- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061962675
作品紹介・あらすじ
そこはかとなきおかしみに幽愁を秘めた「なだれ」「つくだ煮の小魚」「歳末閑居」「寒夜母を思ふ」等の初期詩篇。"ハナニアラシノタトヘモアルゾ「サヨナラ」ダケガ人生ダ"の名訳で知られる「勧酒」、「復愁」「静夜思」「田家春望」等闊達自在、有情に充たち漢詩訳。深遠な詩魂溢れる「黒い蝶」「蟻地獄(コンコンの唄)」等、魅了してやまぬ井伏鱒二の詩精神。四部構成の初の文庫版『厄除け詩集』。
感想・レビュー・書評
-
はじめの「なだれ」からノックアウトされた。井伏さんといえばわたしにとって、ドリトル先生に出てきた前後どちらにも顔がある生き物を「オシツオサレツ」って名訳した人。詩もこんなにすばらしかったなんて。そしてこのタイトルのセンス。おまもりにします。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近現代の詩なのだけれど、抽象にゆき過ぎずのびやかに素朴に書かれた感じがあり、読みやすい。
ひとつの場のありよう、その点景や心情を描いた趣きのものが多く、俳句に近い感じがした。
さて「厄除け詩集」という表題である。どういう意匠だろうと考える。
「 冬 」と表題された詩がある。
…
僕は風邪を引きたくない
おまじなひには詩を書くことだ
という一節がある。
その心象が由来のなのかも…と思っている。
漢詩の訳も所収。これが大胆自由な意訳でびっくりする。例えば、田家春望 という四行詩
…
出門何所見
春色満平蕪
可歎無知己
高陽一酒徒
これを
ウチデテミリヤアテドモナイガ
正月キブンガドコニモミエタ
トコロガ会ヒタイヒトモナク
アサガヤアタリデ大ザケノンダ
面白い。
巻末に「 年譜 」。
太宰との交流がちらほら記載されていて興味深い。
一九三八年 九月 山梨県御坂峠に太宰治が訪ねて来た、とある。あー、井伏氏が放屁した時だなと思い出す。 -
元々は「勧酒」のために購入。
が、他の訳詩もどれも絶妙すぎて何度も読み返すほどハマりました。飄々とした感じの意訳がなんともいえず。
日本語の詩も軽妙で美しく、かつ親しみやすくもあり…
初めて読んだ時は、学校の授業で扱われるような“詩”の概念を覆される衝撃を受けました。 -
・この時代の詩は、当時のTwitterか、フォークソングの歌詞か、HIPHOPのライミングか。
・漢詩の意訳なんてUS HIPHOP の日本語訳の源流じゃないか!
・音韻的にHIPHOPと近しいと思いがちだが、やっぱりTwitterなんじゃないかと思う。
・日常の悲喜交々を短い分と音韻に収束させる。Twitterや5chからそれっぽいものを拾い上げれば現代句集になるのだろうか? -
ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ、という有名な一節が収められているのを知り、手に取る。オリジナルではなく、于武陵「勧酒」という漢詩の自由訳だったとは初めて知る。他に、巻頭の、雪崩の先頭に悠然と座る熊の詩、素直にせまってくる、「紙凧」あたりが印象に。”私の心の大空に舞ひあがる はるかなる紙凧一つ 舞ひあがれ舞ひあがれ 私の心の大空たかく舞ひあがれ”
-
リズムが良い。
熊の詩と蛙の詩がすき。 -
詩らしくない詩。
井伏鱒二は、黒い雨のイメージが強くて、暗い感じかと思いきや「…プッ」となっちゃうような楽しい詩ばかりでした。
自作の詩もたのしいけれど、漢詩の訳詩はすごい。ぶっとんだ意訳も爽快でわかりやすくて、漢詩の堅いイメージが消えてます。
「サヨナラダケガ人生ダ」が井伏さんの訳詩だったのも、はじめて知りました。 -
井伏の詩、「ハナニアラシノタトエモアルゾ、サヨナラダケガジンセイダ」どのフレーズ、どこがで聞いたことがありましたが、井伏の自由闊達な五言絶句の翻訳あるいは意訳であったとは迂闊にも知りませんでした。これを知ることもできたのも茨木のり子さんのおかげですが、井伏鱒二の詩もいい。いいです。
-
「老年の読書(前田速夫)」で紹介されてるので読んでみました。
「なだれ」と「誤診」と「冬」が好きです。