- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061491113
作品紹介・あらすじ
内海(ラグーナ)に浮かぶ「アドリア海の花嫁」。四季折々の呼吸がたちのぼる大運河(カナル・グランデ)、路地(カッレ)に感じる街の体温、光と闇を彩る祝祭(フエスタ)。足で織り五官でつかむ、水の都へ道案内。
獅子の帰還――セレモニーを行うのに、これ以上の舞台はない。……広場の東側には壮麗なゴシック様式の総督宮殿、西側には古典的にマルチアーナ図書館が建つ。共和国時代とまったく同じ趣向で設営された演劇空間に我々はいるのだ。紐が引かれ、白い布が移動して、獅子の姿が現れてきた。ところがいかにもイタリアだ。布が引っ掛かって動かなくなってしまった。いささか慌てて逆に引っ張ってみても、うまくいかない。人々の間に溜め息がもれる。ヴェネツィアの未来に暗雲がただよいかけたその時、紐を切ったことによって、白布は無事にはずれ、獅子の美しい姿が円柱の上に浮き上がったのだ。我がヴェネツィアの象徴は拍手とともに元の位置に戻った。――本書より
感想・レビュー・書評
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ますますヴェネツィアに行きたくなった。迷宮都市をさまよってみたい!
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行ったこともないヨーロッパ、イタリアに位置するヴェネツィア。
どことなく、東京の下町の雰囲気を兼ね備えている街に日本人が惹かれる意味が少しだけわかりました。
同時に、様々な芸術世界を生み出す土壌となったその混沌さも。
いつか、ゆっくり訪れたくなりました! -
「浮島」、「迷宮」、または「交易」、「市場」、「広場」などという明確なテーマを設定した章立てで、非常に歯切れよく、明快にヴェネツィアという歴史上特異な水上都市を、歴史絵巻を見ているようなヴィジュアル表現を連想させるような語り口で語りあげています。
しかも現在の事例から、その起源を過去へとさかのぼっていくという構成を全編にわたって採用しており、最後まで読み手の興味を失わせないように工夫されていて、この手の書籍にありがちな、専門用語ともってまわった言い回しのオンパレードで作られた自己顕示欲の塊のようなものとは一線を画してて好感が持てました。
そこまでしてもやはりわかりにくいところがあるのは、このヴェネツィアという都市の特異性なのかな。
文章だけでこんな特異な水上都市、想像しろというほうが無茶だよね。やっぱりヴェネツィアに一度でも行ったことがあるほうが、当たり前だけどより一層理解が膨らみます。 -
著者の陣内秀信さんがヴェネツィアに実際に住んで考察したことが書かれている。「イスラム都市と似た迷宮性」や「秩序と混沌の多様性」など都市を形態や機能で分析するとともに、港湾都市として多種文化が混在したヴェネツィアならではの「外国人たちの住み分け方」、「娼婦の存在」。それから地理的な「水の処理」の方法や市場の構成などにも話は及ぶ。
本書の全体の構成としては、「浮島」「迷宮」「五感」「交易」「市場」「広場」「劇場」「祝祭」「流行」「本土」の10テーマに分けて話が進むようになっている。
実際に行ったことがあるからイメージを持って読めたからおもしろかったけど、行ったことのない人はなかなか想像しにくいだろうなあ。
この本は町の中に埋め込まれたさまざまな機能や場所の意味に光を当ててヴェネツィアの姿を多元的・複眼的に書こうとしたそうですが、以前は都市のモルフォロジー(形態学)と建築のタイポロジー(類型学)を中心に据えて、都市空間の形成過程を明らかにする研究に興味があったそうで、こちらは『都市のルネサンス』(中公新書)、『ヴェネツィア―都市のコンテクストを読む』(鹿島出版会)に書かれている。 -
ヴェネツィアのエッセイ。
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2009/7/19 チェック済み
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ヴェネツィアについての見聞録。語り口が平板でやや退屈だが、迷宮都市の成立過程など、内容的にはヴェネツィアに興味のある人なら楽しめるはず。