- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048730587
作品紹介・あらすじ
進化論を駆使した新たなる人魚伝説。マリア1号の発見を契機に揺れ動く人間たち。ミッシング・リンクの謎を追い、舞台はフロリダ、香港を経てアラスカの極海へ-。圧倒的なストーリー・テリングで人間と人魚の交感を描いた、岩井俊二、待望の書き下ろし長編1000枚。
感想・レビュー・書評
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面白かった、この一言。
2012年に偶然発見された男性の人魚。そこから時代を超えて絡み合いながら人魚伝説の真実を追っていく壮大なストーリー。
正直最初は波に乗れなかったものの、第2章から徐々にひきこまれ、愛、偏見等込められた物語に読み終えるのが惜しいほど、魅了されてしまった。
特にホモ・アクアリウス説はまるで講義を聴いているかのように興味深く、浪漫なるものを感じた。そしてこの妙な説得力、これには真実かと錯覚するほど。
人間、人魚、双方が研究者の好奇心から背負ってしまった運命。
密とジェシーの長い記憶の旅は圧巻。想像力を掻き立てられる描写はさすがだ。
人魚が生き抜くために選んだ進化の裏に秘められた悲しみはせつなさの波に姿を変え大きく襲いかかってきた。
この物語が描く人魚と人間が違和感なくストンと自分の心に入り込んできた感じ。
忘れられない作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人魚伝説がすごくリアルに描かれていて圧倒された。エログロな描写あり、脳に焼き付いてしまった。
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長らく積読だった小説。
岩井さんの新刊が出るという情報を得たので、この平成9年刊行の超大作を先に読んでみました。
偶然なのか何なのか、小説の舞台が2015年で、ちょっとびっくり。
イギリスの進化論者・ウォーレスが、19世紀に著した「香港人魚録」。ウォーレスが実際体験したことが書かれているこの本は、しかしまるで嘘であるかのように綴られている。
時は流れて2012年、セントマリアアイランドで人魚が発見された。鰭もなく人間のような形をしているが、それはまさしく男の人魚だった。しかしその人魚は、研究者たちの不手際によって死んでしまう。
そして2015年、海の事故によって遭難した大学生の海原密は、2ヶ月間の行方不明の後に奇跡的に生還を遂げる。海の底で2ヶ月生きた不思議。普通の大学生として生きていたはずの密の人生が大きく動き出す。そしてウォーレスとつながっていく。
私はアンデルセンの童話・人魚姫が大好きなのだけど、この小説における人魚は、そういうのとは大幅に違う。
人間とは明らかに形が違う空想上の生き物ではなくて、進化の過程で道が分かれて人間になるか人魚になるか、みたいな違いで生まれてしまった人魚のお話。
生物学的な専門用語が山ほど出てくる章もあってなかなか大変だけど、すごく読み応えがあっておもしろかった。
SFちっくだけど現実にありそうな気もする。あってもおかしくない。そんな風に思える壮大な物語。
人間、人魚に関わらずそれぞれに血の歴史というものはあって、自分のルーツだって意外と深くまでは知らなかったりする。大人になってから知らされることだってある。
平凡に生きてきたつもりがある日の衝撃で事態が変わり、そして…
「受け入れること、そしてその形で生きていくこと」の柔軟性を見た気がする。
人のエゴとかどろどろしたものも大いに含まれていたし、よくよく考えてみればだいぶグロテスクだけど、とても好きな物語。
「アクリ」という映画きっかけで出来た映画とは関係のない小説みたいだけど、これの映像化も観てみたいな、と思ってしまった。 -
進化論に基づく人魚伝説。映画監督として有名な岩井氏が書き下ろした長編小説です。
映画「ACRI」用に書き始めた物語。思い通りにストーリーが進まずスケールも大きくなりすぎ 映画の脚本としては断念、書き上げた時には映画の公開はとっくに終了していたそうです。
人間はいかにして進化をとげたのか。サルから進化した?いいや、水から上がったのだ…
架空の人物や仮説に説得力さえ感じられ、人魚は本当にいるのではないかと思ってしまう、そんな部分もありましたが、読み終えてみると、少々グロめのファンタジーという印象。
小説は初読みでしたが、なかなか興味深かったです。他作品も折を見て読んでみたい。 -
何だろうこの気持ちは
分からない
でも変に考えすぎないで、
素直に受け止めれば良いのかもしれない
ー ありのままの世界で生きること
海に帰ろうか
私たちは人魚だった ー -
通して安定して面白い。かな。個人的には好きなテーマ。
ファンタジー的な人魚ではなくサイエンス的人魚というんでしょうか。 -
もう一度内容をぜんぶ忘れて読み直したいくらい面白かった。こういうのは発想の勝利という枠組みになるのだろうか。とにかくすさまじいイマジネーションで、グロテスクな愛の交歓が脳内ですっかり映像化されてしまった。読後感も悪くない。読み終えてから表紙を見ると、感慨深い。
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進化論を駆使した新たなる人魚伝説。マリア1号の発見を契機に揺れ動く人間たち。ミッシング・リンクの謎を追い、舞台はフロリダ、香港を経てアラスカの極海へ―。圧倒的なストーリー・テリングで人間と人魚の交感を描いた、岩井俊二、待望の書き下ろし長編1000枚。
(BOOKデータベースより)
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童話の〈人魚姫〉的なお話ではなく、進化論にまで踏み込んだ〈人魚〉の話です。
『かつてヒトはホモ・サピエンス(人間)とホモ・アクアリウス(人魚)に分かれ、それぞれ陸と海で暮らしている。』この説によって進化論におけるミッシング・リンクの謎が解かれるかもしれない として、研究者たちは捕獲された人魚・マリア1号と人魚の子孫であろう海原密のことを調べ始める。
一方密は研究者たちに翻弄されつつ、自分の出生の秘密を知っていく…。
…というお話です。
私は専門的なことはわかりませんが、進化論についての学術的な説明はとてもわかりやすく、この本を読み終えた今なら人魚の実在を示唆されても驚かない気がします(笑)
あともちろん小説としても楽しめました。
私は今は“海大好き!”ってわけではないのですが、この本を読んで昔の“泳ぐの大好き!”という気持ちを思い出せました。
途中少々気持ち悪い描写や若干ホラーテイストな部分もあり、それらが本当に苦手な人はダメかも知れませんが、人魚に少しでも興味がある人には面白い本だと思います。
ぜひこの本を読んで、生物の進化の多様さにおける可能性に心躍らせてみてください。
備考:文庫あり -
人魚のラブストーリー
たしか泣いちゃった気がする
冒険ストーリーでもあり、先が気になり読み進めてしまう
新しい感じ
人魚へのイメージが変わった
おもしろかった -
人類は海からやって来た?陸に上がった我々人類と、海に残る道を選択した人魚。人類の進化の謎と人魚伝説を、進化論の常識を覆すトンデモ科学で追い求めるSF長編-。
ローレライの歌声や八百比丘尼伝説と云った人魚に関する伝説を巧みに話に取り込んでいるところが魅力。特に作中に登場する『香港人魚録』なる架空の書には浪漫を掻き立てられる。実在するなら、読んでみたいくらい。もともとは映画の原作用として書かれた作品なので、スピード感溢れる展開も良い。
終盤の展開には強引さを感じるものの、人魚伝説の浪漫、海の浪漫、科学的浪漫を一冊で味わえてしまうお得な作品である。