万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1754
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960145

感想・レビュー・書評

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  • 濃密な文章は文学の素晴らしさを体現していた。ストーリーも重厚で、日本を代表する作品であることは間違いない。

    もう一回読み返そうと思う。

    弟の鷹四が曽祖父の弟の起こした一揆を伝説化し谷間の地に暴動を拡大させて行く。谷間における一揆と地獄絵によって繋がれて行く先祖との繋がり。
    自己処罰の欲求を軸として、自らを過酷な地獄へと導こうとする弟。兄はそんな弟を否定することで何もできない自分を肯定していたのだと気付かされていくのだった。

  • 2018/07/15

  • 身勝手で頭のおかしい家族とその周辺の話し。肛門に胡瓜指して縊死した友人、近親相姦、不倫(?)や朝鮮からの渡来人に対する事実誤認など盛りだくさん。

  • 挫折

  • なんとなくギリシャ悲劇を思わせる作品だった。近親相姦要素が多いからか、どことなく荘重な感じのただよう悲劇だと思う。
    いろんな要素を重層的に、混乱なく扱う手腕はさすがと言わざるを得ないが。ギリシャ悲劇っぽさを強調するならもう少し単純な構成のほうがよかったかも。

    しかし、読後感は個人的には不愉快で、二度と読み返したくはない作品である。

  • 日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、ってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代において再現してみました、的な。弟の自殺とか、その子を身籠った我が妻とか、かなりドロドロなクライマックスで、読み終わった後、ちょっと疲労感を覚えちゃいました。良い作品とは思えたので、評価は高めで。

  • 「万延」と「フットボール」というミスマッチな単語を重ね合わせた軽妙な題名とは異なり、推敲に推敲を重ね無駄を排した独特な文章と、段落を極力無くし畳み掛ける緻密な描写は読者に緊張さえ与える。初めての大江健三郎作品であったが、いやはや鬼気迫る作品であった。

    日本人に古来より根付く暗澹たる気質を浮き彫りにし、万延元年の一揆と鷹四が隆起する暴動の共通項による事件性を謳いながらも、結局は大江自身の自己反芻の物語であるのかもしれない。内包する狂気性が自己に向かった場合に起こることを鷹と蜜という対立軸で思考実験を重ねた産物のように思えた。

  • 読み応えあります。分厚い!
    内容はたんたんとそして近親相姦があったりした。しかし、鷹四の妹は死んでしまう、、、

  • 「破滅と再生の物語」だと思います。1 死者にみちびかれて で、浄化槽の穴にうずくまる「僕」には、「破滅」の兆候が見られました。13 再審 で、倉屋敷の地下倉にうずくまる「僕」には「再生」の兆しが見られます。もちろん作者は、1と13で描かれる「地下室」を、対比させて描いていると思います。1と13での「僕」が、「地下室」で過去を回想している時の人々の会話文の冒頭が、――で始まっています。「僕」が「地下室」から地上に戻ってきた時、会話文は通常の「」に戻っています。1では、たまたま牛乳配達人が「地下室」にいる「僕」を見つけますが、13では、「僕」の妻が「地下室」から「僕」が出てくるのを「期待」を込めて待っていました。1と13でのこれらの類似と対比が上手く、小説は再生の「期待」が満ちた状態で終わります。また、これと似た手法は「個人的な体験」でも用いられています。「個人的な体験」も、「破滅と再生の物語」だと思います。けれど、この作品の「僕」が、再生の啓示を受けるのは唐突で、原因もよくわかりませんでした。「万延元年のフットボール」の「僕」が、再生の啓示を受けるのは、今までの「僕」の考えを覆すものを「僕」が発見したからです。僕は、「万延元年のフットボール」の原型は「個人的な体験」だと思います。
     

  • 読みづれー

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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