バカが全裸でやってくる (メディアワークス文庫 い 1-4)
- アスキー・メディアワークス (2010年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048688192
感想・レビュー・書評
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“でもこれは話すべきなのか?ああ勿論、『僕』なんて実在しない……と思うぜ。これの真偽は内緒、ってことにしとこう。それで、『僕』のその後なんだが……例えば、推理小説ならこういうオチはどうだ?実は『僕』として描かれていた行動は全部、最後に描かれた『オレ』だった、とか。ほんとは大学で『オレ』が甲斐抄子と張り合い、小説家への道を歩む。つまり『僕』と対話していた『オレ』の行動と言葉は……みたいなさ。どう?
あれ、でもそれだと『僕』だか『オレ』だかのその後を語ってるわけじゃないよな。おっと失敗。あーでも、そんなの決まってないんだよな。だから物好きな人が好き勝手に想像してくれ。それがきっと『僕』のその後になる、んじゃないか?まぁ、先のことは分からんね。
分かる小説も面白くないし。よし、そろそろ切りがいいし、ここであとがきお終い。
この本の一章をもう一度読み返したくなったら、オレの勝ちだ。じゃ、またな。”
え?
ええっと、これは、つまり、その、
え?……ああ、そっか。
自分なりの理解は下せるけどそれが正解かはわからない。
だけど、つまるところは……ああ、駄目だ。うまく言い表せない。
ちと引っかかるのは、『橘エイジ』と、『自称殺し屋の親戚のおにいちゃん』。
これが出てくるところを、この物語内での現実世界と捉えると……。
面白くて、混沌として、だけど不可解ではなくて。
バカ最高。
“僕が居酒屋の入り口になんの経緯もなく注目した直後。
居酒屋の扉が力強く蹴り倒される音と、芯の一本通った伸びのある悲鳴が響き渡る。
事件と不安と絶望と、ほんのちょっとの好奇心をくすぐる非日常の音。
そして日常を覆う肌色が押し寄せる。
『そいつ』は、
『僕の前』に、
『全裸』でやってきた。
……フルティンである。
完全に直接的な言及は避けるけどティン丸出し。
前も後ろも包み隠していなかった。
びんぼっちゃまの全裸バージョンだ(それならだれでも裸です)。
そんなやつが全力疾走で現れて居酒屋の入り口を蹴り飛ばして、飛びこんできた。
……ここ、昨日まで僕が住んでいた日本だよな?”詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初の勢いのまま読み切ってまた読みたくなるような締め。おもしろかったー。
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こういう方向の入間人間もかなりいいと思う。
とりあえず、こういうのが好きだということはとても伝わった。 -
今回もいい入間人間作品。
私小説とも思える内容のある種の群像劇作品。
とにかく全編が「小説」のことで埋め尽くされていて
なんだか苦しいくらいにその切実な想いが伝わってくる。
息苦しいよ。その息苦しさは好ましい苦しさだけど。
きっと20代で読んでいたら、自分ももっと近い感情の温度で
のめり込んで、もっと気持ちを動かされたかもしれない。
言葉、語感、単語、語呂の多様を極力排除したまさに
「全裸」の作品なのかもしれないですね。
今、このタイミングで今作が出ることに今後の入間人間氏の
作品がどうなるのか期待値アップ。これでハードル上がって
しまってますよーw。