実存から実存者へ (講談社学術文庫 1257)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592575

作品紹介・あらすじ

リトアニアに生まれ、ストラスブール大学に学んだ後フランスに帰化したユダヤ人哲学者レヴィナス。第二次大戦に志願するがドイツの捕虜収容所に囚われて四年を過ごし、帰還後ユダヤ人を襲った災厄を知る。かつての師ハイデガーのいう「支配する主体」の対極に、レヴィナスは「実存者」を措定、戦争で露呈した現代人の「実存」の運命を考察する。時代を深く予見したフランス現代思想の巨匠の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の興味が”主体”論にないことがよくわかった。社会というか人間集団の巻き起こす相互作用の方に興味があるのである。ルーマンとかである。

  • 哲学書。
    内田樹氏の著書から導かれて。
    哲学は不変的な人間の論理を追求したものだが
    しかし、その哲学者が置かれた環境からの影響は大きい。
    エマニュアル・レヴィナスは
    ユダヤ人としてアウシュビッツ収容所にいた。
    家族はほとんど殺されたという。
    レヴィナス自身は生を得た。
    そして、この著書のほとんどが
    そのアウシュビッツで書かれたものだという。
    これは希望をもちにくい状況下でありながら
    第二次世界大戦を超えて新たな人間のあり方を
    問うた書であるといえる。

    以下は書き抜き。

    存在とは、存在するという禍いなのだ。

    実存は、自分の実存の旅をもつれさせる重み--
    それが自分自身にほかならないとしても--
    を引き摺っている。

    怠惰が、何かに対して無力な歓びのない嫌悪であるかといえば、
    それはこの重荷としての実存なのだ。

    怠惰は、未来に疲れることだ。

    努力は疲労から沸き立ち、疲労の上に崩れ落ちる。
    努力の緊張と呼ばれるものは、
    飛躍と疲労のこの二重性からなっている。

    努力は演戯を排除する。

    努力とは瞬間の成就そのものなのだ。

    疲れるとは、存在するのに疲れることだ。

    愛の特徴は、それが本質的で癒しがたい
    飢えだということである。

    夜の恐怖は仮借ない実存なのである。

    実存者とは、意識なのだ。

    現在とは、実存者がいるという事実そのものなのだ。

    (実存者の)解放のためには、時間と〈他人〉が必要なのだ。

  • P40 あらゆることがどうでもよくなるが、とりわけ自分のことがどうでもよい、といった倦怠感がある。→ずっきゅーん。
    そのとき気だるさを抱かせるのは、自分の生活のあれこれの一形態ではなく、その気だるさは実存そのものに向けられている。

    P50 怠惰は未来に疲れることだ。→ずっきゅーん。

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著者プロフィール

E.レヴィナス(Emmanuel Levinas)
1906年リトアニアに生まれる。1923年から30年までフランスのストラスブール大学で哲学を学ぶ。この間、1928年から29年にかけてドイツのフライブルクに滞在、フッサールおよびハイデガーの下で現象学を研究、1930年フランスに帰化、第二次大戦中はナチの捕虜収容所にフランス解放まで抑留される。戦後、ポワチエ大学、パリ・ナンテール大学、ソルボンヌ大学教授を歴任。タルムード研究に取り組む一方、ハイデガー哲学との対決を通して倫理にもとづく独自の哲学を展開。1983年カール・ヤスパース賞を受賞。現代フランス思想界を代表する哲学者の一人。1995年12月25日パリで死去。主な著書:『フッサール現象学の直観理論』(1930)、『フッサールとハイデガー』(49)、『全体性と無限』(61)、『実存の発見』(67)、『タルムード四講話』(68)、『存在するとは別の仕方であるいは存在することの彼方へ』(74)、『固有名』(75)、『聖句の彼方』(82)、『諸国民の時に』(88)、『われわれのあいだで』(91)、『神・死・時間』(93)、『他性と超越』(95)、『貨幣の哲学』(97)他。

「2022年 『困難な自由〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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