政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書

著者 :
  • 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047315709

感想・レビュー・書評

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  • 漠然と日本が変な方向に行っているような気がしていたけれど、現実を突きつけられた感じ。3.11の震災以降の日本で起こっていることが、9.11以降のアメリカの『失われた10年』で起こったことをほとんどそのままトレースしているというのが、恐ろしい…。ほんと、なんでこんなアメリカに追随するのか分からないよ!いや、でも、追随しているつもりはないのかもしれない。どうやってもそういうふうに転んでしまうのが、ニンゲンの悲しい性なのか…。
    これを読んだからといってどうしたらいいのかは分からないけど、まず知ることができて良かったと思う。内容に賛否はあるかもしれないけれど、一人でも多くの人に読んでほしい気がする。その上で、それぞれが考えることが大切。私たちが思考停止に陥ってしまったら、国を動かす一握りの政治家にとって思うツボだと思うから。

  • 昔、「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」というフレーズがあった。”ヨーロッパ”を”世界”に、”共産主義”を”新自由主義とコーポラティズム”に置き換えれば、本書が告発している現代社会の裏側が見えてくる。

  • ・世の中の1%の人間が残りの99%の人間を搾取している。
    ・アメリカでは9.11以後その流れが明確になった。
    ・今や世界中でその動きが支配的になっている。
    ・その動きを可能にしているのは「情報隠蔽」。政治とマスコミとグローバル企業と国民の無関心。

    日本の例でいうと
    『被災地の「震災がれき」を東京都が受け入れ表明するかしないか』
    という課題は、単に被災地支援をする、しないの判断を超えた思惑があることに気づくことができるかどうか、が例として挙げられていた。

    東京都は「震災がれき」の受け入れを決めた。
    意見は二分したかもしれないが、都民の多くの声は「安全性が保証されれば支援のために受け入れるべきで、被災地の痛みをわかちあうべき」というのが大半の意見だったと思う。
    実際には次のような状況だという。

    ・受け入れるのは福島県以外の放射能汚染されていないはずの地域のものというが、福島原発以北にも実際、放射性物質は散らばっている。
    ・法律上1キログラムあたり8000ベクレルまでという暫定基準値はいつの間にか1キログラムあたり10万ベクレルまでに緩和されている。
    ・都が応募したがれき処理業者の応募要綱は、「バグフィルターおよび活性炭吸込装置、もしくはバグフィルターおよび湿式排煙脱硫装置を備え、1日100トン以上の処理能力を持つ都内の産業廃棄物処理施設で焼却できること」とある。これが可能なのは江東区青梅の「東京臨海リサイクルパワー株式会社」のみであり、この会社は東京電力が95.5%出資している子会社であること。そしてさらに言うならば東京都は東京電力の大株主であること。

    これだけを見ると、やはり情報隠蔽というかニュースにおける説明の文脈に偏りがあるため、都民も判断できない状況において物事が決まってしまったという印象を持ちます。

    これが一例でした。震災がれきとまったく同じ例ではありませんが、イラク戦争にしても、日本のTPP問題にしても、発端は背後にいる国家、国籍を問わない、グローバル企業、ロビイスト(世の中の1%の人)、何かしらの利害関係者が、政治、マスコミを利用して、最大限の利益をあげるために動いている。そしてそれを可能にするとのは、情報隠蔽により判断できなくなった国民の無関心という指摘でした。

    単純に「格差が広がっている」という指摘は昨今ありふれた主張です。しかし、この本はその本質が「グローバル企業などの利害関係者による利益の追求」がとどまるところを知らないことにある、と指摘している点は新しいと思います。しかも「搾取する側は世の中の1%と言わず、0.1%、0.01%」となっていくであろうから、今後のわかりやすい世界の潮流になるだろうと思います。

  • 9.11(2001.9.11)の同時多発テロから3.11(2011.3.11)の東北大震災に至る10年間に、政府が自国民に発した偽情報(フェイクニュース)について、【堤美果】が警鐘を鳴らした2012年出版の新書版。欺瞞と利害関係が渦巻く政治の世界において「政権維持」と「国益」が命題である以上、情報の全てを公言できないのは自明の理であろう。また政府お抱えの<御用学者>らの発言内容についても、受け取る側の自己判断力が必要となる。

  • そしてこの著者も。

  • 入魂のルポタージュ。911以降のアメリカで何が起きたのか。ここから学ばなければバカだぜ。
    311以降に政府はウソをつくって、気がつかなかったら、バカだぜ。

    以下、重要と思える箇所を抜書き。

    <blockquote>つまり、全加盟国の中でアメリカ政府だけが、時刻の国内法と異なるルールが<TPP>の検討事項に挙がった際、議会の承認が得られないことを理由に拒否できるのだ。これは、<TPP>が自由貿易ではなく、アメリカ政府が要求するルールに支配されるものであることを示している。だが、日本政府は国会で追及されるまでこれを認めず、マスコミもほとんどほうどうしていない。(P.79)</blockquote>

    <blockquote>「現代資本主義の下では、民主主知という幻想が広まってなければならない。既存の社会秩序を驚かさない限り、反対派や抗議を体制の一環として受け入れることが、グローバル資本にとって利益になるからだ。」(紛争解決教育研究者ポール・ギベル)(P.104)</blockquote>

    <blockquote>「政府は言論と表現の自由の最後の砦あるインターネットを検閲できるように、管理下におこうとしている。そしてその背後には、99%である私たちと逆側の人々がいます」
    アメリカの<愛国者法>は他人事ではないのだ。この10年でアメリカ国内に起きたことの数々は、違和感という直感を見逃し続けたことへの積み重ねだった。それらの例は、政府によってこっそりおかしな監視法案が通されないよう、決して政治から目を話さないことの大切さを私たちに警告してくれている。(P.152)</blockquote>

    <blockquote>「どうしても腑に落ちないニュースがあったら、金の流れをチェックしろ」。(P.162)</blockquote>

    <blockquote>問題は、自由貿易の<自由>とはいったい誰のための自由をさすのかという部分です(P.199)</blockquote>


    <blockquote><アメリカ型独裁資本主義>の最大の功罪は、国民を市民ではなく消費者にしてしまったことだろう。(P.200)</blockquote>

  • "違和感を感じた報道を検証するには? 資金の流れを追う。
    現在のインフラでは苦も無く調べることができるだろう。様々な報道を鵜呑みにするのではなく、裏をとることの大切さを教えてくれる。情報リテラシーに関する本とも言える。"

  • 情報収集の方法に偏重があってはいけなく、多方向から取得することがこの時代に求められることを感じた。そのためには日本だけのメディアに限らず、海外から見た日本、アジアというグローバルな捉え方が必要。

  • 必ずってところなんだな。だから何が本当かわからなくなったとか疑心暗鬼とかではなく必ず嘘をつくのだから、きちんと自分のアタマで考えなければならないということだ。佐藤優さんが言っているインテリジェンスということで自分の頭でしたたかに考えなければならない。堤未果さんもそういったインテリジェンスの必要性を言っている。

    反知性主義とかいうがそういった知性への憎悪に対するにはやはり自らの知性というものは何なのか考えることを必要とする。知性は二つの見方があると思う。自らの悟性からある知性。あとは悟性なき知性がある。これらの違いはカントが指摘している。自らの知性を誇っても悟性なき知性であれば反知性主義へ躓く。それが躓きの石であると思う。

    悟性からの知性でもっとも有名であるのはナザレのイエスであると思う。かれは反知性主義に殺されてしまったけれどそれが大事件であった。その大事件がキリスト教というものを生み出していて、やはりそこにも悟性からある知性であるイエスと悟性なき知性の躓きの石の関係は明確に記されている。キリスト教の価値はそこに集約されていると思う。

    私たちに必要なインテリジェンスも同じである。類推(アナロジー)できるものである。だからナザレのイエスを理解したら類推(アナロジー)で世界をみることができると思う。

  • 完璧でない人間が作る政府もまた、完璧でないのだろう。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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