万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960145

感想・レビュー・書評

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  • 大江健三郎って本当にすごい作家だと思う。
    小説の中で彼独特の世界を完璧に作り上げてる。

    これもまた大江健三郎らしい作品。
    もうどうしようもないところまで皆で堕ちて行くけど、
    最後には希望の光が見える。
    しかも鼻につかないギリギリの微かな光。

    読み終わってなんかもう感心するしかなかった。
    尊敬です。

  • 米国から帰国した弟が、万延元年の村の一揆を再現するかのように村の若者を組織し、行動する。

  •  大江健三郎が初期に用いていたイメージを総動員して流し込んだ、というイメージ。おもしろかったけど、個人的には『洪水は我が魂に及び』のほうが好きかな。ということはイメージは世界よりも人間によっているということで、これ以降の大江の作品はきっと読めないんやろうなぁ。

     間違いなく書かれていた時代の産物であるにも関わらず普遍性を持って現代のあたしのような読者にも圧迫感を持って迫ってくるのはどうしてやろ。明らかにこの世界は日本という国が従から主へ脱皮しようと足掻いていたその状況を俯瞰した上で作られたイメージであるはずなんに、その実態がまだなまなましい。この国が成長していない、という乱暴な結論で片付けるのも違うと思う。

     世界という絶対に揺るがない、それゆえに硬質で恐ろしいもののなかに放り込まれた人間がどのように生きるか、という物語とは違う。それがこの作品全体に蔓延するいやーなイメージの根本的なところなんと違うかな。ここでは人間だけでなく世界そのものがあまりにも曖昧で軟弱で変化する。そうした、ともに不安定な「場所」と「人間」の間でゆれるなにものかが、読んでいても安心できない奇妙な感覚を作り出している。

     読みながらなにかこの陰惨で閉鎖的で、身近なのに現実的でない雰囲気は覚えがあるぞ、と思っていたら、ガルシア=マルケスかと思い当たった。でも年表で確認すると『百年の孤独』とこれは発表が同年なので、さすがにその影響下にあるとは考えられないけどね。

  • 読みづらさを覚悟したがほぼ一気に読んだ。
    文章力というやつか?

  • 正岡子規のオマージュかと勝手に勘違いして読んでしまった作品、すいません。それにしても、なんなんだろう、このリアリティさのなさは…
    ーーーーー
    友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満ちた登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長篇。谷崎賞受賞。

  • 2023/05/20
    なんとか読み終わった。しかし、まったく読めていない。
    やや難解であるのと、ちょっと読書に集中しにくい状況が続いたため。
    また改めて読もう。
    歴史にルーツがある大きな話だったり、穴や地下蔵で過ごしたりするところなど、村上春樹が影響を受けていそうな要素が見られた。

    とりあえずメモ。
    蜜三郎:主人公。友人を奇妙な自殺で亡くす。生まれたばかりの子供に障害がある。安保闘争で片目を失う。
    鷹四:蜜三郎の弟。アメリカ帰り。一揆を主導した曽祖父の弟と自分を重ねている節がある。
    キーワード:草の家。蔵屋敷。万延元年の一揆。明治の一揆。曽祖父。曽祖父の弟。スーパーマーケットの天皇(白なんとかという朝鮮人)。朝鮮人との争いで殺されたS兄さん。地獄絵。在。竹藪。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/682290

  • 集中力が足りず読むのを諦めた。
    一文が長くて何度か読まないと意味が取れない。
    国語の先生のうちの誰かが、人生で一番面白かった本って紹介してた記憶があって図書館で借りたけど、読むのに体力を使うので今回はパス。
    いつか娯楽たりうるタイミングが来れば読み切りたい。

  • 3.89/1312
    内容(「BOOK」データベースより)
    『友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満たち登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長編。谷崎賞受賞。』


    冒頭
    『夜明けまえの暗闇に眼ざめながら、熱い「期待」の感覚をもとめて、辛い夢の気分の残っている意識を手さぐりする。内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に躰の内奥に回復してきているのを、おちつかぬ気持で望んでいる手さぐりは、いつまでもむなしいままだ。力をうしなった指を閉じる。』


    『万延元年(まんえんがんねん)のフットボール』
    著者:大江健三郎
    出版社 ‏: ‎講談社
    文庫 ‏: ‎492ページ
    受賞:谷崎潤一郎賞

    外国語訳:
    English『The Silent Cry』
    Spanish『El grito silencioso』
    Swedish『Tid för fotboll』
    French『Le jeu du siècle』
    Korean『만엔원년의 풋볼』

  • 村上春樹への影響を感じる。
    大江が神話を土地や血筋に還元した一方、村上春樹は個人と集団的無意識へ。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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