「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061491502

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義の歴史とその本質がよく分かる。

    元来ポリネシアなどでみられた「交易」というものは「価値」のないものをぐるぐるまわす、その運動自体に意味があるものだった。そうすることで富を必要以上に蓄積することの危険を回避していた。しかしヨーロッパ人は違った。自分たちが持たないものを執拗に欲しがった。中国の茶、陶磁器、インドの砂糖や香辛料、南米の金、銀など。重要なのはそれらは「生活必需品」ではなく、「贅沢品」であること。つまり「欲望」が資本主義という運動をドライブさせ続けてきたのだ。あるときは武力に任せて強奪し、あるときは三角貿易によってアヘンや奴隷を介在させることで、非人道的に利潤を上げ続けた。

    基本的に資本主義というのはここからそうかわっていない。「欲望」を作りだし続けることが成長のためには必要なのだ。当然のことながらそこには搾取する側とされる側の不均衡が必要になってくる。世界中が平準化したら資本主義という運動は止まってしまうだろう。

    グローバリズムというものが貪欲さと離れがたいのはその本質が「欲望」であるからである。世界は自滅に向かっているようにしか思えないのだが…。

  • 2013.03.19 欲望の無限ループからの解放の時期がきているのか?その辺を少し考えたい。

  • 1993年に書かれている、ということにビックリしました。20年たっても色あせていない(内容としては、色褪せる内容ではなく、もっと長い期間の話しです)。

    欲望についての考察(=「距離」)や、バブルについて(=そもそも適正価格などなく、常に「需給」)という点、今まで余り考えたことのないことに対する考察からして、気付きがありました。

    また、経済が発展する過程における資本主義と、資本主義が成功するが故に衰退すること、また現代が正に金融資本主義に入っている経済史的な考察、非常に勉強になりました。だから現在の状況があるのだ、ということが理解できます。

    また、「希少性」から「過剰性」の経済への移行と、そこでは「消費者」という存在が出てきたこと、このあたりも今まで意識をあまりしませんでしたが、キャスティングボードを握っているのは誰なのか、と言った力関係の変遷、等に対する考察も面白いものでした。

    もう少し自らもこの中の文献に出てきた人々の考え方含め、勉強したいです。

  • 「消費者」という観点から資本主義を捉える

    そこには「欲望」が存在し、距離が遠ければ遠いほど、深くなる

    読み物的かと思ったら、説得力があって、歴史を新しい視点から振り替えることができた

  • 事前知識の少ない分野の本は難しい。
    感想を書いてみるテスト。

  •  ヨーロッパの資本主義からアメリカの資本主義への変遷が、外向きの欲望から、マーケティング、広告により内向きにあおられる欲望により形成されたという節。
     生産力などには一切触れず、欲望が生産を生み出していくかのように描かれている、ある意味珍説として受け止めた。

  • 98

    消費者の欲望が資本主義を発展させたと考察。経済学の素養がないとやや難しい。

  • 資本主義の精神の根源をたどる。 

    資本主義と欲望の関係を考察。

    それらを歴史を絡めて描いていたので読みやすかったが、最後の方が少しずれてる気がしたのは僕だけ???

  • 欲望と資本主義の関連性を見事に。。

  •  資本主義というものが、人間の無限の欲望を前提として形成されて来た歴史について解説した本。著者は資本主義を「人々の欲望を拡張し、それに対して物的なかたちをたえずあたえていく運動」と定義する。

     また、著者は資本主義経済においては「過剰」に注目すべきであると説く。以前私は経済学を「有限の資源をいかに効率よく分配するかを考える学問」として「稀少性」に着目すべきだと理解していたが、これまでの人間社会の生産力からして供給過剰になりがちなため(生産物にもよるが)、この説はある意味で正しいだろう。

     ミクロ経済学では個人は「効用」の最大化を目指すことを学んだが、本書では今までその効用がどのように形成されて来たのかが無視されがちであったことが指摘されている。その答えとしては、大航海時代以来の貴族の嗜好品や奢侈品への欲望(モノ自体や個人の枠にとどまらない、シンボルの消費)によるものが大きかったことが挙げられる。香辛料、金銀、茶などといったものがその代表例。

     資本主義の歴史を語る上で優れた本だと思った。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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