまま淡々と読んでしまったのも事実。もう少し有名な作品を探して読んで良さを確認をしたいと思う。

  • 住人、一人一人のお話は面白いと思ったが、全体としては、時系列が良く分からず感情移入ができなかった。

  • わけありで偏屈な住民たちが集まる、運河のほとりの小さなアパート「霧笛荘」。
    みんなが不幸を抱えて、行くあてもなく霧笛荘に辿り着き暮らし始めるが、その暮らしの中で、自分の人生の真の在り方に気づき、本当のしあわせを見つけていく。

    少しじわっとした悲しみを孕んだ小説ですが、ありきたりのしあわせがすべてではないのだなあとしみじみ。

    自分はこんな風には生きられない、という人たちばっかりだった。

    本当のしあわせは、本当に不幸を経験したことのあるひとにしか、わからないのかもしれない。

  • 霧笛荘に住む変わった人々が短編として登場、最後に待っているのは・・・。
    お金で買えないもの見つかるかもしれません。

  • 霧笛荘のかつての住人6人のエピソードを綴る連作短編集。どの主人公もとことん不器用で常人離れしたキャラ。解説によれば、「己の生き方に妥協を許さない人間たち」。そんなとんがったキャラに負けず劣らずストーリーもちょっとあり得ない話ばかり。う~ん、なかなか感情移入し難いなあ。。特に、第2話の主人公「尾上眉子」は理解不能。

  • 2016年、13冊目です。

    浅田次郎の短編集です。
    というより連作といった方がいいと思います。
    港町の運河の辺にある古ぼけたアパート「霧笛荘」を舞台にして、
    部屋を借りに来た人間に、管理人の老婆が一部屋ずつかつての住人のことを
    語るという構成になっています。
    管理人の部屋も含め7つの部屋について、7つの物語が紡がれています。

    安っぽい言葉でいうなら、社会からはじき出されながらも、市井に暮らし、
    それでいて、自分の中にある矜持を微かに持ち続けて生きている人々の様を、
    慈しむような眼差しで描いているという感じです。

    第4話 瑠璃色の部屋
    北海道からプロギターリストを目指して上京した主人公”四朗”と、それに反対する家族から自分を東京にこっそり
    送り出してくれた足の悪い姉との、心の中のきれいで柔らかいところでのふれあいが、
    美しく描かれていて心打たれます。

    また、戦後と軍隊の話を交えて小説が書けるのは、浅田次郎をおいて他にいないことも改めて感じました。
    第六話マドロスの部屋では、引き揚げてきた特攻隊員と出撃前に書いた遺書がその後の人生を暗転させます。

    これぞ、浅田作品とうならせる連絡短編でした。

    これも、入院中に読了しました。

    おわり

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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