- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062136280
感想・レビュー・書評
-
静かで浮遊感の漂った短編集
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2006.10.16読了)(2006.10.07購入)
先日、「ざらざら」を読んだばかりなのですが、神さんから「ハヅキさんのこと」が廻ってきました。川上さんの本は、優先して読むことにしているので、他の読む予定を変更して割り込ませました。
「ハヅキさんのこと」といっても、葉月里緒菜さんのことでも、最相葉月さんのことでもありません。「ざらざら」と同様、23(又は、25)の短編が収められています。主に、「本」と「室内」に掲載したものです。最初のほうの幾つかは、オチが来る前に終わってしまう感じで、ちょっと食い足りない気持ちが残りますが、中盤からは、いつもの川上さんの感じが味わえます。
あとがきによると、「近ごろ、原稿用紙にして十枚前後の、短編、というには少々短い長さの小説をしばしば書くようになった。」「エッセイを、という約束で書き始めたのだが、そもそも三枚以上のエッセイは不得手で、約束の八枚分の文章が出てこない。それならばいっそのことエッセイとも小説ともつかないものにしてしまえと、言う次第だ。」「書いてみると、エッセイの体裁を取った小説は、たいそう体質に合っていた。」ということで出来上がった本ということです。
エッセイの体裁をとっているという事は、川上さんの実体験がそれとなくはめ込まれて、得意のうそとまぜこぜになっているということです。本人もしばらく経つと、何処が本当で何処がうそだったか分からなくなるとか。
●ハヅキさんのこと
十五年ほど以前に教師をしていた頃の同僚、ハヅキさんを見舞いに行く話です。ハヅキさんは国語を、わたしは理科を教えていた。(川上さんは生物の先生をしていた。)
「その頃、ハヅキさんもわたしも「不幸な恋愛」をしていた。ハヅキさんは「ちょっと冷たいんだけど、とても魅力のある人」と、わたしは「いやに女の子が寄ってくるのが困り物だけど、とても魅力のある人」と、思うほどには思われない、という恋愛をしていた。実のところ、ハヅキさんは私の恋人の事を「たんに女癖の悪い不誠実な奴」と看破していた。むろんわたしだってハヅキさんの恋人のことを「少しばかり頭がいいことを鼻にかけた男根主義者」と思っていたから、お互い様だ。」
お互い失恋した後、二人で飲んだ後、気が付いたら、二人でラブホテルにいたという。酔った勢いで入ったらしい。
●テレビ
テレビというものは不思議な箱だ。しょっちゅう見ている人は慣れてしまうのだろうが、わたしなどはたまにテレビを見ると、頭も目も全部画面を向いて、自分が自分のものではなくなる気分だ。
エッセイということなので、川上さんぐらいの年齢の人が多くでてくる。川上さんの身の回りの人たちに関する世間話を聞く感じで読むといいのかもしれない。
☆川上弘美さんの本(既読)
「溺レる」川上弘美著、文春文庫、2002.09.10
「光ってみえるもの、あれは」川上弘美著、中央公論新社、2003.09.07
「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美著、新潮社、2003.11.25
「古道具 中野商店」川上弘美著、新潮社、2005.04.01
「東京日記 卵一個ぶんのお祝い。」川上弘美著・門間則雄絵、平凡社、2005.09.23
「此処彼処」川上弘美著、日本経済新聞社、2005.10.17
「夜の公園」川上弘美著、中央公論新社、2006.04.25
「ざらざら」川上弘美著、マガジンハウス、2006.07.20
著者 川上 弘美
1958年 東京都生まれ
お茶の水女子大学理学部卒業
1996年 「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞
2001年 『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞を受賞
内容紹介(amazon)
ささいな男女の機微を描く掌篇小説集。
そこには、ささやかな日常がある。そして、男と女の心のふれあいやすれ違いがある。魅力あふれる、川上ワールドが、ふっと心をかすめる・・・。 -
2010.01.26 図書館
-
短編集
-
琺瑯の洗面器が頭から離れない。
かりん、という音、私もいいなと思う。 -
2008.10.2読了
-
何かが始りそうな、そんな予兆に満ちた短編集。
川上弘美さんは短編のが好きだ。 -
カテゴリ分けにちょっと迷いながら。
-
川上弘美さんの本は小説もエッセイも好きです。
わたしの感性に合っています。
小説は「どこから行っても遠い町」「風花」「ざらざら」「ニシノユキヒコの恋と冒険」を読みました。
この作品はなんとなく気になっていて、図書館で手にとって借りてきました。
26編の短編というか掌編から成っています。
「ざらざら」のような感じです。
最後の「水かまきり」は高校の国語教科書にも取りあげられています。
このなかにはフィクションなのか川上弘美さんの体験的エッセイなのかはっきりしないものも含まれています。
「何でもなく」には、30年前の学生の様子が描かれています。
六畳一間風呂なしトイレ共同電話も共同で家賃13000円はす当時の相場というのはよく分かります。
わたしもそんなところに住んでいました。
「誤解」では夫の浮気を巡る妻の微妙な心理が描かれています。
このあたりは「風花」に通じるところがあると感じました。
描かれている女の執念は鬼気迫るものがあります。
表題作の「ハズキさんのこと」には川上弘美さんの教師時代のことが出てきているようです。
ふたりとも「不幸な恋愛」をしていたといいます。
いろいろなアブナイ恋愛や不倫の話もたくさん書かれています。
川上弘美さんは一見普通で何も問題がなさそうに見える市井の人たちの普通でない問題を良く描いていると思います。
この本を読んだあとで「水かまきり」が高校の国語教科書に収められていることを知りました。
26編の中では印象の薄い作品でした。 -
琺瑯
森
水かまきり
好きです