熱帯夜 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 406
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043873029

作品紹介・あらすじ

猛署日が続く8月の夜、ボクたちは凶悪なヤクザ2人に監禁されている。友人の藤堂は、妻の美鈴とボクを人質にして金策に走った。2時間後のタイムリミットまでに藤堂は戻ってくるのか?ボクは愛する美鈴を守れるのか!?スリリングな展開、そして全読者の予想を覆す衝撃のラスト。新鋭の才気がほとばしる、ミステリとホラーが融合した奇跡の傑作。日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む3篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 3つの中編からなるこの作品

    曽根作品の魅力に取り憑かれた私は、これで3冊目を読み終えたけど もー、なんつーか最高すぎて好きすぎる

    「熱帯夜」胸くそとんでもラスト
    「あげくの果て」SFブラックユーモア
    「最後の言い訳」とんでもゾンビ時代
    ってな感じです

    あとがきで馳星周さんと山田正紀さんの書評が少し載っていたけど、どちらの先生も『底意地の悪さ』が光る と書いてらっしゃる そんな底意地の悪い作品を大好物!!と思える私は底意地が悪いのかもしれないw だけれどもそんな自分が好きなんだ!ww

    小説って自分の想像力で読んでいくから、人間の悪いところ、クズなところ、ろくでもないところ、そういう部分を想像するとなんだかゾクゾクするんだよね(変態かw)

    映画や漫画はほっこり系や泣ける系も好きなんだけど、小説に関してはこういう作品が大好物だわやっぱり…またすぐにでも別の曽根作品を読みたくなっている…
    イヤミスよりももっと踏み込んだ底意地の悪い作品が好きな方はぜひぜひ、読んでいただきたい 

  • ブラックユーモアなホラー小説。
    今まで読んだ本の中で本作が一番好き。
    熱帯夜のラストに向かって収束していく
    スピーディーさと最後の言い訳のオチがたまらなく好き。

    特に最後の言い訳は設定もさることながら
    そのオチの面白さにゾクゾクし、読み終わって爆笑してしまった。
    この世で2番目に好き

  • 曽根圭介作品を初めて読みました。3作品どれも確かにホラーなんですがしっかりミステリです。一見関係のなさそうな何人かの人物の視点がラストに上手く繋がって別の絵を見せてくれる手法はとても好みで、三作とも最後にいろいろな意味で衝撃が用意されていました。伏線もうまく張ってあったと思います。ブラックだったりシュールだったり、ホラーの背筋の寒くなるような怖さではなく、なんだか落ち着かない気持ち悪さを感じました。それなのにこの作家さんの別作品をすぐ読みたいほど、この世界観には不思議なことに惹かれます。

  • 作者の小気味よい底意地の悪さ、
    もとい小説という表現の舞台に対する一種の軽薄さが実に中毒性がある

    本作に収録されている「熱帯夜」「あげくの果て」「最後の言い訳」のどれもがきれいにまとまった短編作品

    ただ作品全体に漂う退廃した雰囲気、
    特に「最後の言い訳」ラストのちゃぶ台返しには
    「小説とは格式高いものである」なんて高尚な思い込みを持っている奴ほど面喰らう

    直球勝負などはせず、超山なりのスローボールやふにゃふにゃ曲がるナックルボールで打つ気満々の四番バッターを手球に取ってグローブの裏でニタニタ笑いながら悠々とベンチに帰っていく

    テクニックのある人間が本気で読者を舐め切ってやろうとしたためた
    そんな小説への軽薄さに中毒的な心地よさを覚える良作

  • 2022.04.24

    あまり読んだことのないタイプのホラー小説というのか、SF小説というのか…
    読みやすいけど、グロめのブラックユーモアが効いてるホラーは初めてかもしれない。
    面白かった。
    サクサクスイスイと読めるしわかりやすくて気持ちよかった。
    「熱帯夜」は、うまくまとまってそーゆーことか!とグロさもあったのに読後はスッキリ。

    読み進めるのに苦労した本がしばらく続いたので軽快に読めて、すぐ読み終わって嬉しい。
    「鼻」も気になっていたので、次回読んでみる予定。

  • 「熱帯夜」
    「鼻」に続く叙述ミステリー(時間とキャラクターの二重仕掛け)なのだが今回も見事に騙された。スピード感があってスリリング。あいかわらず人間に対する憎悪で満ち溢れている。ゲス野郎が三人出てきてその三人ともがきれいに破滅するラストはお見事。期待を裏切らない素晴らしい作品だった。

    「あげくの果て」
    老人問題もののディストピア小説。同じ家族の祖父・父・息子の三つの視点から書き分ける。

    「最後の言い訳」
    ゾンビ+淡い初恋の思い出もの。ゾンビの擡頭により激変していく社会の様子が新聞記事の体裁で説明され、そこに主人公の現状と子ども時代の回想が絡んでくる。しかしここでも時間の叙述トリックが。非常にうまい構成だ。オチは当然これしかないだろう。

  • たまにはホラーでも読むか、と表題に惹かれて借りてみたけど、ホラーというよりはブラックでした・・・短編にしては面白かったけど。もっとゾクゾクするようなホラーが読みたかったなーw

  • 「熱帯夜」「あげくの果て」「最後の言い訳」の3作品。

    叔父から譲り受けた電子書籍に入っていたのでどのような作品かも知らずになんとなく読め始めたが、どれも色んな意味で気持ちが悪かった(褒めてる)。
    非現実的なグロい描写と、現代社会を皮肉ったリアリティのある描写とが混在していることで独特な世界観になっていると思った。ラストにかけて想像をいくつも裏切っていき、綺麗にオチるところでさえも気持ち悪く感じる(ほんとに褒めてる)。

    バッドエンドものに耐性がない私でも、なんとも言えない読後感と引き換えに3作品続けて読んでしまうほどの不思議な面白さがあった。

    私は「最後の言い訳」が好き!他の2作とは異なり、ちょっと切ない。

  • 笑窪(エクボ)ありますか?

    あばたも笑窪ってくらいだし
    やっぱ笑窪ってチャームポイント。

    この作品、わずか約60Pなのに負の連鎖盛り沢山。
    タ○リの世にも不思議な物語的で面白かった。

    読後、思い出したアメリカンジョーク。

    若い男女が深夜の公園でデートしていたら
    突然、大男が現れ「オイ、俺と付き合えよ」と凄む。
    彼氏は彼女に「逃げろ!」といい彼女を逃がす。
    大男はふふふ・・・と笑いながら
    彼氏を暗がりに連れて行きズボンを下ろす。

    これはこれで、怖いだろうなぁ

  • 相変わらず曽根さんは意表を突いてくるなぁ。そこに緊迫感とブラックユーモア、人間の滑稽さと悲しさが絶妙に同居。上野のパンダの名前には思わず笑いが漏れたw
    「あげくの果て」の結末はちょっと締まらなかったけど、「最後の言い訳」はオチもついてかなりの快作ならぬ怪作だと思う。

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著者プロフィール

1967年、静岡県生まれ。早稲田大学商学部中退。漫画喫茶の店長などを経て執筆活動を開始。2007年「鼻」で日本ホラー小説大賞短編賞、同年『沈底魚』で江戸川乱歩賞を受賞。09年「熱帯夜」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2011年『藁にもすがる獣たち』で第2回山田風太郎賞の最終候補作となる。トリックの効いた異色の作風で注目されている。

「2017年 『暗殺競売』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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